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第6章 レヴェリー・プラネット運営方針
第100話 金の切れ目が縁の切れ目 Adios, empty cans
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治は上司である梅下謙子の部屋を訪れ、椅子に座る。デスクの梅下が話しかけてくる。
「さて。君が報告した廃課金プレイヤーのことだけど……」
「バーバリアンとマサキングですよね?」
「えぇ。私も調べましたが、たしかに報告通りです。今まではひと月十万程度の課金だったのに、いきなり百万超に増えている……」
当たり前な話だが、運営会社はゲーム内の情報の殆どを知ることが可能だ。
各プレイヤーのレベル、累積経験値、1日あたりの平均プレイ時間、チャットでどんな政治的発言を行ったか、その他その他。
そして、プラネットは監視用のAIによって1秒の休みもなく見張られており、AIは異常を見つけるとすぐに運営スタッフに知らせる。
今回のような事態は、そういった異常の典型例だ。課金額が文字通りに桁違いで増えるのは、たいていの場合、裏に事件がある。
こういう場合にチェスナット社が行う選択肢は、常に一つだ。
「剣崎くん、この件は情報局に通報しておきました」
「通報……!?」
「当然でしょう。善良な企業の義務ですよ。
あくまで私の勘だけど、バーバリアンたちの金は犯罪絡み。とても見過ごせません」
おそらく梅下の勘は当たっている。とすると、バーバリアンたちはこれからどうなるのか。情報局に捕まった人間の末路は……。
治は質問したくなる。だが思いとどまる。局が絡むような危険な話題は、そっとしておくべきだ。かわりに別の話題を始める。
「ところでボス、その2人のことなんですが。彼らのせいで12号サーバーが荒れてまして……」
「何かケンカでも?」
「似たようなもんですよ。上位クラン相手に争奪戦をしかけて、叩きつぶしたんです」
梅下の目が細くなり、鋭くたずねる。
「もっと詳しく」
「はい。まずバーバリアンですが、彼はセブンというプレイヤーに殺されたことがあって、もともとはその復讐のために大量課金したんです。
で、後日きっちりやり返したんですけど、その次に……」
「ちょっと待って。いま思い出したけど、それ、ゲールフォースがグリニング・パンプキンズに勝ったっていう……」
「はい。例のあれです」
「ふん……。単なる争奪戦ごときで、何の問題が……」
治は梅下の顔色を慎重にうかがいながら言う。
「争奪戦に至るまでの経緯が問題なんですよ。パンプキンズがPK好きなプレイヤーの集まりで、クラッシュ・シティを荒らし回ったのはご存じですよね?」
「えぇ」
「最初は我慢していた連中も、さすがに堪忍袋の緒が切れまして……。みんなして集まり、秘密作戦を考えたんです。
サーバーの会話ログに、こんな記録が残されてました。
”いつかチャンスが訪れたら、一致団結してパンプキンズと戦い、皆殺しにしろ!”」
「まさに大騒ぎね」
「ホントですよ。で、パンプキンズが負けたのをきっかけに、この作戦が始まりまして……」
「ふむ……」
梅下はデスクに置いてある業務用スマートフォンを手に取る。いくつかのアプリを起動し、それらが示す情報を流し読む。
これから上司としてどんな指示を治に与えるべきか。それを考えて喋る。
「データを見た感じ、パンプキンズは終わりでしょう。重課金がこんなに引退したら、ちょっとしたイベントすらクリア困難。
生き残ったメンバーもやる気を失って、その証拠に課金額が激減している……」
「では?」
「いつも通りですよ。我々が大事にするのは、課金してくれるクランやプレイヤー。金を出さなくなった連中はどうでもいい。
したがって、この件は放置します」
「でも、そうしたら生き残りまで引退するリスクが……」
「私の経験からいえば、こういう落ちぶれたクランに未来など無い。
生き残りは今までの意地で強情を張っているだけ。どうせ近いうちに、全員もれなく引退ですよ。
金にならない奴らを助けるために、なぜコストを費やす必要が?
利益を生まない役立たずは、辞めてくれて結構。それがビジネスです」
飲み終わった空き缶は捨てられる、そういうことだ。
「さて。君が報告した廃課金プレイヤーのことだけど……」
「バーバリアンとマサキングですよね?」
「えぇ。私も調べましたが、たしかに報告通りです。今まではひと月十万程度の課金だったのに、いきなり百万超に増えている……」
当たり前な話だが、運営会社はゲーム内の情報の殆どを知ることが可能だ。
各プレイヤーのレベル、累積経験値、1日あたりの平均プレイ時間、チャットでどんな政治的発言を行ったか、その他その他。
そして、プラネットは監視用のAIによって1秒の休みもなく見張られており、AIは異常を見つけるとすぐに運営スタッフに知らせる。
今回のような事態は、そういった異常の典型例だ。課金額が文字通りに桁違いで増えるのは、たいていの場合、裏に事件がある。
こういう場合にチェスナット社が行う選択肢は、常に一つだ。
「剣崎くん、この件は情報局に通報しておきました」
「通報……!?」
「当然でしょう。善良な企業の義務ですよ。
あくまで私の勘だけど、バーバリアンたちの金は犯罪絡み。とても見過ごせません」
おそらく梅下の勘は当たっている。とすると、バーバリアンたちはこれからどうなるのか。情報局に捕まった人間の末路は……。
治は質問したくなる。だが思いとどまる。局が絡むような危険な話題は、そっとしておくべきだ。かわりに別の話題を始める。
「ところでボス、その2人のことなんですが。彼らのせいで12号サーバーが荒れてまして……」
「何かケンカでも?」
「似たようなもんですよ。上位クラン相手に争奪戦をしかけて、叩きつぶしたんです」
梅下の目が細くなり、鋭くたずねる。
「もっと詳しく」
「はい。まずバーバリアンですが、彼はセブンというプレイヤーに殺されたことがあって、もともとはその復讐のために大量課金したんです。
で、後日きっちりやり返したんですけど、その次に……」
「ちょっと待って。いま思い出したけど、それ、ゲールフォースがグリニング・パンプキンズに勝ったっていう……」
「はい。例のあれです」
「ふん……。単なる争奪戦ごときで、何の問題が……」
治は梅下の顔色を慎重にうかがいながら言う。
「争奪戦に至るまでの経緯が問題なんですよ。パンプキンズがPK好きなプレイヤーの集まりで、クラッシュ・シティを荒らし回ったのはご存じですよね?」
「えぇ」
「最初は我慢していた連中も、さすがに堪忍袋の緒が切れまして……。みんなして集まり、秘密作戦を考えたんです。
サーバーの会話ログに、こんな記録が残されてました。
”いつかチャンスが訪れたら、一致団結してパンプキンズと戦い、皆殺しにしろ!”」
「まさに大騒ぎね」
「ホントですよ。で、パンプキンズが負けたのをきっかけに、この作戦が始まりまして……」
「ふむ……」
梅下はデスクに置いてある業務用スマートフォンを手に取る。いくつかのアプリを起動し、それらが示す情報を流し読む。
これから上司としてどんな指示を治に与えるべきか。それを考えて喋る。
「データを見た感じ、パンプキンズは終わりでしょう。重課金がこんなに引退したら、ちょっとしたイベントすらクリア困難。
生き残ったメンバーもやる気を失って、その証拠に課金額が激減している……」
「では?」
「いつも通りですよ。我々が大事にするのは、課金してくれるクランやプレイヤー。金を出さなくなった連中はどうでもいい。
したがって、この件は放置します」
「でも、そうしたら生き残りまで引退するリスクが……」
「私の経験からいえば、こういう落ちぶれたクランに未来など無い。
生き残りは今までの意地で強情を張っているだけ。どうせ近いうちに、全員もれなく引退ですよ。
金にならない奴らを助けるために、なぜコストを費やす必要が?
利益を生まない役立たずは、辞めてくれて結構。それがビジネスです」
飲み終わった空き缶は捨てられる、そういうことだ。
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※この小説は国家資格である『毒物劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
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