119 / 227
第7章 革命前夜
第116話 レッド・マスク Scumbag
しおりを挟む
《スエナの視点》
あの会議から数日後、パトリシアさんからメールが来た。いっしょに冒険に行こうという、平凡な内容だ。
返事はもちろんOKに決まってる。そういうわけで、今度の休日、ボク、パトリシア、アップル、レッド・マスクの4人で遊ぶことになった。
君はレッド・マスクのことを知らないだろうから、少し説明するね。
性別は男性。若いアジア人のアバターを使っていて、名前どおりに赤いマスクをつけてる。ドミノ・マスクだ。
ドミノ・マスクってのは、目の周辺だけを隠すようにできてるやつだよ。わからないならネットで検索してくれ。
なぜそんなものを着けてるのか、不思議といえば不思議だ。でも質問したことは無い。
だって彼はうちの……、つまりウサギ王国のメンバーではなく、パトリシア率いるエクレールのメンバーだ。話す機会そのものが少ない。
そういう意味じゃ、今回の冒険は彼を知る大きなチャンスだ。性格だけでなく戦いぶりも観察できるだろう。
もっとも、彼は化け物じみて強いから、そこを見る必要はないかもしれないけど。
実際なんであんなに強いのか、疑問すら感じるよ。レイザーズの奴らと同じくらい課金してるんじゃなかろうか?
そんな凄い人がなぜボクたちとつるむのか、まぁそれも疑問なんだけど、今は横に置いておこう。
むしろ考えるべきなのは、彼の力をアテにしていいってことだ。ふだんなら勝てない強敵も、マスクがいれば倒せるに決まってる!
《アップルの視点》
私たちはダンジョンを歩いている。ファンタジー物のゲームに出てくるような、広くて天井の高い洞窟だ。
この先には討伐対象のモンスター、キリング・ハンドがいる。あのキリング・ハンドが……。
心中でひそかにため息をつき、私はスエナに話しかける。
「ねぇ。本当にハンドと戦うの?」
「もっちろん! だって今回はマスクさんがいるもんね。油断しなけりゃ勝てるよ」
この子は何をのん気なことを……。見積もりが甘すぎる。
だって、ハンドはいわゆるやりこみ要素として実装されたボスなのだ。いくらマスクの助力があるとはいえ、私たち4人で勝てる相手とは思えない。
「ねぇ。やっぱりやめたほうが……」
「戦う前から臆病風に吹かれてどうすんの! マスクさんだけでなく、パトリシアさんもいるんだよ? 勝てるって」
名前を呼ばれてパトリシアが反応する。
「アップルさん。不安はわかるけど落ち着きましょう。ハンドの攻略法は研究されつくしている、定石どおりにやれば大丈夫です」
「定石ねぇ……」
ニコニコ顔でマスクが言う。
「そりゃ、戦いなんだから予想外のこともあり得るっすよ。でも、そん時は俺がなんとかしますんで!
アップルさん、もっと俺を頼ってくださいよ~。頑張りますから!」
ったく、調子のいい。こんな軽い奴の意見を信じていいのだろうか?
私は以前からこいつが嫌いだし、今でもそうだ。もし現実世界で出会っていたら、挨拶のみの関係で済ますだろう。
本当はすぐにでもパーティから追い出したい。スエナがマスクを気に入っているから出来ないだけだ。
そういう気持ちは、たぶんパトリシアも同じだろう。彼女の言動を見ていれば、彼女がマスクを不快に思っているのがよくわかる。
……だとすると、なぜパトリシアはマスクを仲間扱いしているんだろう? いつかチャンスがあれば聞いてみたいものだ。
あの会議から数日後、パトリシアさんからメールが来た。いっしょに冒険に行こうという、平凡な内容だ。
返事はもちろんOKに決まってる。そういうわけで、今度の休日、ボク、パトリシア、アップル、レッド・マスクの4人で遊ぶことになった。
君はレッド・マスクのことを知らないだろうから、少し説明するね。
性別は男性。若いアジア人のアバターを使っていて、名前どおりに赤いマスクをつけてる。ドミノ・マスクだ。
ドミノ・マスクってのは、目の周辺だけを隠すようにできてるやつだよ。わからないならネットで検索してくれ。
なぜそんなものを着けてるのか、不思議といえば不思議だ。でも質問したことは無い。
だって彼はうちの……、つまりウサギ王国のメンバーではなく、パトリシア率いるエクレールのメンバーだ。話す機会そのものが少ない。
そういう意味じゃ、今回の冒険は彼を知る大きなチャンスだ。性格だけでなく戦いぶりも観察できるだろう。
もっとも、彼は化け物じみて強いから、そこを見る必要はないかもしれないけど。
実際なんであんなに強いのか、疑問すら感じるよ。レイザーズの奴らと同じくらい課金してるんじゃなかろうか?
そんな凄い人がなぜボクたちとつるむのか、まぁそれも疑問なんだけど、今は横に置いておこう。
むしろ考えるべきなのは、彼の力をアテにしていいってことだ。ふだんなら勝てない強敵も、マスクがいれば倒せるに決まってる!
《アップルの視点》
私たちはダンジョンを歩いている。ファンタジー物のゲームに出てくるような、広くて天井の高い洞窟だ。
この先には討伐対象のモンスター、キリング・ハンドがいる。あのキリング・ハンドが……。
心中でひそかにため息をつき、私はスエナに話しかける。
「ねぇ。本当にハンドと戦うの?」
「もっちろん! だって今回はマスクさんがいるもんね。油断しなけりゃ勝てるよ」
この子は何をのん気なことを……。見積もりが甘すぎる。
だって、ハンドはいわゆるやりこみ要素として実装されたボスなのだ。いくらマスクの助力があるとはいえ、私たち4人で勝てる相手とは思えない。
「ねぇ。やっぱりやめたほうが……」
「戦う前から臆病風に吹かれてどうすんの! マスクさんだけでなく、パトリシアさんもいるんだよ? 勝てるって」
名前を呼ばれてパトリシアが反応する。
「アップルさん。不安はわかるけど落ち着きましょう。ハンドの攻略法は研究されつくしている、定石どおりにやれば大丈夫です」
「定石ねぇ……」
ニコニコ顔でマスクが言う。
「そりゃ、戦いなんだから予想外のこともあり得るっすよ。でも、そん時は俺がなんとかしますんで!
アップルさん、もっと俺を頼ってくださいよ~。頑張りますから!」
ったく、調子のいい。こんな軽い奴の意見を信じていいのだろうか?
私は以前からこいつが嫌いだし、今でもそうだ。もし現実世界で出会っていたら、挨拶のみの関係で済ますだろう。
本当はすぐにでもパーティから追い出したい。スエナがマスクを気に入っているから出来ないだけだ。
そういう気持ちは、たぶんパトリシアも同じだろう。彼女の言動を見ていれば、彼女がマスクを不快に思っているのがよくわかる。
……だとすると、なぜパトリシアはマスクを仲間扱いしているんだろう? いつかチャンスがあれば聞いてみたいものだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる