VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第9章 この社会を革命するために 前編

第142話 平和的解決策 Agent's suggestion

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 重い空気が場に漂う。それを嫌ってのことだろうか、ガーベラの近くにいるワンダラー、レッド・マスクが軽い調子で喋り出した。

「いやぁ~、困ったっすね。これじゃあ手に負えないっすよ。そういやシルバーさんは嫌がらせされてないんすか?」
「まぁそれについてなんだが……」

 俺の記憶が正しければ、確かメール・ボックスにあれが入っていたはず。検索……やはりあるな。俺はそいつをこの場の全員に転送し、言った。

「みんな、こいつをちょっと読んで欲しい。つまり……」

 喋りながら俺はくだんのメールを右手に実体化して言う。

「見ての通り、これはゴーエンから送られてきたものだ。どうせ文面はあいつら3人で仲良く作ったんだろうが、それは横に置いておくとしてだ。読み上げるぞ。
”たかがパワー1億のザコが俺たちを殺すなど、絶対にやっていいことじゃねぇ!
 その罪を償え! 自殺して詫びろ! 身の程を思い知るまでひたすら攻撃してやる!”
 つまりそういうことなんだ。連中にとって悪者はあくまで俺たちで、おとなしく殺されなかったことは罪、返り討ちにいたっては死刑に値する重罪なんだ」

 ガーベラがブチギレる。

「はぁ!? わけわかんない! あいつら頭どうかしてんじゃないの!?」
「正直そう思うよ、俺も」
「ドレ、いったいどうしたらいいの!? あたしはこんなん絶対認めないよ!」
「私だって同感だ!」

 パティが「落ち着いてください、ちょっと!」と言う、だがテルが「これじゃあ怒るなってほうが無理ですよ!」と鬼の形相で返す。
 テルの横の女性が円卓をバンッと叩いて叫んだ。

「もう戦争しましょうよ! クラン同士の戦争! こんなふざけた奴らはぶっ潰したほうがいい!」

 俺はこの意見に賛同しようと口を開く。だが何か言う前にレッド・マスクによってさえぎられてしまう。

「まぁまぁまぁまぁ、みなさん落ち着いて! 落ち着いてください!
 戦争するほどのことじゃないっすよ! それに、金持ちケンカせずって言葉もあるじゃないすか?
 平和が一番ですよ。俺があっちにかけあってみますから、とにかく穏やかな気持ちになって……」

 ドレが鋭く突っこみを入れた。

「だがな、レッド・マスク。言っちゃ悪いが君1人じゃどうにもならんだろう」
「手厳しいっすねぇ~。でもそこを何とか信用してもらえませんか? だって俺、話し合いするの得意なんすよ」
「そう言われてもな……」
「俺の友達の知り合いがレイザーズにいるんすよ。そいつに頼んでみますから……」
「そんな小さなコネ、どれほどアテにできるんだ?」
「ドレさん、物事はとっかかりさえあれば解決できるものっすよ。スモール・ステップス・メソッドって話があるじゃないすか。
 ぱっと見はすげぇ大変なことでも、階段を一段ずつ登るように一つ一つ解決していけば、いつかゴールにたどり着く。
 たとえば、10万字の小説を書こうと思ってもいきなりは無理です。でも1日に1000字のペースで書いていけば、100日後に完成する。
 話し合いも同じです。最初はうまくいかなくても、粘り強く交渉すればきっと平和に解決できます!」
「言いたいことは分かるが……」
「頼みます、この件は俺に任してください! 必ず何とかしてみせます!」

 どうしてこいつはこんなに自信があるんだ? レイザーズとのコネはそんなに強いものなのか?
 マスクの家族がレイザーズの幹部をやってるとか、それくらい特別なコネなら確かに話し合いで片づくかもしれん。だがそんなおとぎ話があるわけないだろう。

 俺は疑いの眼差しをマスクに向ける。彼はそれに気づき、ニコニコ顔で返す。そして言った。

「不安に思うのは分かりますけど、マジ俺頑張りますから、努力しますから! どうかよろしくお願いします!」

 ふぅ、しょうがない……。そこまで言うなら、じゃあダメで元々で任せてみようか?

「わかった。なら、俺はあんたに懸けてみるよ」
「ありがとうございます!」
「で……。みんなはどう思う?」

 一同口々に賛意を示す。よって、この件はいったんレッド・マスクの預かりとなった。うまくいけばいいがな……。さて、どうなる?
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