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第10章 この社会を革命するために 後編
第161話 進むべき道 Be yourself!
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突如だれかの声が轟く。
(お前は本当にそれでいいのか? 見て見ぬふりでいいのか!)
雷に打たれたように治は硬直する。頭が真っ白になり、どうしていいかわからない。そんなタイミングで1人の日本人の女の子が公園の入り口に姿を現す。
彼女は男の子たちと同じくらいの年恰好に見える。動きやすそうなスニーカーとジーンズ、Tシャツを身に着けていて、ガキ大将へ大声で言う。
「やめろ! どうしてそんなことをするんだ!」
「は? 誰だ、お前?」
「ボクのことなんかどうでもいい! 今すぐいじめをやめて、ルービック・キューブをその子に返すんだ!」
「嫌だと言ったら?」
「容赦しない!」
「ふん、じゃあやってみろよ?」
「なら……!」
女児は駆ける。一瞬でガキ大将の懐に飛びこみ、「はッ!」と叫んで拳を振るう。
その攻撃はターゲットの顎を的確にとらえ、激しい衝撃で脳を揺さぶってKOする。そうしてガキ大将を倒した後、彼女は向きを変え、残る2人の男児をにらみつける。
「覚悟しろッ!」
男児の1人が「うわっ!?」と悲鳴を上げて逃げようとする。残念ながら遅い、女児は素早く間合いを詰めて相手の服をつかみ、柔道技の大外刈りで投げ飛ばす。
そのまま余勢を駆って残り1人へ突っこみ、股間を蹴る。蹴られた側は「ひゃッ……」と苦痛のうめき声を漏らして崩れ落ちる。
落ちた拍子にその男児の手からルービック・キューブがこぼれて地面に転がる。女児はそれを拾い上げ、白人の子へ歩み寄り、差し出す。
「君の大事なものなんだろ? じゃあ受け取ってよ」
「うん。ありがとう」
白人の子はキューブをぎゅっと握り締める。その様子を見ながら女児は喋る。
「本当に本当に大事なものは、何があっても手放しちゃダメさ。最後まで守らなくちゃ」
「でも、すごく強い奴らが来て、ぜんぜん勝てなくて……」
「じゃあこれから修行しよう。強くなろう! どんな敵が来ても宝物を守れるような、そんな人間になろうよ!」
「なれるかなぁ……?」
「なれるさ! 君が心を強くもてば、いつか必ず、本当の強さを手に入れられる。ボクはそう信じる」
治の迷いが消えていく。心の視界が明瞭になっていく。彼は決意する。
リークだ。全てをリークしよう。自分が知るチェスナット社のインチキを何もかも暴露して、社は正しいことをしたかどうか、世界中の人たちに考えてもらおう。
こんな小さな女の子ですら勇気を出してインチキと戦った、なのに大人の自分がインチキから目をそらして逃げていいのか? いいわけがない!
なるほど、リークに伴うリスクは確かに巨大だ。しかし、だからって自分の気持ちを誤魔化して見て見ぬふりを貫くなど、それこそまさにインチキそのものだ!
僕はインチキな大人になりたくない。なら、進むべき道はただ一つだ。情報局やLMがいかに恐ろしかろうと、その恐怖を乗り越え、勇気をもって不正の告発を行う。
その結果もし暗殺されるとしても構うもんか。自分の気持ちを誤魔化して生きるより、正直に生きて正直に死んだほうがよっぽどマシだ。僕はそう信じる。
(お前は本当にそれでいいのか? 見て見ぬふりでいいのか!)
雷に打たれたように治は硬直する。頭が真っ白になり、どうしていいかわからない。そんなタイミングで1人の日本人の女の子が公園の入り口に姿を現す。
彼女は男の子たちと同じくらいの年恰好に見える。動きやすそうなスニーカーとジーンズ、Tシャツを身に着けていて、ガキ大将へ大声で言う。
「やめろ! どうしてそんなことをするんだ!」
「は? 誰だ、お前?」
「ボクのことなんかどうでもいい! 今すぐいじめをやめて、ルービック・キューブをその子に返すんだ!」
「嫌だと言ったら?」
「容赦しない!」
「ふん、じゃあやってみろよ?」
「なら……!」
女児は駆ける。一瞬でガキ大将の懐に飛びこみ、「はッ!」と叫んで拳を振るう。
その攻撃はターゲットの顎を的確にとらえ、激しい衝撃で脳を揺さぶってKOする。そうしてガキ大将を倒した後、彼女は向きを変え、残る2人の男児をにらみつける。
「覚悟しろッ!」
男児の1人が「うわっ!?」と悲鳴を上げて逃げようとする。残念ながら遅い、女児は素早く間合いを詰めて相手の服をつかみ、柔道技の大外刈りで投げ飛ばす。
そのまま余勢を駆って残り1人へ突っこみ、股間を蹴る。蹴られた側は「ひゃッ……」と苦痛のうめき声を漏らして崩れ落ちる。
落ちた拍子にその男児の手からルービック・キューブがこぼれて地面に転がる。女児はそれを拾い上げ、白人の子へ歩み寄り、差し出す。
「君の大事なものなんだろ? じゃあ受け取ってよ」
「うん。ありがとう」
白人の子はキューブをぎゅっと握り締める。その様子を見ながら女児は喋る。
「本当に本当に大事なものは、何があっても手放しちゃダメさ。最後まで守らなくちゃ」
「でも、すごく強い奴らが来て、ぜんぜん勝てなくて……」
「じゃあこれから修行しよう。強くなろう! どんな敵が来ても宝物を守れるような、そんな人間になろうよ!」
「なれるかなぁ……?」
「なれるさ! 君が心を強くもてば、いつか必ず、本当の強さを手に入れられる。ボクはそう信じる」
治の迷いが消えていく。心の視界が明瞭になっていく。彼は決意する。
リークだ。全てをリークしよう。自分が知るチェスナット社のインチキを何もかも暴露して、社は正しいことをしたかどうか、世界中の人たちに考えてもらおう。
こんな小さな女の子ですら勇気を出してインチキと戦った、なのに大人の自分がインチキから目をそらして逃げていいのか? いいわけがない!
なるほど、リークに伴うリスクは確かに巨大だ。しかし、だからって自分の気持ちを誤魔化して見て見ぬふりを貫くなど、それこそまさにインチキそのものだ!
僕はインチキな大人になりたくない。なら、進むべき道はただ一つだ。情報局やLMがいかに恐ろしかろうと、その恐怖を乗り越え、勇気をもって不正の告発を行う。
その結果もし暗殺されるとしても構うもんか。自分の気持ちを誤魔化して生きるより、正直に生きて正直に死んだほうがよっぽどマシだ。僕はそう信じる。
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