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第11章 この社会の平和を守るために
第178話 一方的な殺戮 When tha gate of doom opens
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「3。2。1。0」
間髪入れず冬川は言う。
(戦闘開始。これよりステルス・ジャマーを起動します。各隊員は指示があるまで待機、この間に戦闘服のステルス機能を発動してください)
冬川の背後の席のオペレーターがジャマー発生器のスイッチを入れる。莫大な電力を喰うそれは、消費電力に見合うだけの威力を発揮する。
このマシンはカジキたちが使う旧型のステルス機能を停止させるが、森たちの使う新型にはいっさい影響をおよぼさない。
なんとも都合のいい話だが、戦闘機のミサイルがチャフ、フレアといった妨害策を無効化するように改良されてきた歴史を思えば、そこまで荒唐無稽ではない。
敵が使う旧型ミサイルはこちらのチャフ等で無効化されるが、こちらの新型ミサイルは敵の妨害を受けずに命中する。第三次世界大戦でしばしば見られた空中戦だ。
それと同じことが今この瞬間に起こっている。そして今、ジャマーはその効力を完全に現した。冬川は命じる。
(突入!)
スケルトンが玄関へ猛射撃を浴びせる。ドアが粉々になって吹き飛び、1階への突入口が開かれる。すでにステルス状態の森が叫ぶ。
(いくぞ!)
彼女はH&K MP7A1を手に、先陣を切って走りだす。その後を理堂たちが追いかける。
電光石火の勢いで全員が建物内に踏みこむ。森は眼球のみを動かしてあたりを見回す、ステルス状態が解けた革命戦団のメンバー数名の姿を視認する。
敵を見つけて射程距離にとらえたら、やることは一つ。(撃て!)。チームAによる攻撃が始まり、戦団メンバーすべてが殺害される。
理堂から少し離れた地点、大型の観葉植物が置かれているところで、一人の男が腹部と両足から大量の白い人工血液を流して倒れている。彼は苦しげにうめく。
「クソッ……いったい、何が……」
その男に森が近づく。彼女はあえてステルスを解いて姿を現した後、男にたずねる。
「お前、名前は?」
「(真っ青な顔で)カジキ……」
「知っているぞ。剣崎・ジョシュア・治の逃亡作戦においてリーダーを務めている、そうだろ?」
「……」
「情報局特別調査室の監視力と調査力をもってすれば、この程度は朝飯前だ。さて、質問に答えろ。(銃口を顔面へ向ける)。剣崎はどこにいる?」
「その前に……私からも、質問させて……もらおう。どうやって、私たちの……ステルスを……強制解除した?」
「答える義務はないと言いたいが、特別に教えてやる。
特別調査室には大量の予算があり、それを使えばステルス・ジャマーを運用できる。あの金食い虫のジャマーをだ。
後は言わなくてもわかるだろう。ジャマーでお前たちの旧型のステルス機能を停止させ、そのくだらない待ち伏せ作戦を無力化した」
「なるほど……」
「金があれば強力な新型兵器を持つことができ、新型があれば旧型に頼る貧乏人のザコを楽に叩きつぶせる。そう、アリを踏んで殺すようにな……」
森はカジキの右足を強く踏みつけ、負傷している個所をことさらに痛めつける。
「グァッ!」
「これが金の力だ。現実世界におけるペイ・トゥ・ウィンだ。お前のような文無しは、どれだけ必死に戦おうと、私たちのような特権階級の金持ちには勝てない!」
「……(酸素を求めて大きくあえぐ)」
「お前の質問に答えたんだ、今度は私の質問に答えてもらおう。剣崎はどこだ? 言え!」
返答はない。森はさらにカジキの右足を踏み、拷問する。
「答えろッ!」
「ギャアァッ!」
「はは、楽しいな! 何もできない無力で弱い人間に暴力を振るうのは! どこかのドイツの哲学者が言っていた通りだ!」
「やめろッ……!」
「だったら質問に答えろ! 剣崎はどこだ!」
もう一度強く踏む。激痛、耐え切れなくなったカジキは気絶する。森は愚痴る。
「なんだ、リーダーのくせに、だらしない……」
彼女はカジキの顔へツバを吐きかけ、チームAの隊員たちへ振り返り、言う。
「仕方ない。手分けして探索だ。理堂とスズキは私についてこい、2階を捜すぞ。残りのメンバーはこのフロアの他の部屋だ、指揮はサトウに任せる」
名前を呼ばれたその隊員、サトウは「はい」と答える。満足げに森はうなずき、指示を出す。
「カジキは手錠をかけて拘束しろ。では、何かあったら連絡を。行動開始!」
森は再びステルス状態となって、理堂たちを引き連れ2階へと続く階段へ向かう。
間髪入れず冬川は言う。
(戦闘開始。これよりステルス・ジャマーを起動します。各隊員は指示があるまで待機、この間に戦闘服のステルス機能を発動してください)
冬川の背後の席のオペレーターがジャマー発生器のスイッチを入れる。莫大な電力を喰うそれは、消費電力に見合うだけの威力を発揮する。
このマシンはカジキたちが使う旧型のステルス機能を停止させるが、森たちの使う新型にはいっさい影響をおよぼさない。
なんとも都合のいい話だが、戦闘機のミサイルがチャフ、フレアといった妨害策を無効化するように改良されてきた歴史を思えば、そこまで荒唐無稽ではない。
敵が使う旧型ミサイルはこちらのチャフ等で無効化されるが、こちらの新型ミサイルは敵の妨害を受けずに命中する。第三次世界大戦でしばしば見られた空中戦だ。
それと同じことが今この瞬間に起こっている。そして今、ジャマーはその効力を完全に現した。冬川は命じる。
(突入!)
スケルトンが玄関へ猛射撃を浴びせる。ドアが粉々になって吹き飛び、1階への突入口が開かれる。すでにステルス状態の森が叫ぶ。
(いくぞ!)
彼女はH&K MP7A1を手に、先陣を切って走りだす。その後を理堂たちが追いかける。
電光石火の勢いで全員が建物内に踏みこむ。森は眼球のみを動かしてあたりを見回す、ステルス状態が解けた革命戦団のメンバー数名の姿を視認する。
敵を見つけて射程距離にとらえたら、やることは一つ。(撃て!)。チームAによる攻撃が始まり、戦団メンバーすべてが殺害される。
理堂から少し離れた地点、大型の観葉植物が置かれているところで、一人の男が腹部と両足から大量の白い人工血液を流して倒れている。彼は苦しげにうめく。
「クソッ……いったい、何が……」
その男に森が近づく。彼女はあえてステルスを解いて姿を現した後、男にたずねる。
「お前、名前は?」
「(真っ青な顔で)カジキ……」
「知っているぞ。剣崎・ジョシュア・治の逃亡作戦においてリーダーを務めている、そうだろ?」
「……」
「情報局特別調査室の監視力と調査力をもってすれば、この程度は朝飯前だ。さて、質問に答えろ。(銃口を顔面へ向ける)。剣崎はどこにいる?」
「その前に……私からも、質問させて……もらおう。どうやって、私たちの……ステルスを……強制解除した?」
「答える義務はないと言いたいが、特別に教えてやる。
特別調査室には大量の予算があり、それを使えばステルス・ジャマーを運用できる。あの金食い虫のジャマーをだ。
後は言わなくてもわかるだろう。ジャマーでお前たちの旧型のステルス機能を停止させ、そのくだらない待ち伏せ作戦を無力化した」
「なるほど……」
「金があれば強力な新型兵器を持つことができ、新型があれば旧型に頼る貧乏人のザコを楽に叩きつぶせる。そう、アリを踏んで殺すようにな……」
森はカジキの右足を強く踏みつけ、負傷している個所をことさらに痛めつける。
「グァッ!」
「これが金の力だ。現実世界におけるペイ・トゥ・ウィンだ。お前のような文無しは、どれだけ必死に戦おうと、私たちのような特権階級の金持ちには勝てない!」
「……(酸素を求めて大きくあえぐ)」
「お前の質問に答えたんだ、今度は私の質問に答えてもらおう。剣崎はどこだ? 言え!」
返答はない。森はさらにカジキの右足を踏み、拷問する。
「答えろッ!」
「ギャアァッ!」
「はは、楽しいな! 何もできない無力で弱い人間に暴力を振るうのは! どこかのドイツの哲学者が言っていた通りだ!」
「やめろッ……!」
「だったら質問に答えろ! 剣崎はどこだ!」
もう一度強く踏む。激痛、耐え切れなくなったカジキは気絶する。森は愚痴る。
「なんだ、リーダーのくせに、だらしない……」
彼女はカジキの顔へツバを吐きかけ、チームAの隊員たちへ振り返り、言う。
「仕方ない。手分けして探索だ。理堂とスズキは私についてこい、2階を捜すぞ。残りのメンバーはこのフロアの他の部屋だ、指揮はサトウに任せる」
名前を呼ばれたその隊員、サトウは「はい」と答える。満足げに森はうなずき、指示を出す。
「カジキは手錠をかけて拘束しろ。では、何かあったら連絡を。行動開始!」
森は再びステルス状態となって、理堂たちを引き連れ2階へと続く階段へ向かう。
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