VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第11章 この社会の平和を守るために

第177話 包囲 Solid State Situation

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 一台の装甲兵員輸送車が荒廃した下民地区を走っていく。搭乗しているのは森をはじめとする特調のメンバー約十名だ。誰もが戦闘服に身を包み、沈黙している。
 それらの中には緊張した顔の理堂もいる。彼は近くのデンマに話しかける。

「もうすぐ目的地ですよね……」
「あぁ」
「作戦、うまくいくでしょうか?」
「弱気なこと言ってんじゃねぇよ! どんなに困難な作戦でもやり遂げる、それが俺たちエリート部隊だろうが!」
「すみません」
「まぁお前は初めての実戦だしな、ビビる気持ちはわかる。だがもうすぐ現場だ、仲間の士気を下げるような発言は慎め」
「はい」

 森が声をかける。

「怖いなら深呼吸でもして落ち着け。それくらいの時間の余裕はある」
「わかりました」

 同時刻、輸送車の前を走る指揮車に乗っている冬川が車載通信機を使い、全隊員の脳内へ直接よびかける。

(情報班からの連絡によれば、敵はこちらの動きを察知した模様。したがって奇襲作戦は中止、かわりに正面突破を狙うこととする)

 続いて彼女は上空を飛ぶ輸送機(オスプレイを改良した後継機)の搭乗員に話しかける。

(作戦が変更された以上、遠慮はもういりません。堂々と行動し、敵を威嚇してください)
(了解です)

 こうしている間にも時は進む、森たちは目的地であるアパート型のホテルのすぐそばまで近づき、停車する。冬川は全隊員に言う。

(作戦開始。各員、迅速に展開せよ)

 誰もが(了解)と返答し、輸送車から出て行動を始める。まずデンマ率いるチームBが建物の裏手へ走り、そこから敵が逃げられないよう封鎖する。
 森、理堂、そのほか数名からなるチームAは玄関前の小庭の担当だ。彼女たちは油断なく身構えながらあたりの様子をうかがう。

 輸送機がティルト・ローターの角度を変えながら降りてくる。それは騒音と共に着地し、機体後部の扉を開ける。
 機内からエクソ・スケルトンが登場する。かつて森とデンマが試運転を行い、七寺や彼の仲間を虐殺する時に使った、あのスケルトンだ。

 スケルトンはしっかりとした足取りで動き、銃器を満載したその四本腕を玄関へと向ける。もし敵が出てくるなら容赦なく皆殺しにする態勢だ。
 こうしてホテルは完全に包囲された。後は突入して治たちを殺し、あるいは捕縛するのみ。

 指揮車の冬川が全員に通達する。

(これより無線を閉鎖します)

 彼女の隣の席のオペレーターが機器を操作し、強力なジャミング電波を発生させる。よって、無線機を使った通信は行えなくなる……特調のメンバーを除いては。
 このジャミング電波は、民生用の無線機が放つ弱い電波を無力化する。だが特調のメンバーが使用する強力な無線機は、妨害の影響を受けない。

 よって現在、革命戦団のメンバーはまったく無線通信ができないが、しかし森たちは低音質ながらも可能という一方的に有利な状況が形成されている。
 冬川は通信のテストを兼ねて全隊員に命令する。

(異常を感じた者はすぐに報告を。繰り返す、報告を)

 森が答える。

(現場では特に異常なし。デンマ、そっちは?)
(問題ねぇよ、いつでも戦える)

 二人の返答を聞き、冬川は返す。

(わかりました。では全員そのまま待機。これより敵に降伏勧告を行います)

 彼女は目の前のマイクを使って放送する。

「建物内の諸君。あなた達は完全に包囲され、孤立した。逃げ場はありません。もはや抵抗は無意味、よって降伏することを提案します。
 降伏するならば命は取りません。ですから武装解除して、両手を頭の後ろに組んだ状態で建物から出てください。
 これより20を数えます。もしカウントがゼロになっても降伏が行わなければ、その時は実力行使をおこないます」

 誰も何も答えない。静寂が場を支配する。冬川はマイクの横のスイッチを押す、機械の無機質な合成音声が固い調子でカウント・ダウンを始める。

「20。19。18。17。16。15。14……」

 カウントは冷酷無情に減っていく。誰も何も答えない。
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