VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第11章 この社会の平和を守るために

第181話 バカなインテリが生み出した精神的オモチャ  Fundamental human rights

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 いや、本当にそうか? もっとも良い策は、そもそも近づかずに殺すことだ。その方法を考えろ、もう少し観察してチャンスを狙え。
 更に時間を稼ぐため、森は新たな話題を切り出す。

「降伏のつもりがないなら遠慮なく殺させてもらう。だがその前に一つ聞いておく、お前はなぜ革命活動に参加した?」
「この監視社会が、リトル・マザーによる独裁的な政治が許せないからだ」
「なぜ許せない?」
「民主的な国家が成立するためには、いろんな種類の自由が必要だ。信教の自由、思想の自由、集会を行う自由、そして何より……言論の自由だ。
 で、逆にあんたに聞くがな。現代の日本にそういった自由がどれだけあるんだ? 俺が考える限り、今のこの国はナチス・ドイツみたいな自由のない地獄だ。
 時代錯誤の警察国家なんだよ。ちょっとでも政治批判をするとすぐあんたみたいなクソ野郎が殺しにくるんだ」
「クソ野郎はお前だろう? テロで平和を破壊し、治安を乱す。犯罪者が偉そうな口を叩くな!」
「お前こそ偉そうにほざいてんじゃねぇ! 元はといえば、LMが言論の自由を弾圧するから俺みたいなテロリストが、いや、革命家が出現するんだろうが!
 政府が政権批判を謙虚に受け入れ、集会やデモの権利を認め、平和な政治活動ができるようにしてればよ。革命家なんて必要ねぇんだ。
 革命家が出現するのは国が腐敗している証だ!」
「自分の薄汚い犯罪行為の理由を国に押しつけるな! テロを行う大義名分を国の欠陥のせいにするな!」
「テロを行わなければろくに改革できないような、そんな腐った国を守るお前に何が主張できる!」
「あぁ言えばこう言う……!」
「そのセリフ、そのままそっくりあんたに返すぜ!」

 シンゴは床に唾を吐き、森を強い憎悪と共に睨む。森も負けじと睨み返す、食ってかかる。

「お前がどんな理屈を唱えようと、法律というルールに違反するイカれた犯罪者である事実に変わりはない。
 聞け! 法律は正義によって生み出される、したがって、法律にしたがう者は正義だ。法律という正義に違反するお前は悪だ!」
「クソッタレ、間違った法律は正義じゃねぇ! 法律という名の暴力、悪のかたまりだ!」
「ならば聞くが、法律が間違っているかどうか、どうやってお前は判断できる? お前の言い分はただの身勝手な印象論、独断と偏見にもとづく主観的な意見だ!」
「基本的人権を踏みにじる法律はどう考えてもおかしいだろうが! 印象論でもなんでもねぇ!」
「私は基本的人権などという抽象的で曖昧な概念など認めない。それはバカなインテリが生み出した精神的オモチャに過ぎん。
 いいか、クソガキ。物事というのは、それによって利益が生み出されるかどうか、こういった基準で判断すべきものだ。これは具体的で合理的、しかもわかりやすい。
 たとえば、健康な犬は様々な利益を生み出す。ペットとして、番犬として、警察犬として、動物実験の道具として、他にも数えきれないほどの利益をもたらす。
 だが病気の犬は? まるで役立たずのゴミ、無駄メシ食らいだ。ならばさっさと殺して飼育するコストを減らした方がずっといい」

 激高し、シンゴは怒鳴る。

「それと法律と何の関係がある!?」
「あるもあるさ、大有りだ。役に立つもの、利益を生み出すものは正義だ。したがって、法律で積極的に保護すべきだ。
 これと逆に、役に立たないもの、利益を生み出さないものは悪だ。人々の足を引っ張る厄介者、お荷物だ。そんなものを法律で守る意味は無い。
 利益を生む正義の存在を守る法律は同じく正義であり、そうでなければ悪だ。もう分かっただろう。法律が正義に基づくか、私はこのように合理的に判断できる。
 だがお前はどうだ? どうとでも解釈できるくだらない概念で自分に都合のいい意見をわめきちらしているだけだ」
「役に立たなければ悪だと……! だったら、満足に働けない病人や障害者はどうなる!? お年寄りはどうなる!?」
「お荷物は死ねばいい」
「それが正義の味方の言い分か!」

 森は冷静に考える。敵はこれほどまでに怒り、取り乱している。奇襲に対応できるような心理状態ではないだろう。
 そして今まで時間を稼いだおかげで、必殺の奇襲手段を思い出した。くだらない議論など打ち切って、さっさとこの愚者を殺し、剣崎の確保に向かうとしよう。言う。

「どうとでもほざけ、青二才。お前がどれだけ叫ぼうと、法というルールに違反している限り、お前は悪だ。クズだ、ゴミだ、社会に迷惑をかける役立たずのカスだ。
 まぁ仕方ない、腐ったミカンやリンゴはいつの時代にも存在するからな。せめて私にできる情けは、そういう商品価値のない無能を速やかに殺して捨てることだ」
「言いやがったな、クソアマ……!」
「リトル・マザーの指導におとなしくしたがって働き、税金を納め、そうやって社会に利益をもたらす者のみが生きる権利を認められる。
 そしてお前はマザーに逆らい、税を納めず、社会に利益どころか不利益をもたらす。よって死ね、お前にできる最大の社会貢献とは今ここで死ぬことだ」
「俺は生きる!」
「その生きる権利、私が否定してやる。
 来い。決着をつけよう……」

 森は軽く体を動かし、左手でナイフを構え、右腕を引いて半身を守る。同時に、右腕へ意識を送ってリミッターを解除し、戦闘用の各種機能を開放する。
 シンゴもナイフを構え、叫ぶ。

「俺はあんたの傲慢さを切り裂く。その正義を否定する……!」

 戦いが始まる。
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