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第12章 すべてを変える時

第196話 暴力を振るう快感 Infernal hate daemon

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《アンドリューの視点》
 パティの攻撃で敵陣は大混乱だ。その隙を利用し、俺は部隊と共に突っこむ。敵を殺しながら土のう壁を越え、奥深くへ侵攻していく。
 思ったよりも相手の数が少ないのは、レーヴェがスエナの陽動に引っかかったせいだろう。作戦成功だな。仲間を激励するため、そして敵を威嚇するために俺は叫ぶ。

「やれ! いけ、ぶっ倒せ! 殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 叫びながら愛銃の赤塗装スペクトラを撃ち、左斜め前の敵3人を殺す。撃ち過ぎたせいで弾が尽きてしまう。
 俺は銃を投げ捨てる。アイテム・ボックスからナックル・ダスターを選んで実体化させ、右手に装備する。バリア展開、近くの若い女へ突き進む。

 女は俺を止めようとして撃ってくるが、そんな豆鉄砲じゃバリアは壊れない。俺は大きく跳んで間合いを詰め、女の眼前に立つ。悲鳴が上がる。

「ヒィッ……!」

 敵の顔が恐怖に引きつるのは、いつ見ても面白い。俺はニタニタ笑って「おらぁ!」と怒鳴り、左手で女の首根っこをつかんで引き寄せる。
 ナックル・ダスターの先端の刃が光る。女は、これから何が起こるかを察したらしい。

「助けっ……」
「死ね!」

 ダスターを顔面にぶちこむ。さらにぶちこむ、何度も何度も!

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 とどめだ、顎へアッパーを叩きこんで殴り殺す。死体を放り捨てて踏みにじり、顔へツバを吐きつけて言う。

「ハハハハハハハハハハハ! どうした、クソザコ! 何か言ってみろ!」

 死体は俺に答えず、瞬時にかき消える。ふん……つまらん。物足りない気分だが、今はゲートの破壊が優先だ。もうザコには構わず、さっさと向かうことにしよう。
 俺は駆けだす。遠くにゲートが見えてくる、同時に、スレイヤーZが行く手に立ちふさがる。

「アンドリュー! これ以上は進ませねぇ!」
「ほざけ、ションベン小僧!」
「なめるなぁッ!」

 Zはソードを構え、俺へ向かってくる。なるほど、間合いで考えればダスターよりソードの方が有利だろう。
 大馬鹿野郎め、その程度で勝ったつもりか? 俺は相手の上段斬りを左手で受け止めてソードをつかみ取り、ダメージを受けながら強引に踏みこむ。

 拳の間合いに入る。全力のアッパーを当てて気絶の状態異常を与える。Zは武器を手放しながら仰向けに倒れていく。
 追撃チャンスだ! 俺はすかさず馬乗りになり、いわゆるマウント・ポジションの態勢となって、無抵抗のZをボコボコに殴る。

「どうしたァ、カス! 抵抗してみせろ! ハハハハハハ!」
「やめろっ……!」
「やめるか、ボケ!」

 Zの顔面へツバを吐き、さらに殴る。

「爽快だよなぁ、こうして弱い者いじめをするのは!」
「クソッタレ!」
「俺を罵る資格がお前にあるのか? 1年前、お前は俺を殺した。だから今、その恨みをこうして晴らしている。正当な復讐だ!」
「だからってここまでやるのは……」
「うるさい!」

 俺は左手の指でZの両目をえぐり、破壊する。リスポーンするまでずっとこのままだ、ざまぁみろ!

「どうだ、何も見えない気分は? 怖いか! 恐ろしいか!」
「ふざけっ……」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」

 ダスターの刃をめりこませるように何度も殴りつける。ZのHPがゼロになる、それでも殴り続ける。

「やめろ! おい、やめろって!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 最高だ! 最高の気分だ! これが面白いから俺はこのゲームを遊んでいる! 暴力万歳! ブレイブ、レヴェリー・プラネット!

「やめろ、クソ!」
「お断りだ!」
「ちくしょう……!」

 言い捨ててZの死体が消える。根性無しのクズめ……。まぁきっちり復讐に成功したし、今回はこれで勘弁してやるか。俺は立ち上がり、再びゲートへ駆けだす。
 前方にザコ3人が現れ、「止まれ!」と叫んで発砲してくる。バリアで弾をしのぎながら走り、地面に転がっているアサルトライフルを蹴り上げて浮かせる。

 そのままそいつを空中キャッチ。FX05 シウコアトルだ、グッド! 反撃を行うためにバリアを解き、走り撃ちでザコどもを片づけていく。

「うわっ!」
「きゃぁーーーっ!」
「ぐっ……」

 弱いくせに調子に乗るからそうやって惨めにくたばるんだ。微課金は微課金らしく、重課金の俺に殺されていればいい!
 女のザコの死体を踏みつけて乗り越え、さらに進む。ついにゲートに到着する。あたりにはどんな敵もいない、何も恐れずゲート破壊に専念できるわけだ。

 シウコアトルを撃つ。ゲートの耐久力を示すゲージがどんどん減っていく。勝利を確信して思わず笑ってしまう。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 残念だったな、レーヴェ! 貴様のような無能な指揮官は、いくら重課金を集めても勝てない!
 優れたチームは優れた指揮官に率いられてこそ真価を発揮できるんだ。課金の暴力に頼って勝つことしかできないお前に、まともな指揮能力などあるものか!


《レーヴェの視点》
 戦争イベントで撃破された場合、復活するまでにいくらかの待機時間を要する。
 そして先ほどスエナに殺された私は、どこにリスポーンするかを選択する画面のまま、待機時間が終わるのを待っている。

 これからどういう手を打とうか? そう考えていると、誰かがクラン内チャットで通信を入れてくる。

(レーヴェだ)
(こちらスレイヤーZ! アンドリューがゲートを壊し始めた!)
(何……! お前、奴を止められなかったのか!?)
(そんなんどうでもいいだろ! とにかく何とかしてくれ、ヤバい!)
(クソッ! 全軍に告ぐ、西門へ行け! アンドリューを……)
(もう駄目だ!)

 敵味方の全員に対し、ゲーム内アナウンスが告げる。

「西門のゲートが破壊されました。これより基地内部での戦いに移ります。繰り返します、西門のゲートが破壊されました。これより基地内部での……」

 遅かったか!

(おい、レーヴェ! どうすんだよ!)
(慌てるな! まだ完全に敗北したわけではない!)

 そうだ、まだ完全敗北ではない。基地内の星マーク(☆)をすべて破壊されたその時こそが敗北なのだ。そうなっていない以上、勝つチャンスはいくらでもある。
 私は必死に心を落ち着けようと試み、無理やり平静さを装って全軍に命じる。

(各門の部隊はただちに撤収! ☆を防衛する配置につけ!)

 連合軍め……! これ以上の好き勝手は許さない! 必ず叩きつぶしてやる!
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