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第12章 すべてを変える時

第197話 グレート・ベース侵入 Overrun

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《アップルの視点》
 一時はどうなることかと思ったけど、最終的には予定通り、こうしてゲートを攻略した。アンドリューと彼の部隊の奮戦のおかげだ。
 私はアンドリューが嫌いだが、それでも彼にお礼を言いたい。ありがとう。

 とはいえ全てがうまくいったわけじゃない。アンドリュー隊の進撃が妙に遅かったせいで、試合時間をかなり使ってしまった。
 いったいアンドリューはどんな指揮をしたんだろう? 私の予想が正しければ、もっと早く攻略できたはずなのに。

 まぁ原因はだいたい予想がつく。死体への追い打ちとかまるで無駄なことに熱中してたんだろう。
 彼はいつだってそうだ。暴力を振るうことばかり考えて、他のことを後回しにする。いや、彼だけでなく彼の仲間たちも同じだ。みんなして暴力を振るいたがる。

 こんな連中を連合軍に入れてよかったんだろうか。正直なところ、私は少し後悔を感じる。戦力増強のためとはいえ、やはりこの選択は……。
 ふぅ、嘆くのはやめよう。今さらどうにもならない。それよりも今後のことが大事だ、気を引き締めなきゃ。


《スエナの視点》
 ボクたち連合軍は、今までと同じく4つの部隊に分かれ、基地内に入る。
 ここからが正真正銘の本番だ。グレート・ベースは他のベースと違い、地下2階、地上6階の特別仕様で造られている。そして破壊すべき☆マークは合計5つ。

 分かるだろ? このベースは他よりずっと攻略しにくいんだよ。だから今まで以上に急がないと時間切れになってしまう。
 まずは戦局を把握しなきゃ。アップルや仲間と共に通路を進んでいるボクは、クラン内チャットで軍全体に連絡する。

(こちらスエナ。各部隊、状況は?)
(こちらパティ。現在、階段へ向かって進行中。何事もなければそのまま2階へ上がります)
(了解。あたりの様子は?)
(敵はいませんね……。たぶん階段の防衛を諦めて、かわりにエレベーターを守ることにしたんでしょう。スエナさん、気をつけて)
(はい。で、アンドリューさんは?)
(地下1階を探索中。こいつはあくまで俺の勘だが、このフロア、間違いなく☆があるぜ。あと、そいつを守る敵さんもな)
(戦いはさけられないってわけか……)
(心配するな、我がネメシスは無敵だ。絶対に負けん)
(でも気をつけてください。どこかに罠があるかも……)
(ハハハハハハハハハハハハハハハハハ! だったら罠ごと踏みつぶして進むさ)

 うーん……。アンドリューさんの様子がおかしい。だいぶ興奮しているような、そんな感じがするんだよね。君もそう思うでしょ?
 もしかしたら具合が悪いのかも。ボクはそう思って発言しようとする、(あの……)。しかしアンズさんの発言に割りこまれてしまう。

(こちらアンズ! 近くに敵がいるみたい!)
(えっ?)
(うちの部隊は1階東のここだけど、この先の広間、どう考えても敵が待ち伏せしてると思うんだ)

 ボクは基地内の地図を立体映像で出して、アンズさんの現在地と広間を確認する。なるほど、待ち伏せにうってつけの複雑な地形だ。

(アンズさん、確かにその可能性は高いと思うよ。で……どうする?)
(ビビって後ろに下がるなんてキライ! このまま突っこんでやっつける!)
(あんまり無茶は……)
(でも時間がないんでしょ? だったらイチバチで戦ってくしかないよ)
(……わかった、じゃあ後はアンズさんの判断にお任せする。でも本当、無茶はしないで)
(了解!)

 通信が切れる。そして、道の先に巨大なドアが姿を現す。
 このドアの先は、第1エレベーターがあるホールだ。ここを奪えば新たなリスポーン地点に設定できるし、エレベーターで一気に上層階へ行くこともできる。

 そういう重要なところだけに、パティさんが指摘した通り、敵がしっかり守ってるだろう。心してかからなくちゃ。
 ボクは足を止めて後ろへ振り向き、みんなに言う。

「さぁ、戦闘準備だ! 必ずエレベーターを確保しよう!」

 負けるもんか!


《パトリシアの視点》
 階段に着いたわたしは、部隊を引き連れて2階に上がる。金属製の白い通路が現れ、無言で歓迎してくれる。
 敵は……いないみたいだ、少なくとも今のところは。それでもわたしは警戒を解かず、近くのレッド・マスクに言う。

「ねぇ、どこに行くべきと思う? このまま前進か、あるいは逆の方を探してみるか……」
「そうっすね……」


《赤羽/レッド・マスクの視点》
 俺は「そうっすね……」と生返事をして、考えこむフリをする。その間、ベースのデータをサーバーから取得して流し読む。
 ふむ……。☆の所在地は上から順に、6階、4階、3階、地下1階、地下2階。ってことは、この2階には敵しかいねぇな。

 そしてアンドリューの現在地点からするに、奴はそろそろ地下1階の☆防衛部隊と戦い始めそうだ。
 あいつがどんな問題を起こすか分からん以上、しばらくダラダラ歩き回って時間を潰し、事態を様子見したほうがいい。だったら話は決まりだな。

「パティさん、こっち行きましょう! 俺の直感が、こっちに☆があるってささやいてるんすよ!」

 もちろんこんなのは大嘘だが、そんなのどうでもいい。とにかく時間を稼げりゃOKだ。
 後はアンドリューがどう出るかだな……。姉川、しっかり奴をコントロールしろよ。マジで頼むぜ。
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