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第12章 すべてを変える時

第209話 不可解な快勝 Gold-brick

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《スエナの視点》
 なんだこりゃ。ちょっと攻撃しただけなのにどんどん敵が倒れてく。それどころか、戦わずに消え去る奴までちらほらいる。
 あまりに楽勝すぎて不安だな……。まさかこれは罠? ちょっと確かめなきゃ。ボクは4人の味方を連れて近くの柱の陰にかくれ、チーム内チャットで話す。

(こちらスエナ。ねぇ、アップル、敵が弱すぎると思わない?)
(確かにね。内輪もめでもしてるのかな)
(どうしよう?)
(まぁ気にしなくて大丈夫じゃない? 原因なんか放っといて、このまま一気にやっつけよう)
(同感!)
(私の部隊は左を攻めるから、スエナは逆をお願い)
(オッケー! 任しといて!)

 通信を切り、別回線であたりの味方に言う。

(みんな、今から突撃するよ! 準備はいい?)
(はい!)
(オーケー!)
(いけます!)
(了解!)

 いい返事だ! よし!

(突撃ーっ!)

 ボクたちは柱から離れ、目の前に見える巨大な機械の右側へと進む。前方の障害物に隠れている敵が姿を現し、ボクらへ発砲してくる。
 バリアしながら突っこむ余裕なんてない。むしろ被弾覚悟で撃ち合って倒してしまえ。号令する。

「怯むな、撃て!」

 ハリウッド映画に出てくるような銃撃戦が始まり、弾丸が乱れ飛ぶ。敵も味方もどんどんHPを失い、限界に達した人から死んでいく。
 やがて全ての敵が倒れ、抵抗がやむ。だがこちらも3人が倒され、残る1人の男性もボロボロだ。ボクは彼に言う。

「大丈夫?」
「さすがにキツいですね。それにもう弾切れです」
「わかった。じゃあしばらくどこかに隠れて。ここから先はボク一人で行く」
「無茶ですよ!」
「でもこのビッグ・チャンスを逃すわけにはいかない。リスクを背負ってでも攻めなきゃ」
「……わかりました。では、ご武運を」

 彼が軽く敬礼する。ボクは「ありがとう」と返事してコルト M4A1を構え直し、前進する。
 ☆はどこだ……どこにある? 早く見つけなくちゃ。もしくは敵部隊のリーダーでもいい、大将首を取れば勝ったも同然だ。

 全力で戦場を駆け、敵を撃ち、その死体を踏み越えて奥へ侵攻する。くそっ、欲しいものはどこにも見つからない! まさかこの部屋には無いのか?
 そう思って歩いていると、ボクは少し開けた場所に出る。前方に見える金属タンクの後ろから、若い女性の声が流れだす。

「おー、あんたはスエナ?」
「誰だ!」
「あたしはここの防衛部隊のリーダー、ホワイト・ウィッチ。☆を守るボスってところかな」
「ボクになんの用だ?」
「せっかく会えたんだしさ、ちょっと遊びにつきあってよ。一騎討ちしよう?」
「断る!」
「ノリ悪いなぁ。じゃあ強引に……」

 ホワイト・ウィッチが隠れ場所から出てくる。その右手にあるのは一振りのソードだけ、マジで一騎討ちする気らしい。
 そうはさせるか。こうして距離が離れている間に銃で倒す! ボクは即座にコルト M4A1のトリガーを引く。

 多くの弾丸が発射され、ウィッチに当たる……寸前、彼女のバリアに当たって消えていく。その間にウィッチはボクへと走り、ソードを振り上げて叫ぶ。

「無駄、無駄ぁ! 効くもんか!」

 ボクは途中で攻撃をやめ、素早く後ろに跳び退きながら銃を捨てる。かわりにソード(フェアレーター)を装備して着地、走りこんできたウィッチの上段斬りを止める。
 そのまま斬り合いが始まる。二合、三合と打ちあってつばぜり合いになり、全身に力をこめつつボクは言う。

「どけ! 君にかまってる暇はない!」
「でもあんたの足止めがあたしの仕事なんだよ」
「いいからどけっ!」
「はいはい」

 ウィッチが自分のソードを上へ押しあげ、その勢いでボクの体勢を崩そうとしてくる。ボクはひざを曲げて必死に踏ん張り、逆襲するべく相手のすねを蹴る。

「はッ!」

 蹴りが決まってウィッチがよろめく。その瞬間に手首へ斬りつける。

「やぁぁぁぁーーーっ!」

 直撃だ。ウィッチのHPがごっそり削れ、動揺したんだろう、彼女はソードを取り落とす。ボクはすかさず二撃目をおみまいして腹を蹴る。
 ゲームならではの誇張表現によって、彼女の体が数メートルも後ろへ吹き飛んでいく。

「うわわっ……」
「勝負あり! ボクの勝ちだ!」
「ふん、思ったよりやるじゃん……」

 憎まれ口をたたきながらウィッチは起き上がり、シケた顔でぼやく。

「はぁ~、やってらんね。かったるぅ~」
「さっきの威勢はどうした?」
「そんなん知らね。あたしはこれで満足したし、それに負けたしね。退散するわ」
「どこへ行く!?」
「さぁね~? 5階かも? んじゃ、機会あったらまたよろしく~」

 捨て台詞を残してウィッチが消える。もう諦めるなんてだらしないなぁ。
 まぁいいよ、こっちとしても無駄な戦いは嫌だ。一段落ついたし、☆探しを再開しなきゃ……。そう考えた時、チーム内チャットに連絡が入る。

(こちらアップル! ☆を発見!)
(マジ!?)
(座標データを送るから、スエナも早く援護に来て!)
(了解!)

 よっしゃ! 順調にいけばこの3つめの☆は必ず壊せる、とすると残り2つはどこだ?
 パトリシアさんの部隊は何か発見できただろうか。状況が落ち着いたら後で連絡してみよう。
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