VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~

夏野かろ

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第12章 すべてを変える時

第216話 たった一つの冴えた真実 Pay top dollar to get the top

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《スエナの視点》
 ボクとアップルは鉄骨の後ろに隠れ、小瓶に入った回復用の薬液を飲み、傷を癒している。だが完全回復する暇はないらしい。
 なぜなら、鉄骨の向こうから敵の足音が近づいてきているからだ。中途半端な体力のままで迎撃するしかない。ボクは思わず歯噛みして言う。

「ちっ! やばいよ、これ……」

 アップルが個人用チャットで答える。

(喋っちゃダメ! 敵に気づかれる!)

 彼女の言葉を読み取ったかのように敵がいう。

「音を殺す必要はない。なぜなら、お前たちの居場所はとっくに分かっているからだ」

 この声はレーヴェか! よりによってこいつが対戦相手とは、最悪! でもアップルはそう思わないらしい。

(スエナ、チャンスだよ! こっちは二人、でも敵は一人。アドバンテージは私たちにある)
(だからって、正面から挑んで勝てるとは……)
(いいから聞いて! あのね……)


《レーヴェの視点》
 私はゆったりとした口調で話しかける。

「さぁ、そんなところに隠れず、姿を現わせ。私を倒したいんだろう? だったら堂々と勝負を挑んでこい」

 彼女たちからの返事はない。ならば挑発といこう。

「なにか企んでも無駄だ。私には通じない。それより……」

 レーダー画面に映る、鉄骨の後ろの光点2つが動く。1つは鉄骨の右へ走り、残る1つは左へ。
 両者そろって同時に私の前へ飛び出す。右はアップルで左はスエナだ。2人は拳銃を構えて叫ぶ。

「スエナ、撃って!」
「終わりだ!」

 十字砲火が私を襲う。フルオート射撃による多数の弾丸が私の体を貫いていく。
 だが私のHPゲージは少ししか減らない。たとえていうなら爪を切った程度の減少量だ。スエナが驚く。

「おかしい! どうなってる!?」

 私はバリアを張りながら余裕たっぷりの態度で返す。

「そんなに不思議なことか? 重課金の私にとって、お前たちのような微課金の攻撃などカス同然。それだけの話だ」

 バリアが完全に展開される。安全を手に入れた私は、弾丸の雨の中、わざとゆっくりと銃をアイテム・ボックスにしまいながら言う。

「考えてみろ。幼稚園児が大人を殴ったとして、それがどれほどのダメージなのだ?
 いや、むしろこう考えたほうがいいかもしれないな。丸めたティッシュ・ペーパーを相手にぶつけたとして、それはダメージを生み出すのか?
 そんな攻撃で死んだり傷ついたりする人間がいるのか?」

 銃声がやむ。悲しいかな、彼女たちは弾切れとなった。私はバリアを解き、欧米人がよくやるように肩をすくめて両手を持ち上げ、おおげさに嘆く。

「あぁ! もし神が人間を造ったというなら、どうしてもっと賢くしなかったのだろう? どうしてこんな愚か者たちを生み出したのだろう?
 世の中には、やるだけ無駄だと予想できることが存在する。なのに君たちは愚かさのあまり、その無駄なことをやろうとする。
 もし”無駄ではない”と主張するなら、では答えてくれ。ウサギがライオンと戦ったら、ウサギは勝てるのか?」

 スエナたちの顔は真っ青になっている。それは恐怖のせいか、それとも別の原因か。まぁどちらでもいい。どうせこれから殺すのだ、気にしてもナンセンス。
 私は、腰につけたソードの柄を右手で取り出し、スイッチを押す。紫に輝く刀身が現れる。それを構えて死刑を宣告する。

「さて。お別れの時間だ」

 ふぬけた顔のアップルへ突進し、斬りつけて瀕死に追いこむ。隙だらけの胴体を蹴って軽く吹き飛ばす。

「きゃあっ!」
「なんだ、もう終わりか? だらしない……」

 震え声を絞り出し、スエナが喋る。

「こんなの冗談だ……」
「真実だ。すなわち、微課金は重課金に勝てない。わかったか?」

 なぜ愚か者は、たったこれだけの簡単な話が理解できないのだろう。本当に不思議だ。
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