君と僕の夏物語

狩摩

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君と僕の夏物語

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高校2年の夏。




僕は、君と出会いました。




「お前は…最後まで優しいやつだな。」




10月8日。




今日は、君を送り出す日。




眠っている君を見て、あの頃を思い出す。




そう、僕たちが出会った8月。




<8月12日>




「はぁ、ちゃんと前見て歩けよな。」




この日は、僕の弟が事故にあい入院することになった。




弟に本を買ってこいと頼まれた僕は、1階のコンビニに行った。




「本くらい、自分で買えよ。」




……なんて言いながら、1冊の本に手を伸ばす。




その時、僕の隣からもう1つの手が伸びてきた。




「あっ、ごめん。」




「いえ…私の方こそ…」




お互い慌てて手を引っ込める。




「あの、私いらないので…。買っていいですよ?」




君は、そう言って走っていった。




僕の頭に残っているのは、君の言った言葉じゃなくて…




君の笑顔だった。




  ーー君の笑顔は太陽のようでしたーー




君の笑顔が見たくて僕は毎日病院に行った。




「こんにちは。」




君に会う度に、声をかけて…




君と仲良くなり




いつの間にか、親友になっていた。




色々話して、一緒に遊ぶようにもなった。




時々喧嘩もするけど、次の日は必ず仲直りをする。




君は、病気とは思えないくらい元気で明るい子だった。




「あのー。」




「あのー。じゃなくて、いい加減名前覚えろよ。」




「えへへ…」




「えへへ…じゃなくて!」




「覚えてるよ。」




「本当に?」




「うん。慎一君でしょ?」




「おう。」




名前を呼ばれ返事をすると、君は僕と同じように聞いてきた。




「私の名前は?」




「…え?」




「私の名前も呼ばないよね。人のこと言えないからね。」




「……咲希」




お互い名前を呼び合い笑顔になる。




太陽のような笑顔を見る度に元気になる。




僕は、嫌な事を忘れさせてくれる君の笑顔が大好きだ。




君と居るのが楽しくて、僕も自然と笑顔になれる。




ーずっと君と笑って居られますようにー




「大人になっても親友だからな!」




笑顔で約束をした。




…僕は気づかなかった。




君の笑顔に悲しみと寂しさが混ざっていることを…




僕は、知らなかった。




君の病気が悪化していることを…




ある日。




僕は、「それ」を知った。




「余命1ヶ月だって。」




君の言葉によって、僕の願いは一瞬にして消えた。




心臓が止まるかと思った。




テレビなどで良く聞く余命宣告。




まさか、大事な親友が余命宣告されるなんて…




……余命1ヶ月。




こんなに短いなんて。




咲希は、高1の頃に身体に腫瘍が見つかり入院していたらしい。




治らなくて学校にも行けず、抗がん剤治療も思ったよりつらく、苦しい日が続いていた。




そんな時、慎一と出会い今までとは違う毎日が訪れた。




2人で過ごす時間が楽しくて、咲希は病気のことをすっかり忘れていた。




慎一も、治ったんじゃないかと思っていた。




でも、咲希は知っていた。




大人になれないということを。




慎一が帰った後、散歩をしようと医務室の前を通った。




その時に、看護師たちの声が聞こえたから、咲希は静かに耳を澄ませた。




「咲希ちゃん、あんなに元気なのに病気が悪化してるなんて…」




「もう、長くはないんでしょ?」




「大人になれないなんて可哀想よね。」




「せっかく仲のいい親友も出来たのにね。」




  ーーーもう長くは生きられないーーー




普通なら諦めてしまうかもしれないのに。




咲希は、その言葉を聞いた時最後まで慎一と笑顔で居ようと決めたのだ。




「咲希…、今なんて?」




「余命1ヶ月…」




9月12日。




君と出会ってから1ヶ月が経った今日。




君から余命宣告の話を聞いた。




まだ、1ヶ月しか経っていない。




僕の人生は長い。




君の人生は短い。




そんな事を考えた瞬間、僕の目から1粒の涙が流れた。





「慎一君…」




「なんで、笑顔なんだよ…」




悲しくて泣いていた僕とは違って、君は笑顔だった。




「だって、最後まで笑顔で居たいから。私、慎一君には笑顔で居てほしい。」




「そんなの……無理に笑わなくてもいいだろ!」




「無理にでも笑わないと、慎一君が泣き止まないでしょ?」




「…大丈夫だよ。咲希が居てくれれば、僕は笑顔になれるから。」




「慎一君…」




「咲希の笑顔は、人を幸せにするんだ。僕は、君と君の笑顔を守りたい。」




「……ありがとう。」




この日、僕は初めて見た。




君が流した涙。




それは、最初で最後の涙だった。




ーー君の流した涙を僕は忘れませんーー




次の日から、僕たちは思い出を今以上に作ることにした。




海で遊んだり…




「あ、ちょっと水かけないでよ!」




「周りをちゃんと見ない咲希が悪い。」




「私が悪いって言うの?!」




「あぁ、そうだよ」




「なによ!もう、慎一君なんか大嫌い!」
「はいはい」




願い事をするために四つ葉を探したり…




「もう、見つからない!!」




「諦めるなよ…」




「お前、眠いだけだろ!」




「あーーー!」




「なんだよ!」




「ねーむーいー!!」




「あ、こら!寝転ぶな!汚いだろ!」




「ねぇ………あーーーーー!!!」




「今度はなんだよ…」




「あった!幸せゲット!」




花火をしたり…




「きれいだねー!」




「危ないから振り回すな!」




「うるさいなー」




「うるさいってなんだよ!危ないから注意してんだろ!」




「大丈夫だよー」




「こら!やめろってば!」




お祭りに行ったり…




「わたあめ、りんご飴、たこ焼き、チョコバナナ、イカ焼き、焼きそば…あとはー」




「おい、食べすぎだろ。太るぞ。」




「うるさい!!」




楽しい時間はあっという間に過ぎていき…




君は、寝たきりになってしまった。




「慎一君、ごめんね。」




「なんで謝るんだよ。」




「だって、あの日に出会わなかったら慎一君は、つらい思いしなくて良かったのに」




「僕は、お前と出会ったことも親友になったことも後悔してない。」




「慎一君…」




「毎日が楽しかったし、お前のおかげで明るくなったし。咲希は、後悔してるのか?」




「私も、後悔してない。慎一君のおかげで楽しい毎日を過ごすことが出来たから。」




「咲希、ありがとな。」




「…うん。私の方こそ、ありがとう。」




君は笑顔なのに…




僕は、君の一言で泣きそうになった。




君が助かるなら僕は何だってする。




君と笑い合えるなら僕は傍に居続ける。




僕と君の人生を交換したい。




君に生きてほしいって願うのはダメですか?




どうして僕じゃなくて君なんだろう。




どんなに神様にお願いをしても君の病気は治らない。




ーーー願う事しか出来ない僕を君は許してくれますか?ーーー




君は、静かに眠るように息を引き取った。




「何があっても、笑顔を忘れずにね。」




この一言だけを残して。




「……お前は、最後まで優しいやつだな。」




僕は、涙を流しながら言った。




君と出会った8月。




僕の人生は変わりました。




たくさんの感情を知り




たくさんの思い出を作り




君と喧嘩をしたことも




君の前で泣いたことも




君から笑顔という宝物を貰ったことも




僕にとっては最高の思い出です。




君に出会えて嬉しかったです。




ーー君がくれた思い出と笑顔は僕にとってかけがえのない宝物です。


   生まれ変わったら、また君に出会えることを信じていますーー
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