自堕落魔女とホットコーヒー

藤枝ゆみ太

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第一章

留守を守ると言うけれど

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 相方が仕事へ行き、ほっとしたのも束の間。

 みいは洗濯カゴを抱えるとベランダへ向かった。

 相方の希望通り敷き布団、掛け布団を日干しし、洗濯した服も干す。

「うぅ、暑い」

 今は秋なのに、今日はやたらと日差しがきつくて肌を焼くようだ。

 布団や洗濯物を干している間に、照りつける太陽でじっとりと汗ばんできてしまう。

 このベランダ、実家と違って干せるスペースが極度に狭く、当初はカルチャーショックを受けたものの一つだった。

 それでも何とか洗濯物干しをすませ、キッチンへ行き、朝食で出た食器を洗いはじめる。

「よし、これで洗い物も終わりっと」

 伸びをしながら和室に戻り、大好きなこたつにあたる。

 テレビをつけて、毎日の楽しみのコーヒーを入れると、砂糖と粉ミルクをこれでもかと投入した。

 こうやって、甘いコーヒーを飲みながらテレビを見ている時間が、みいにとってほっと出来る数少ない瞬間なのだ。

 思えばこちらに越してきて、知り合いもいないわ喋る相手もいないわ、土地勘も自分の車も無いわで、留守を守ると言うけれど、実質はただのアパートに引きこもり状態と言うのが本当の姿だった。

 みい自身はインドアなので、そんなに苦ではなかったが、でもたまに物凄く息苦しさを覚える時がある。

 あと、働いていない後ろめたさと、それに伴う資金不足が悩みの種だ。

「出掛けると言っても、スーパーと百均くらいなんだけどなぁ……」

 みいはため息をつきながら、寂しくなった財布の中身を眺めていた。





*****





 元々出不精、しかも車が無い事もあり、こちらに越して来てもなかなか外に出る気力がわかなかった。

 天気が良い、こんな日にもだ。

 みいはこたつで少しうつうつし、ふと時計を見るともう午後1時を回っていた。

「あー、何か食べなきゃ」

 しかし、正直一人だけだと何か作って食べようと言う気持ちにもなれず、結局今のところ、朝の残り物を処理する感じだ。

 冷蔵庫には、残っていた焼きそばが少しだけ。

 みいはそれをレンジに放り込み、その間にペットボトルからグラスにお茶をそそぐ。

「はぁ。……いただきます」

 レンチンしすぎてカピカピになった焼きそばを頬張りお茶で流し込む。

「ごちそうさま」

 焼きそばの残りだけだったのであっという間に無くなった。

 食べきれないのでお昼は米も炊かなくなり、一人の飯は本当に貧相なものになっていた。

 実家にいた頃は、昼間は働きに出ているし、夜も家族でそれなりに食べていたが、こう一人でいると本当にろくなものを食わなくなってきているなぁと、改めて思う。

「コーヒーも冷めちゃったよ」

 うつうつしているうちに冷めたコーヒーをレンジに入れて温めなおし、財布の中を探りながらこたつにあたる。

 手にしたのは昨日手続きしたジョブカードだ。

 魔力が少しでも体内に含まれていると発行されるのがこのカードなのだが、昨今の世の中で、果たしてどれだけの人が利用しているのか。

 みい自身も、ほぼほぼ魔力を使う事も無く今まで生きてきた。

 科学技術や医療技術が発展しているから、魔力なんて使わなくても不自由無く生きて行ける世の中なのだ。

 神話の時代には圧倒的な力を持っていた魔力保持者達も、時代が変わればただの人なのだろう。

 チンッ

「あ、コーヒーレンチンし過ぎたっ」

 みいはジョブカードを放り出して、慌ててレンジへとかけて行く。

「あちっ…………うー、やっぱレンチンしたコーヒーはまずい……」





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