自堕落魔女とホットコーヒー

藤枝ゆみ太

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第一章

実家から

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「ただいまー」

 相方が帰って来たのは夜11時半の事だった。

 へとへとになりながら服を脱ぎ、洗濯カゴヘ入れたそれはどろどろだ。

「おかえり。遅くまでお疲れ様」

「疲れたよ……。はぁ……」

「お風呂わいてるから入ってきな」

「うん」

 とぼとぼバスルームへ行く相方を見つめながら、みいは本をさっとしまうと相方の様子をキッチンから覗き見る。

 バスルームでは携帯ゲームの音と共に、シャワーの音が響いた。

 相方の風呂は長い。中でうつうつしてるのもだが、どうやらバスタイムはみいのコーヒータイムと同じで、リラックス出来る時間のようだ。

 相方がバスルームにいるうちに、みいは二人分の湯タンポを作って布団の中に放り込んだ。

 そうこうしているうちに、時刻はもう夜中の0時になっていた。

「ふう、さっぱりしたー」

 相方がバスルームから出て、早速アイスクリームを食べて別室へと向かう。

 相方は真ポポム会なる宗教に入っているので、定期的に別室で拝んでいるようだ。

 信仰は誰しも自由なのでとくに文句はないが、その宗教は実はみいの家系にかなり迷惑をかけた団体なので、正直共に拝むことは一生涯無いと心に決めている。

 みいはテレビを消し、就寝の準備をしだした。

 明日の朝御飯のチェックも行い、もうあとは寝るだけだ。

 キッチンの電気を消し、和室の電気も消すと、別室から相方が戻ってきた。

「もう寝る?」

「うん、明日も早いし、寝ましょ寝ましょ」

「だね」

 みいと相方は布団に潜り込むと、湯タンポの暖かさが迎えてくれる。

「やっぱ暖かいねぇ」

「ほんとだねぇ。これなら僕、暖房無くてもいける気がする」

「うん、私も」

 途端に眠気がやってきて、欠伸が止まらなくなる。

「欠伸をしすぎてあごいたい」

「え、みいちゃん大丈夫?」

「うん……」

 そう言えば昔顎が外れかけた事があったなぁとぼんやり思い出しながら、みいは眠りについた。





 *****





「おはよー」

 今日も一日が始まった。

 みいはいつものように早朝に起き、朝食の準備をする。

 時間になって相方を起こし、共に食べた。

 いつものように相方を送り出し、と、変わらない毎日だが、少し違うとすれば今日は実家から荷物が届くのだ。

「午前中に届くからねー」

 電話で母が言っていたのを思い出し、みいはそわそわしながら一人過ごしていた。

 玄関にはハンコとすぐ出られるようにつっかけを用意し、よし、準備万端だ。

 しかし意識して待つと、やたらと長く感じてしまう。

 まだ朝の8時半。さすがにまだ来ないだろうと、みいは味噌汁作りをはじめる。

 肌寒い季節なので、鍋一杯に作って数日かけて食べる事にしよう。

 ネギを切り、油揚げも切り入れて煮込む。顆粒かりゅう出汁を入れ、味噌を溶かし入れ、最後に豆腐も入れたら出来上がり。

 適当だが、まあまあな出来ではなかろうか。

 火を使ったからキッチンはほんのりあたたかかった。


 ピンポーン


「あ、来たっ」

 チャイムが鳴るやいなや、みいはさっと玄関へと駆け出す。

 ガチャ

「はーい」

「宅急便でーす。みいさんですか?」

「はい」

「ではここにサインおねがいします」

 みいは用意していたハンコを押すと、お兄さんから荷物を受け取りドアを閉める。

「やったやった」

 早速和室へ行くと、段ボールを空け、中身を確認。

 中にはお菓子や洋服、食器など色々と入っていた。

 みいは一つ一つ確認しながら、段ボールの中の物を出して行く。

「ありがたい。色々入れてくれたなぁ」

 みいは早速母へと電話をし、感謝をつげた。

 電話し終わると、またしても涙が出てきてしまう。

「はぁ、涙もろくなりすぎだよな……」

 そう言いながらも、誰もいないのをいいことに涙はしばらく止まることはなかった。





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