自堕落魔女とホットコーヒー

藤枝ゆみ太

文字の大きさ
9 / 16
第一章

買い物

しおりを挟む
 時間は午前9時半になっていた。

 コーヒー飲みながらスマホなんて触っていると、あっと言う間に時間が過ぎて行く。

 みいはショルダーバッグをかけると、さらにリュックサックを背負う。

 今日は本格的な買い出しではないから、ショッピングカートを転がして行く事もないだろう。

 玄関から外に出ると、ひんやりした空気がみいを包み込む。

 室内とは違った、流れる風もある。

 出不精でなかなか出掛けられないみいだが、ひとたび外に出てみると意外と気分転換になるものだ。

「よし、行くか」

 アパートの鍵をし、みいは階段を下りていった。





*****





「くさっ」

 開口一番ついて出た言葉はそれだった。

 外の風は気持ちよくて、室内にいたらわからない爽快感があった。

 しかし、何故かこの付近一帯はとてもドブ臭い。

 相方が前、下水処理がなってないんだろうねと言っていたが、きっとそうなのだろう。

風向き次第でほんとうに息が出来ないくらいくさいのだ。

「うっぷ」

 みいは口呼吸に切り替え、そそくさとスーパーへと向かう。

 スーパーは徒歩で行ける距離なので、買い物はとても助かるのだが、なにせ一人での買い物。

 大量に買い込んだ日は、その帰り道がとてもしんどくなってしまう。

「微妙に傾斜してるしね」

 行きは緩く長い下り。帰りは緩く長い上り。もちろん大量の荷物も追加でだ。

 スーパーまで近いが、こんな時は本当に車が欲しくなる。

 みいは下り坂をのんびり歩きながら、車道の交通量の多さに改めて驚いた。

 実家のほうとは比べ物にならないくらいの賑わいだが、そのぶん横断歩道を渡る時は緊張してしまう。

 青信号になると早足で横断歩道を渡り終えると、もう少しでスーパーだ。

 そそくさとスーパーの敷地内に入り、スマホの買い物メモを確認する。

「えっと、肉も必要だよね。あとはー……」

 そう口にして思い出した。相方が味噌汁とか言ってたぞ。

「しょうがねぇ、豆腐とネギとあげも買ってくか」

 買い物メモに豆腐、ネギ、油揚げと入力し、スーパーへと向かう。

 「あ、百均あいてるか」

 時間は午前10時。

 みいは吸い込まれるように百均へと入る。

 正直百均しか楽しみが無いので、ここは何も思い浮かばなくても行くしかない。

 ここは、みいにとって小さなストレス発散の場。大事な場所だ。

 百均の生地売り場で見つけた、可愛い柄の生地をいくつか選び、それに合う白い糸もガゴに入れる。

 総額五百円もしないのだが、食材以外の自分だけの買い物ってだけで気分が違う気がする。

 買った生地達を大事にカバンにしまうと、軽い足取りでスーパーへと向かった。




*****





「いらっしゃいませー」

 スーパーは、平日の朝だと言うのに活気があった。

 年齢層は、どちらかと言うと年配が多いように見受けられる店内を、みいはカートをおしながら進んで行った。

 野菜をいくつか、あと冷凍エビフライ、肉、味噌、豆腐、カレーのルー、ハヤシライスのルー、インスタントコーヒー、コーヒーミルク、砂糖、相方お気に入りの納豆、キムチ、油揚げ。

 あとこっそりおやつの駄菓子を一つ二つ。

「あとはー……あ、そうだっ」

 そこで大事なものを思い出す。これを買いに来たのに今の今まで失念していた。

 みいは台所用品のコーナーへ行くと、お徳用のゴム手袋を手に取る。

「よし、これでささくれ対策万全だ」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...