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冒険者編
冒険者編19 異次元の戦い
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「はっ!まさか一日で二度もおもしれえ戦いができそうだとはな!坊主、死ぬのはもう少し後になりそうでよかったな。」
ドグがそう言うと、あの青年は俺の方を向いて、
「?何これ、どういう状況?」
先ほどまでのヒーローのような顔から何ともあほらしい顔になっていた。
あぁ、こういうやつなんだな。
「状況はいたって簡単だ!俺がこいつに殺されかけてる。助けてくれ。」
「……ぼろぼろにされながらよく頑張ったんだな。…たぶん俺より年下だろ。まぁいいか。……助けてやる。じっとしてろ。
……さて、名乗りを上げてもらおうか。」
そういって、青年はドグに向き直った。
「いいだろう、俺はゴブリンの眷属王・ドグ。強いやつと戦うのが好きなんだ。お前はどうやら相当な実力者らしい。名を名乗れや。」
ドグの言葉に反応したように、青年は肩に担いでいた剣をドグの方に向け、
「いいぜ、
……俺は、王都騎士・四聖騎士が一人、孤独な特攻人、カルナ・ギルティ。
ゴブリンの眷属王・ドグとやら、手合わせ…願おうか?」
その言葉をトリガーにこの二人の戦闘は始まった。
その戦いは、あまりに異次元。使っている得物は、どちらも木でできている有象無象の武器だ。そのはずなのだが、
二人の得物がぶつかり合うたび、周りの洞窟の中にその音がとんでもない音で響き、風圧だけで俺は飛ばされそうになるほどだ。
しかし、この二人の戦いのすさまじいところはパワーだけでなかった。
体の動き、異常的な得物捌き、その動きは到底普通の人間がなせることではない。
同じようなものを最近見た。それはドンキだ。この二人からはあいつの実力と同等のものを感じる。いや、それ以上だ。
その中で垣間見える、二人の表情は常に笑っていた。
どちらもが余裕の表情をしていたのだ。
「なかなかどうして、眷属王ってのは能無ししかいないのかねえ。」
「お前も大概だぜ、聖騎士さんよ。」
この二人どちらも魔術を使っていない。ただひたすらその異次元的な身体能力で己の、力と力をぶつけているのだ。
最初は互角に見えた勝負だったが、段々と聖騎士、カルナが優勢であるように感じる。
「おいおい、どうした眷属王!段々と動きのキレがなくなってきてるぜ。」
「お前さんが早すぎるだけだ。」
「そろそろ、眷属王特有の権能とやらをつかったらどうだ?このままだったら死んじまうぜ。」
そういった瞬間、カルナの木剣はドグの腹を思いきり攻撃し、ドグを洞窟の壁にたたきつける。
ドグは叩きつけられ、口にたまった血を吐き捨てる。
「はっ!やっぱり聖騎士ってのは強いんだな。話には聞いていたがこりゃ想像以上だ。」
洞窟の壁にもたれかかっているドグに、木剣を向けながらカルナは問う。
「権能使うか、この場で逃げるか。どっちかにしてくれ。お前さんだって死にたかねえだろ。」
「そうだな、ここで死ぬのはヴァンパイアの野郎にカッコがつかねえ。だが、今逃げるのはもったいないからな。もう少し楽しませてもらうぜ。」
ドグがそう言うと、ドグは立ち上がり体の周りに闘気が宿る。
魔力で自信を強化しているようだ。
「そう来なくっちゃ面白くねえよな。」
二人はまたその得物を構える。
そうして、またあの異次元的な戦闘が再開された。
その戦いを見てる俺からすれば、さっきの二人の戦闘のギアを三つ、四つあげているように見えた。
だが、それでもカルナは魔術を使わない。余裕の笑みをやめない。ギアが三つ四つ上がった程度、カルナからすれば変わっていないようなものらしい。
それに比べドグの表情からは余裕がなくなっているように見えた。
だが、どうやら力だけで言えばドグの方が勝っているらしい。
剣と棍棒がぶつかり合うたび、カルナは後ろに下がり、ドグは棍棒を振り切っている。
「おい!力負けしはじめてるぜ!お前も、聖剣とやらを抜いたらどうなんだ。」
「はっ!馬鹿言うんじゃねえよ。お前程度の三下に抜けるもんじゃねえんだ。」
「俺を三下扱いか!?いい度胸だ!」
そうして、先ほどの闘気はますます増していく。力を込めて棍棒が振られるたびに空気が揺れ、波として俺の肌を恐怖させる。
カルナの表情はそれでも変わらなかった。
「そろそろ頃合いだな。」
カルナのその一言からカルナの表情は余裕の笑みから獲物を狩るため、集中した獣の目に移り変わる。獲物の動きを読み切り、最適の方法で狩ろうとしているのだ。
次の瞬間にはカルナは地面をけり、ドグの攻撃の全てを華麗によけ、
一発、ドグの肩に攻撃を叩き込む。その一発でよろめいたドグは、カルナのすさまじい連撃をすべて食らった。
避ける余裕はなく、防御する暇はなく。ただ何もできない。その攻撃はドグを地面にたたき伏せた。
立っているカルナに対して、倒れ伏せているドグ。力の差は圧倒的なものだったのだ。
カルナは先ほどの余裕の笑みに戻っている。カルナの体には傷一つなく、汗一つない。
「どうするんだ、眷属王。これ以上やるんなら、相棒を抜くしかなくなるぜ。」
そうしてカルナは腰に掛けてある剣に手をかけた。
「あぁ、……さすがにもう終わりにする。人間にこれほどの実力者がいるってことが知れただけよしってもんだ。……ほかの眷属王が言っていた、頭のおかしい特攻剣士ってのはどうやらお前だったらしいな。」
「その通りだ。……お前が人界に下した上位種のゴブリンをすべて魔界に返せ。」
「はいはい、わかりましたよ。…大体の捜索はもう終わったしな。」
「じゃぁ、帰っていいぞ。……達者でな、ゴブリンの眷属王。」
「目の前で倒れている獲物がいるってのに、本当に逃がすんだな。お前は。……お前は狂ってるよ。」
ドグがそう言うと、ドグが倒れていた地面だけが崩れドグは落ちて行った。
ということは、……助かった?
「そんなに若いのに眷属王に会うなんて、不運なもんだな。」
俺が、ドグが先ほどまでいたところを見ていると、カルナはそう声をかけてくれた。
俺はすぐにカルナの方を向いた。
「さっきも聞いたかもしれねえが、俺は聖騎士、カルナ・ギルティ。…お前は?」
カルナはさっきの余裕の笑みではなく、心からの笑みで俺にそう問うのだった。
ドグがそう言うと、あの青年は俺の方を向いて、
「?何これ、どういう状況?」
先ほどまでのヒーローのような顔から何ともあほらしい顔になっていた。
あぁ、こういうやつなんだな。
「状況はいたって簡単だ!俺がこいつに殺されかけてる。助けてくれ。」
「……ぼろぼろにされながらよく頑張ったんだな。…たぶん俺より年下だろ。まぁいいか。……助けてやる。じっとしてろ。
……さて、名乗りを上げてもらおうか。」
そういって、青年はドグに向き直った。
「いいだろう、俺はゴブリンの眷属王・ドグ。強いやつと戦うのが好きなんだ。お前はどうやら相当な実力者らしい。名を名乗れや。」
ドグの言葉に反応したように、青年は肩に担いでいた剣をドグの方に向け、
「いいぜ、
……俺は、王都騎士・四聖騎士が一人、孤独な特攻人、カルナ・ギルティ。
ゴブリンの眷属王・ドグとやら、手合わせ…願おうか?」
その言葉をトリガーにこの二人の戦闘は始まった。
その戦いは、あまりに異次元。使っている得物は、どちらも木でできている有象無象の武器だ。そのはずなのだが、
二人の得物がぶつかり合うたび、周りの洞窟の中にその音がとんでもない音で響き、風圧だけで俺は飛ばされそうになるほどだ。
しかし、この二人の戦いのすさまじいところはパワーだけでなかった。
体の動き、異常的な得物捌き、その動きは到底普通の人間がなせることではない。
同じようなものを最近見た。それはドンキだ。この二人からはあいつの実力と同等のものを感じる。いや、それ以上だ。
その中で垣間見える、二人の表情は常に笑っていた。
どちらもが余裕の表情をしていたのだ。
「なかなかどうして、眷属王ってのは能無ししかいないのかねえ。」
「お前も大概だぜ、聖騎士さんよ。」
この二人どちらも魔術を使っていない。ただひたすらその異次元的な身体能力で己の、力と力をぶつけているのだ。
最初は互角に見えた勝負だったが、段々と聖騎士、カルナが優勢であるように感じる。
「おいおい、どうした眷属王!段々と動きのキレがなくなってきてるぜ。」
「お前さんが早すぎるだけだ。」
「そろそろ、眷属王特有の権能とやらをつかったらどうだ?このままだったら死んじまうぜ。」
そういった瞬間、カルナの木剣はドグの腹を思いきり攻撃し、ドグを洞窟の壁にたたきつける。
ドグは叩きつけられ、口にたまった血を吐き捨てる。
「はっ!やっぱり聖騎士ってのは強いんだな。話には聞いていたがこりゃ想像以上だ。」
洞窟の壁にもたれかかっているドグに、木剣を向けながらカルナは問う。
「権能使うか、この場で逃げるか。どっちかにしてくれ。お前さんだって死にたかねえだろ。」
「そうだな、ここで死ぬのはヴァンパイアの野郎にカッコがつかねえ。だが、今逃げるのはもったいないからな。もう少し楽しませてもらうぜ。」
ドグがそう言うと、ドグは立ち上がり体の周りに闘気が宿る。
魔力で自信を強化しているようだ。
「そう来なくっちゃ面白くねえよな。」
二人はまたその得物を構える。
そうして、またあの異次元的な戦闘が再開された。
その戦いを見てる俺からすれば、さっきの二人の戦闘のギアを三つ、四つあげているように見えた。
だが、それでもカルナは魔術を使わない。余裕の笑みをやめない。ギアが三つ四つ上がった程度、カルナからすれば変わっていないようなものらしい。
それに比べドグの表情からは余裕がなくなっているように見えた。
だが、どうやら力だけで言えばドグの方が勝っているらしい。
剣と棍棒がぶつかり合うたび、カルナは後ろに下がり、ドグは棍棒を振り切っている。
「おい!力負けしはじめてるぜ!お前も、聖剣とやらを抜いたらどうなんだ。」
「はっ!馬鹿言うんじゃねえよ。お前程度の三下に抜けるもんじゃねえんだ。」
「俺を三下扱いか!?いい度胸だ!」
そうして、先ほどの闘気はますます増していく。力を込めて棍棒が振られるたびに空気が揺れ、波として俺の肌を恐怖させる。
カルナの表情はそれでも変わらなかった。
「そろそろ頃合いだな。」
カルナのその一言からカルナの表情は余裕の笑みから獲物を狩るため、集中した獣の目に移り変わる。獲物の動きを読み切り、最適の方法で狩ろうとしているのだ。
次の瞬間にはカルナは地面をけり、ドグの攻撃の全てを華麗によけ、
一発、ドグの肩に攻撃を叩き込む。その一発でよろめいたドグは、カルナのすさまじい連撃をすべて食らった。
避ける余裕はなく、防御する暇はなく。ただ何もできない。その攻撃はドグを地面にたたき伏せた。
立っているカルナに対して、倒れ伏せているドグ。力の差は圧倒的なものだったのだ。
カルナは先ほどの余裕の笑みに戻っている。カルナの体には傷一つなく、汗一つない。
「どうするんだ、眷属王。これ以上やるんなら、相棒を抜くしかなくなるぜ。」
そうしてカルナは腰に掛けてある剣に手をかけた。
「あぁ、……さすがにもう終わりにする。人間にこれほどの実力者がいるってことが知れただけよしってもんだ。……ほかの眷属王が言っていた、頭のおかしい特攻剣士ってのはどうやらお前だったらしいな。」
「その通りだ。……お前が人界に下した上位種のゴブリンをすべて魔界に返せ。」
「はいはい、わかりましたよ。…大体の捜索はもう終わったしな。」
「じゃぁ、帰っていいぞ。……達者でな、ゴブリンの眷属王。」
「目の前で倒れている獲物がいるってのに、本当に逃がすんだな。お前は。……お前は狂ってるよ。」
ドグがそう言うと、ドグが倒れていた地面だけが崩れドグは落ちて行った。
ということは、……助かった?
「そんなに若いのに眷属王に会うなんて、不運なもんだな。」
俺が、ドグが先ほどまでいたところを見ていると、カルナはそう声をかけてくれた。
俺はすぐにカルナの方を向いた。
「さっきも聞いたかもしれねえが、俺は聖騎士、カルナ・ギルティ。…お前は?」
カルナはさっきの余裕の笑みではなく、心からの笑みで俺にそう問うのだった。
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