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教師2年目
聖女の努力
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「送り主は……。いや、どうせミリアリアか……」
「話が早くて何よりだ。そこで、」
「断るわよね! ね!?」
頭突きをするのかという勢いでライヤを問い詰めるアン。
「あ、あぁもちろんだ。なんで申し込まれたのかもよくわかってな……」
「よっし! お父様! 速攻でその文書送り返して!」
「そういうわけにもいかん。俺とてライヤが受けるとは思ってないがな。聖王国の聖女直々の手紙だぞ?」
「ミリアリア直筆の!?」
およそ5年前。
初めて会った時は文字の読み書きすら怪しかったはずだ。
手紙を書くなんてもってのほかである。
「ほれ」
無下にできないと言いながらミリアリアの手紙を王様が放り、ライヤがそれをキャッチする。
「!?」
なんとその手紙は王国の言葉で書かれていた。
話ことばは共通しているが文字は2国で違ったはずだ。
それをわざわざ覚えたというのか……。
「どう思う?」
「……ミリアリア本人が本当に書いたんだとしたら率直に凄いと思います。あの段階から二言語目まで手を出すなんて……。所々ある文法の間違いもらしいと言えばらしいし……」
「今まで勉強していなかっただけでしょう!?」
「いや、アン。お前が気に食わないのはわかるけどこれは本当に凄いぞ」
「う……」
動機はどうあれ、あんな考え方をしていたミリアリアが勉強したという事実が凄い。
「……でも、現時点で俺が婚姻を受ける要素はないはずです」
「そこだ。両国の友好のために聖女が王国を訪問していいかとそれに付属してきた手紙に書いていた」
ごそごそと王様が胸元から手紙を取り出す。
「明らかに他の狙いがあるのでは?」
「2つの手紙は別々のものとして送られてきている。そっちの手紙はあくまで聖女の個人的なものだとな。王国と聖王国にとっては仲良くしておくに越したことは無いから、この提案自体は断りづらい。つい最近聖王国へのルートが全て王国の管理下に置けたわけだしな」
「それはそうですね」
5年前に第一王女が聖王国を訪ねているのでそれに見合う格の人物となれば聖女となるのも頷ける。
「で、向こうは当然案内役にお前を指名してくるだろう」
「……ちょっと学校の仕事がありまして……。教師なので……」
「聖女クラスの指名を断れると思うか?」
「……」
俺、先生なのになぁ……。
「というわけで、聖女が来るのはほぼ確定だろう。前回の手紙から今回までの早さを考えると、急ピッチで話が進む可能性の方が早いだろう。いつになるかはまた伝えるが、心の準備はしておいてくれ」
「はぁ……」
「もう! ライヤが早く私と結婚しないからこんなことになってるのよ!」
「仕方ないだろ!? こんなことになると誰が予想できる? アンだってミリアリアのこと忘れてただろ?」
ぽかぽかと叩いてくるアンをいなしながらライヤは考える。
「この際俺がただの教師なのにっていうのは置いておこう」
「「ただの?」」
「……ちょっと特殊の、な。了解。ミリアリアに関してはわからないことが多すぎる。俺を気に入るくらいならまぁわからないくもないが、いきなり婚姻に話が飛ぶか?」
「それは私もおかしいと思っていたわ。あの子がライヤを気に入ったとしても結婚に発想がいくとは思えない」
「つまり、誰かがこれも入れ知恵してるよな?」
「そうね」
問題はなぜライヤを狙ってきているのか。
ただミリアリアの願いをかなえようとしている、という話なら嬉しいのだが。
「腹芸が得意な聖王国、だものね」
有名な話である。
聖王国は王国と同様に帝国と隣接していながら戦争をほとんどしていない。
それ以前の段階でうやむやにしたり、はたまた圧力をかけるのが上手いのだ。
「とにかく、ライヤが案内役をするときには私も行くわ。第一王女が出迎えても何の問題もないでしょう?」
「それは、そうだ。ヨルも一緒に行くぞ」
「え。私もですか?」
今回は私じゃなかったー、と気を抜いていたヨルにも話を振る。
「形式上ヨルの聖女という呼び名に言及していたからな。王国に来てまで変なことはしないと思うが、そばにいるに越したことは無い」
「……守ってくれるんですね?」
「あぁ」
「えへへー」
デレッとするヨル。
「……私は?」
「アンは助けなくていいだろ?」
「それはそうだけど!」
「信頼の証だよ」
むしろアンが捕まるような相手にライヤが何ができるというのか。
「話が早くて何よりだ。そこで、」
「断るわよね! ね!?」
頭突きをするのかという勢いでライヤを問い詰めるアン。
「あ、あぁもちろんだ。なんで申し込まれたのかもよくわかってな……」
「よっし! お父様! 速攻でその文書送り返して!」
「そういうわけにもいかん。俺とてライヤが受けるとは思ってないがな。聖王国の聖女直々の手紙だぞ?」
「ミリアリア直筆の!?」
およそ5年前。
初めて会った時は文字の読み書きすら怪しかったはずだ。
手紙を書くなんてもってのほかである。
「ほれ」
無下にできないと言いながらミリアリアの手紙を王様が放り、ライヤがそれをキャッチする。
「!?」
なんとその手紙は王国の言葉で書かれていた。
話ことばは共通しているが文字は2国で違ったはずだ。
それをわざわざ覚えたというのか……。
「どう思う?」
「……ミリアリア本人が本当に書いたんだとしたら率直に凄いと思います。あの段階から二言語目まで手を出すなんて……。所々ある文法の間違いもらしいと言えばらしいし……」
「今まで勉強していなかっただけでしょう!?」
「いや、アン。お前が気に食わないのはわかるけどこれは本当に凄いぞ」
「う……」
動機はどうあれ、あんな考え方をしていたミリアリアが勉強したという事実が凄い。
「……でも、現時点で俺が婚姻を受ける要素はないはずです」
「そこだ。両国の友好のために聖女が王国を訪問していいかとそれに付属してきた手紙に書いていた」
ごそごそと王様が胸元から手紙を取り出す。
「明らかに他の狙いがあるのでは?」
「2つの手紙は別々のものとして送られてきている。そっちの手紙はあくまで聖女の個人的なものだとな。王国と聖王国にとっては仲良くしておくに越したことは無いから、この提案自体は断りづらい。つい最近聖王国へのルートが全て王国の管理下に置けたわけだしな」
「それはそうですね」
5年前に第一王女が聖王国を訪ねているのでそれに見合う格の人物となれば聖女となるのも頷ける。
「で、向こうは当然案内役にお前を指名してくるだろう」
「……ちょっと学校の仕事がありまして……。教師なので……」
「聖女クラスの指名を断れると思うか?」
「……」
俺、先生なのになぁ……。
「というわけで、聖女が来るのはほぼ確定だろう。前回の手紙から今回までの早さを考えると、急ピッチで話が進む可能性の方が早いだろう。いつになるかはまた伝えるが、心の準備はしておいてくれ」
「はぁ……」
「もう! ライヤが早く私と結婚しないからこんなことになってるのよ!」
「仕方ないだろ!? こんなことになると誰が予想できる? アンだってミリアリアのこと忘れてただろ?」
ぽかぽかと叩いてくるアンをいなしながらライヤは考える。
「この際俺がただの教師なのにっていうのは置いておこう」
「「ただの?」」
「……ちょっと特殊の、な。了解。ミリアリアに関してはわからないことが多すぎる。俺を気に入るくらいならまぁわからないくもないが、いきなり婚姻に話が飛ぶか?」
「それは私もおかしいと思っていたわ。あの子がライヤを気に入ったとしても結婚に発想がいくとは思えない」
「つまり、誰かがこれも入れ知恵してるよな?」
「そうね」
問題はなぜライヤを狙ってきているのか。
ただミリアリアの願いをかなえようとしている、という話なら嬉しいのだが。
「腹芸が得意な聖王国、だものね」
有名な話である。
聖王国は王国と同様に帝国と隣接していながら戦争をほとんどしていない。
それ以前の段階でうやむやにしたり、はたまた圧力をかけるのが上手いのだ。
「とにかく、ライヤが案内役をするときには私も行くわ。第一王女が出迎えても何の問題もないでしょう?」
「それは、そうだ。ヨルも一緒に行くぞ」
「え。私もですか?」
今回は私じゃなかったー、と気を抜いていたヨルにも話を振る。
「形式上ヨルの聖女という呼び名に言及していたからな。王国に来てまで変なことはしないと思うが、そばにいるに越したことは無い」
「……守ってくれるんですね?」
「あぁ」
「えへへー」
デレッとするヨル。
「……私は?」
「アンは助けなくていいだろ?」
「それはそうだけど!」
「信頼の証だよ」
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