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教師3年目
一進一退
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シュイン……。
そう鳴る音を幻聴するほどの滑らかな抜刀。
実際には滑らかすぎて音などなっていないのだが。
それだけでよほどの名刀、ただ事ではない腕前なのがわかる。
「サーベル型は珍しいな」
「どうにも直剣というものが手に馴染まなくて……。このくらい遊びがある方が得意ですね」
「そのようだ」
軽く剣を回し、剣舞のようなものを披露しながらリヒターはこちらを油断なく見据える。
そんな彼と言葉を交わしながらライヤは三歩ほど後ろへ下がる。
ガキィッ!
ライヤが下がるとほぼ同時だろうか。
数秒前にライヤが立っていた位置が氷魔法で凍てつく。
「……流石」
「今までの言動から、意味のない『遊び』はしないタイプだと思ったけど、当たりみたいだな。堂に入った動きだが、少し左足に違和感が。まるで動かしたくないような、な」
「サーベル型の剣舞なんて何度も目にする機会なんてないでしょうに」
「剣舞をみたことはないが、かじっているからな。その程度の違和感は気づくさ」
何が起こったのだと目を白黒させる生徒たちの耳に、穏やかに言葉を交わす戦闘中のはずの二人の声が届く。
学園長が水魔法と風魔法の複合魔法で音を拾って外部を届けているのだ。
彼らの会話一つ一つに価値があると分かっているから。
「凝り性」な二人のことだ。
頼まずとも勝手に解説をしてくれると思っていた。
「それの悪いところは、地中を凍らせながらじゃないとこのくらい遠くては届かないことか。魔力制御が得意な奴なら気づくだろうな」
「気づかれたとしてもあんなに余裕をもって避けられたのは初めてですよ」
奇襲に失敗したリヒターはじりじりとライヤへと距離を詰める。
「……いいね」
同じく、剣を抜き放ったライヤは獰猛な笑みを浮かべる。
「「「格好良い……!」」」
会場の各所で、アン・ウィル・ヨルの声が重なる。
アンの横でそれを聞いていた学園長は顔をしかめる。
あばたもえくぼとはこのことか。
ライヤが肩の位置に剣を構えると同時。
直径十センチほどしかない火球がライヤの周りで漂う。
「いけ」
号令一つで火球たちはリヒターに向かって一直線。
その間にライヤは少し斜めに走り込み、リヒターとの距離を詰めていく。
リヒターは自分の体の周りより少し離れた位置に自らを覆う形の水球を展開し、もちろん近づいてくるライヤからは視線を外さない。
しかし、違和感を覚えてすぐに自らの後ろ側の水魔法を解除し、転がり出る。
リヒターが先ほどまでいた位置ではもうもうと水蒸気が上がっている。
「……なるほど。放った魔法とともに自身が近づくことによって魔力制御を強め、一つを超高温に、水の膜ごとぶち抜いてしまおうってことですか」
「俺もこれは初めてで看破されたのはちょっと自信なくすぞ。避けた後にこちらへ向ける意識もかなりのものだ。俺ごときじゃ手が出せない」
「では、これで一勝一敗ということで」
三度上がる大歓声。
生徒たちは感じていた。
ここには自分たちが見たい魔法技術の粋が集まっていると。
そう鳴る音を幻聴するほどの滑らかな抜刀。
実際には滑らかすぎて音などなっていないのだが。
それだけでよほどの名刀、ただ事ではない腕前なのがわかる。
「サーベル型は珍しいな」
「どうにも直剣というものが手に馴染まなくて……。このくらい遊びがある方が得意ですね」
「そのようだ」
軽く剣を回し、剣舞のようなものを披露しながらリヒターはこちらを油断なく見据える。
そんな彼と言葉を交わしながらライヤは三歩ほど後ろへ下がる。
ガキィッ!
ライヤが下がるとほぼ同時だろうか。
数秒前にライヤが立っていた位置が氷魔法で凍てつく。
「……流石」
「今までの言動から、意味のない『遊び』はしないタイプだと思ったけど、当たりみたいだな。堂に入った動きだが、少し左足に違和感が。まるで動かしたくないような、な」
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「剣舞をみたことはないが、かじっているからな。その程度の違和感は気づくさ」
何が起こったのだと目を白黒させる生徒たちの耳に、穏やかに言葉を交わす戦闘中のはずの二人の声が届く。
学園長が水魔法と風魔法の複合魔法で音を拾って外部を届けているのだ。
彼らの会話一つ一つに価値があると分かっているから。
「凝り性」な二人のことだ。
頼まずとも勝手に解説をしてくれると思っていた。
「それの悪いところは、地中を凍らせながらじゃないとこのくらい遠くては届かないことか。魔力制御が得意な奴なら気づくだろうな」
「気づかれたとしてもあんなに余裕をもって避けられたのは初めてですよ」
奇襲に失敗したリヒターはじりじりとライヤへと距離を詰める。
「……いいね」
同じく、剣を抜き放ったライヤは獰猛な笑みを浮かべる。
「「「格好良い……!」」」
会場の各所で、アン・ウィル・ヨルの声が重なる。
アンの横でそれを聞いていた学園長は顔をしかめる。
あばたもえくぼとはこのことか。
ライヤが肩の位置に剣を構えると同時。
直径十センチほどしかない火球がライヤの周りで漂う。
「いけ」
号令一つで火球たちはリヒターに向かって一直線。
その間にライヤは少し斜めに走り込み、リヒターとの距離を詰めていく。
リヒターは自分の体の周りより少し離れた位置に自らを覆う形の水球を展開し、もちろん近づいてくるライヤからは視線を外さない。
しかし、違和感を覚えてすぐに自らの後ろ側の水魔法を解除し、転がり出る。
リヒターが先ほどまでいた位置ではもうもうと水蒸気が上がっている。
「……なるほど。放った魔法とともに自身が近づくことによって魔力制御を強め、一つを超高温に、水の膜ごとぶち抜いてしまおうってことですか」
「俺もこれは初めてで看破されたのはちょっと自信なくすぞ。避けた後にこちらへ向ける意識もかなりのものだ。俺ごときじゃ手が出せない」
「では、これで一勝一敗ということで」
三度上がる大歓声。
生徒たちは感じていた。
ここには自分たちが見たい魔法技術の粋が集まっていると。
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