女子だけが【異能力】を扱える世界で静岡県民である私は、オタク生活を楽しみながら悪い敵をやっつけます!!

秋葉缶

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TOKYO

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「という事があったのさ」

休み明けの学校で、ひまりが澪と舞子に沼津で何があったかを詳しく話した。
ちなみにタコパは疲労困憊で出席することができなかった。

「そんな事になっていたなんて…1人でよく戦ったね」

舞子が心配そうな顔をしながらひまりを労う。

「そのスノウとかいうやつ…次に会ったら私が倒してやる」

澪は怒りの表情で拳を振るわせた。

「あはは、2人ともありがとう」

やっぱり友人って良いな、と思っているとスマホに着信が入る。

「え、誰だろう。知らない番号だ」

恐る恐る着信に出るひまり。

「はいもしもし」

『初めまして。アイドル協会の研究課、ネモと申します」

「アイドル協会の!?何故私の番号が分かったんですか!?」

ひまりの言葉で澪と舞子は電話の主の声に耳を澄ませる。

『駿河学園理事長に聞きました。それよりサファイア様の件についてお時間よろしいでしょうか』

「サファイアちゃんに何かあったんですか!?」

『彼女の肉体は何のダメージもありません。ですがご存知の通り記憶喪失になるスキルを使われていて解除が難しいですね。協会のメンバーでも解除不能だったので現状彼女の記憶を戻す手段がありません』

「そんな…」

『現在彼女は記憶以外は問題なく活動ができます。我々でも会話の内容から彼女は敵ではなく味方と判断しました。なので仲が良さそうなあなたに世話役を任せたいのです』

「はい…?」

『来週の日曜日にアイドル協会の本部に来てください。そこで詳しいお話をします。交通費は出ますよ』

「本部って…」

『東京です』

「「「東京!!??」」」

三人の叫びが重なった。

一週間後

制服に着替え非常食を詰め込んだリュックサックを抱えながら澪が一言。

「カチコミ行くよ!」

「おうっ!!」

「いや、カチコミじゃないと思うけど…」

盛り上がる澪とひまりをよそに冷静なツッコミを入れる舞子。

「東京は強いアイドルが多いらしいからね。B級の私と舞子がひまりを守らないと!」

「私は実力はB級だから守られなくていいって!!」

「2人ともハイテンションだなぁ。けどその大荷物はやめておいてね」

苦笑いする舞子だった。


東京

アイドル協会本部は東京24区の「天宮区てんぐうく」と呼ばれる場所に存在する。

天宮区は浦安市と市原市の間の海に埋立地として作られており、浦安から通っている一本道からしか入る事ができない。

区の周りには壁が建てられており船での上陸はできないからだ。
ヘリを使う手もあるが許可されたヘリ以外は問答無用で撃ち落とされる。

また、24区に入るだけで許可が入る。
しかも区内にはアイドル協会の関係者しか住む事ができないといった事もあり、非常に排他的な地域である。

区内で売られている物も、24区内でしか売られていない物だらけで区外で売るとプレミア価格で売れるという。

「なんじゃこの建物は…!!」

そして1番目を見張るのが区の中央に聳え立つ、高さ1500mの協会本部だろう。

敷地面積は公表されていないがひまり達がいる一階は大型デパートの1フロアの大きさに匹敵する。

「ひまり、見てみ。こんなお菓子見た事ないよ!」

「美味っ!なんで外で売らないんだろう?」

「ひまりちゃん!あそこの服屋見た事ない服ばっかり売ってる!」

「服はモニクロでいいや…」

賑わってはいるが周りの人間はほとんど協会指定の軍服のような制服を着ており、初めて来たものには異様な光景と言えるだろう。

しかし呑気な三人組は目的も忘れ楽しみまくっていた。

そんな三人に研究服を着た赤毛の女が声をかけてきた。
年齢は20代後半から30代だろうか。寝不足なのか目元に隈ができていた。

「君たち、ずいぶん楽しそうだね」

「お姉さんは?」

「ひまり君か。電話で話してたネモだよ」

「あなたが…!」

「テーマパークみたいな所ですね24区って。思っていたのと違いました」

「君は松浦君だね、君の筋力は非常に興味深い。スキルも無しに人外の力を扱う事ができる稀有な存在だ。是非研究してみたいものだ」

「あはは…考えときます」

ひまりはネモの後ろに銀色の髪の束が2本出ていることにようやく気がつく。

「あ!」

後ろにいた人物が恥ずかしそうに顔を出す。

「ど、どうも」

「サファイアちゃん!」

「え、この子が?」

澪が驚く。

「かわいい子だね~」

舞子はサファイアの顔をまじまじと見つめていた。

「あ、あの…会うのは2回目ですね。助けていただいてありがとうございますひまりさん」

おずおずとした様子でネモの後ろから声を絞り出すサファイア。

「ううん。無事でよかったよ(恥ずかしやがりさんなのかな?)」

「さて立ち話も何だ。そこらの喫茶店にでも入ろうか」

「はい!」

和風の喫茶店に入った四人は各々好きな注文をスマホで注文していく。
サファイアだけは目を細めてメニューを吟味していた。

「私は…どれも食べた事がありませんね。味がわからない」

「えぇ!サファイアちゃんケーキとか食べないの!?」

ひまりが驚いたようにサファイアを見る。
ネモは知っていたようで3人に説明し始めた。

「サファイアは自分が何者か覚えていない。知っての通り記憶を封じるスキルを使われているからね。けど失っているのは殆どエピソード記憶なんだ」

「んん?」

ひまりはネモが何を言いたいのか分からなそうに首を傾げた。

「この子は自分のスキルに関する事までは忘れていなかった。実際協会のアイドル達と模擬戦も行っているからね。…つまりケーキも紅茶も飲んだことの無いかなり特殊な環境で生きてきた事が伺える」

「ええー!じゃあサファイアちゃんは好きな食べ物とか無いの?」

ひまりが大きな声で問うたところサファイアは「うーん」と腕を組んで悩み始めた。

「食堂にあった『ラーメン』というものが美味しかったです」

「良いね~!でも喫茶店にはないけど!」

ひまりが突っ込む横で舞子がネモに問いかけた。

「記憶を失う前の食べ物とかも覚えてないんですね…」

「そうだね、私はスノウという少女にたどり着くための情報は全て封じられていると見ている。だからこそサファイアの記憶を覚ますためには何かしら彼女に縁のあるものに触れさせてやるのがいいのかもしれないね」

「じゃあサファイアちゃんは私と同じショートケーキね!」

ひまりが空気を読まずに勝手にサファイアの注文を行った。

「はい!」

数分後皆の注文が届く。

「ってうわ!サファイアちゃん!?」

ひまりが驚いた声を上げる。

「どうしました?」

「ケーキ手づかみで食べたらダメでしょう!!」

「え、な、なんでですか!?」

顔中クリームまみれにしながら問うサファイアに澪と舞子は笑いを堪えられずにいた。

「ふむ、手づかみで物を食す…。しかも両手でか…まるで中世頃のヨーロッパの出自みたいだ」

興味深そうにサファイアを眺めるネモだった。
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