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旅立ち
「行ってらっしゃい、アニエス! 落ち着いたら手紙は書くのよ」
「何か困ったことがあったらすぐに俺達にいうんだぞ」
「うん、ありがとう! 行ってきまーす」
「たまには帰ってくるのよ~」
「はーい」
大きめのトランクには着替えや食料、昨日買ったメイク道具がパンパンに入っている。
着替えは今までのものは全部捨てて、新しく買ったかわいい服だ。
冒険者の胸当てやロングソードも売り払った。
鞄に入る短剣と太もものベルトにつけられるダガーだけは持ってきた。
旅には危険がつきものだしね。
膝丈のスカート、ひらひらのブラウス。
戦闘の邪魔になるのが嫌で、長めの前髪も全て後ろで一つに結んでいた髪は、ユーリ行きつけの美容院でカットしてもらった。
背中の真ん中あたりに切り揃えた髪はツヤツヤのうるうるで、前髪を作ってもらった。
ハーフアップの髪には少し大きめのリボン。
メイクも教えてもらってまるで別人だ。
歩いて行くと言ったら驚かれたが、私の身体強化スキルを思い出して、納得された。
「そうだな……アニエスなら馬車より走った方が速そうだな」
「魔物が出てもへっちゃらだろうし……」
そう、なるべくアニエスがどこに行ったのか痕跡を無くしたいのだ。
ギルマスに見つかって、引き止められてまた冒険者に戻りたくはない。
さあ、新しい人生の始まりだ。
街の門をくぐる時、門番に何か聞かれないかドキドキしたが、基本出る時はチェックも少ない。
「おい、あんな可愛い子、この街にいたか?」
通り過ぎた後で聞こえてくる声は私に向けてだろうか。
少しくらい自惚れてもいいのかも。
私だって、私だって、モテたいんだ!
門が見えなくなったところまで歩くと、私は辺りをキョロキョロ見渡す。
「うん、誰もいないな……」
「身体強化」
私は足に魔力を流し込む。
「さあ! 新しい国に向かって出発だ!」
トントンとその場でニ回ほどジャンプして感触を確かめると、私は走り出した。
身体強化をしている為全く疲れも感じない。
「ん? 今馬車か何か追い越したかな」
途中で馬車を追い越したらしいが、速すぎて相手にもほとんど認識されないだろう。
そうして、私は夜まで走って街に着いたら宿に泊まる事を五日ほど繰り返した。
「ついに国境をこえたね」
確か地図によると、ここはリッツバルクという国らしい。
私が冒険者をしていたガイアスという国はダンジョンが多く冒険者がたくさんいる国だ。
そこから街道を西に進むと、商業の発達したリッツバルクという国がある。
隣の国だが冒険者の認知度はどのくらいだろう。
とりあえずリッツバルクの首都まで行ってみよう。
リッツバルクの首都に着くと、さすが交通の要と言われる都市だ、すごい賑わいだ。
私はひとまずお腹を満たす為に食堂を探した。
「一人か?」
店に入るとすぐに店員にぶっきらぼうに聞かれた。
「はい、一人です」
くすくす笑う声に周りを見渡すと女性一人で来ている客は私一人だ。
八割が男性客、残りはカップルか夫婦だろう。
「奥のテーブルに座んな」
横柄な男性に案内されて座ったが、テーブルは脂でギトギトだ。
「なんにする?」
給仕が聞くが何があるかもわからない。
「何があるんですか?」
「ハッ、知らないで入ってきたのかい。うちは食堂だ。食堂といえば肉だ。チキンがビーフかって聞いてんだよ」
なんか腹立つ言い方だな。
「ではチキンをお願いします」
「……待ってろ」
あ~! こんな接客でよく客さんが来るな。
よっぽど美味しいのか?
美味しいならギリ許せる。
四十分後……、そろそろ痺れを切らしてもう一度注文を確認しようかと思った頃に、給仕が私の前にチキンの半身を焼いたものをドンと出した。
「ほらよ。味わって食え」
「あ、いただきます」
普通の女性にはボリュームがありすぎるのだろうが、私は冒険者をやっていたからか男性並みに食べる。
一緒に渡されたナイフとフォークで肉を切ろうとするが……固い。
なんとか一口大に切る事に成功して、口に運ぶも……マズイ。
肉はパサパサで、外側だけは温かいが、中はすっかり冷めている。
味も胡椒が効きすぎていて何の味だかわからない。
何故この店がほぼ満席なのか?
他のメニューは美味しいのかと周りを見るも、周りも同じようなものを食べている。
私が頼んでない方のビーフも切っているところを見るに固そうだ。
食べられるだけ食べて早く出ようと必死で顎を励まし動かしていると、近くから声が聞こえてきた。
「おい、聞いたか? 隣の国のS級パーティがダンジョンボスを倒したらしいぞ」
「ああ、聞いたぜ。白銀の翼とかいう若い奴らだろう」
こんなところまでもう話が届いてるのか……。
とりあえず冒険者が多そうなこの店を早く出ようと席をたった。
「何か困ったことがあったらすぐに俺達にいうんだぞ」
「うん、ありがとう! 行ってきまーす」
「たまには帰ってくるのよ~」
「はーい」
大きめのトランクには着替えや食料、昨日買ったメイク道具がパンパンに入っている。
着替えは今までのものは全部捨てて、新しく買ったかわいい服だ。
冒険者の胸当てやロングソードも売り払った。
鞄に入る短剣と太もものベルトにつけられるダガーだけは持ってきた。
旅には危険がつきものだしね。
膝丈のスカート、ひらひらのブラウス。
戦闘の邪魔になるのが嫌で、長めの前髪も全て後ろで一つに結んでいた髪は、ユーリ行きつけの美容院でカットしてもらった。
背中の真ん中あたりに切り揃えた髪はツヤツヤのうるうるで、前髪を作ってもらった。
ハーフアップの髪には少し大きめのリボン。
メイクも教えてもらってまるで別人だ。
歩いて行くと言ったら驚かれたが、私の身体強化スキルを思い出して、納得された。
「そうだな……アニエスなら馬車より走った方が速そうだな」
「魔物が出てもへっちゃらだろうし……」
そう、なるべくアニエスがどこに行ったのか痕跡を無くしたいのだ。
ギルマスに見つかって、引き止められてまた冒険者に戻りたくはない。
さあ、新しい人生の始まりだ。
街の門をくぐる時、門番に何か聞かれないかドキドキしたが、基本出る時はチェックも少ない。
「おい、あんな可愛い子、この街にいたか?」
通り過ぎた後で聞こえてくる声は私に向けてだろうか。
少しくらい自惚れてもいいのかも。
私だって、私だって、モテたいんだ!
門が見えなくなったところまで歩くと、私は辺りをキョロキョロ見渡す。
「うん、誰もいないな……」
「身体強化」
私は足に魔力を流し込む。
「さあ! 新しい国に向かって出発だ!」
トントンとその場でニ回ほどジャンプして感触を確かめると、私は走り出した。
身体強化をしている為全く疲れも感じない。
「ん? 今馬車か何か追い越したかな」
途中で馬車を追い越したらしいが、速すぎて相手にもほとんど認識されないだろう。
そうして、私は夜まで走って街に着いたら宿に泊まる事を五日ほど繰り返した。
「ついに国境をこえたね」
確か地図によると、ここはリッツバルクという国らしい。
私が冒険者をしていたガイアスという国はダンジョンが多く冒険者がたくさんいる国だ。
そこから街道を西に進むと、商業の発達したリッツバルクという国がある。
隣の国だが冒険者の認知度はどのくらいだろう。
とりあえずリッツバルクの首都まで行ってみよう。
リッツバルクの首都に着くと、さすが交通の要と言われる都市だ、すごい賑わいだ。
私はひとまずお腹を満たす為に食堂を探した。
「一人か?」
店に入るとすぐに店員にぶっきらぼうに聞かれた。
「はい、一人です」
くすくす笑う声に周りを見渡すと女性一人で来ている客は私一人だ。
八割が男性客、残りはカップルか夫婦だろう。
「奥のテーブルに座んな」
横柄な男性に案内されて座ったが、テーブルは脂でギトギトだ。
「なんにする?」
給仕が聞くが何があるかもわからない。
「何があるんですか?」
「ハッ、知らないで入ってきたのかい。うちは食堂だ。食堂といえば肉だ。チキンがビーフかって聞いてんだよ」
なんか腹立つ言い方だな。
「ではチキンをお願いします」
「……待ってろ」
あ~! こんな接客でよく客さんが来るな。
よっぽど美味しいのか?
美味しいならギリ許せる。
四十分後……、そろそろ痺れを切らしてもう一度注文を確認しようかと思った頃に、給仕が私の前にチキンの半身を焼いたものをドンと出した。
「ほらよ。味わって食え」
「あ、いただきます」
普通の女性にはボリュームがありすぎるのだろうが、私は冒険者をやっていたからか男性並みに食べる。
一緒に渡されたナイフとフォークで肉を切ろうとするが……固い。
なんとか一口大に切る事に成功して、口に運ぶも……マズイ。
肉はパサパサで、外側だけは温かいが、中はすっかり冷めている。
味も胡椒が効きすぎていて何の味だかわからない。
何故この店がほぼ満席なのか?
他のメニューは美味しいのかと周りを見るも、周りも同じようなものを食べている。
私が頼んでない方のビーフも切っているところを見るに固そうだ。
食べられるだけ食べて早く出ようと必死で顎を励まし動かしていると、近くから声が聞こえてきた。
「おい、聞いたか? 隣の国のS級パーティがダンジョンボスを倒したらしいぞ」
「ああ、聞いたぜ。白銀の翼とかいう若い奴らだろう」
こんなところまでもう話が届いてるのか……。
とりあえず冒険者が多そうなこの店を早く出ようと席をたった。
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