食堂の給仕係は元S級冒険者

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食堂のお仕事①

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「いい? アニー、給仕係とは言っても、単に料理を運ぶだけじゃないのよ」

賄いにと、あっという間にマスターが作ってくれた肉野菜炒めとパンをいただきながら、私はライラさんに給仕係の仕事とは何をするのかを聞いていた。

「まず朝は店の掃除、で、昼営業でしょ。営業中はさっき見てた通り、料理を運んだり、食事の終わった皿を片付けてテーブルを拭いたりお会計したり……まあ色々とやることは沢山ね」

「沢山あるんですね……」

「あ、私に敬語はいいから。ホントは皿も洗うんだけど、今は給仕係が一人しかいないからマリーさんがやってたの」

「皿洗いですね」

皿か……いつも外食だったから洗ったのは遠い昔だ。

ダンジョンでは保存食で皿なんか使わなかったし。

「昼休憩の後は夜の仕込みの手伝い。その後夜営業よ。夜はお酒も出すから賑やかよ」

昼でもすごい賑わいだったのに、ほんとに人気店なんだ。

「あ、私、賄いのお皿洗います!」

いいところを見せなければ。

しかし……。

バリン!

ガシャン!

……お皿を洗う力加減がわからない。

「ま、まあ、今日は無理しなくていいわ」

マリーさんが焦って私から割れた皿を取り上げた。

「ごめんなさい。お皿を割っちゃって……」

私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「いいのよ。誰にだって最初はあるんだから。野菜の下ごしらえはむつかしいかしら?」

ジャガイモ、玉ねぎ、人参が箱にゴロゴロ置いてあるところにやってきた。

「ジャガイモを洗って皮を剥くの。無理なら違う仕事がまだまだあるから無理せずやってみてね。ライラちゃん、教えてあげてくれる?」

「はーい。料理したことある? え? ない? これは……難しいかな」

ジャガイモを洗い、ナイフを渡された。

野菜の皮剥きか……私にできるだろうか?

ゴブリンの首なら簡単に落とせるのだが。

「こうやって皮を薄く剥いて、芽のところは取るんだよ」

ナイフ……その手に馴染むしっかりとした質感に落ち着いてきた。

「こう?」

「そうそう、上手いじゃん。その芽はこうやって取るんだよ」

「こうかな?」

さっと教えてもらった通りに芽をとる。

「いいじゃん、上手い上手い」

皮を剥いたじゃがいもを水につけ、次を手に取る。

さっきみたいにすればいいんだよね。

じっと、ジャガイモを見つめるとナイフを構える。

スススッ。

「え? 今何が?」

ライラが目を擦った。

私の手には一瞬で皮の剥けたジャガイモが乗っていた。

刃物の扱いは得意だ。

野菜の下処理にも刃物の扱いが役に立つようだ。

「ジャガイモって、どれくらいの数剥けばいい?」

「あ、じゃあそのカゴに入ってるジャガイモ全部お願い」

「了解」

一度上手くいけば後はその通りに反復するだけだ。

私はあっという間にカゴのジャガイモを剥き終えた。

「次は何すればいいかな?」

「え? もうできたの?」

ライラが驚いて剥き終えたジャガイモをみる。

「すごい全部できてる……」

「ナイフは得意だから」

「なるほど……刃物系は器用で早いのか」

ライラは何か考え込むと、人参と玉ねぎを持ってきた。

そこで、人参と玉ねぎの皮剥きとみじん切りを教えてもらった。

「玉ねぎは切ると涙が出るから気をつけて」

教えてもらったように皮を剥いて、まな板でみじん切りにし、ボウルに入れていく。

「うん、上手いね。いい感じ。人参と玉ねぎもカゴにあるだけみじん切りよろしく」

「了解!」

嬉しい。

さっきお皿を割ってしまって凹んでいたが、何とかできる仕事がありそうだ。

待てよ、要はみじん切りしてこのボウルに入れればいいんだよね。

私は皮剥きした人参を顔の高さまで放り投げた。

「な、何?」

ライラさんの驚いた声がする。

ナイフを構えると人参に向かって素早く何度も振るった。

シャシャシャキン!

ボウルを手にして、空中でみじん切りになった人参を受けとめる。

ザアッ。

うん、やっぱりこっちの方が早く切れる。

「何? 今、何やったの?」

ライラさんがこちらにすごい勢いでやってきた。

「まな板を使わない方が早く切れるかなって思って?」

「思って? じゃないわよ。何よ今の技は? アンタ何者なの?」

「やだなあ、ただの元冒険者よ。剣士だったからできるだけ」

マスターとマリーさんも近寄ってきた。

「何、何? どうかしたか?」

「すごいわ、アニーちゃん、もうこんなに野菜がきれたのね」

マリーさんが野菜の入ったボウルを見て褒めてくれた。

「はい! 野菜を切るのは得意みたいです」

「得意とかいうレベルか!?」

その後、皮剥きした玉ねぎも同じようにみじん切りにして見せたら、マスターもマリーさんも手を叩いて喜んでくれた。
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