9 / 14
食堂のお仕事①
しおりを挟む
「いい? アニー、給仕係とは言っても、単に料理を運ぶだけじゃないのよ」
賄いにと、あっという間にマスターが作ってくれた肉野菜炒めとパンをいただきながら、私はライラさんに給仕係の仕事とは何をするのかを聞いていた。
「まず朝は店の掃除、で、昼営業でしょ。営業中はさっき見てた通り、料理を運んだり、食事の終わった皿を片付けてテーブルを拭いたりお会計したり……まあ色々とやることは沢山ね」
「沢山あるんですね……」
「あ、私に敬語はいいから。ホントは皿も洗うんだけど、今は給仕係が一人しかいないからマリーさんがやってたの」
「皿洗いですね」
皿か……いつも外食だったから洗ったのは遠い昔だ。
ダンジョンでは保存食で皿なんか使わなかったし。
「昼休憩の後は夜の仕込みの手伝い。その後夜営業よ。夜はお酒も出すから賑やかよ」
昼でもすごい賑わいだったのに、ほんとに人気店なんだ。
「あ、私、賄いのお皿洗います!」
いいところを見せなければ。
しかし……。
バリン!
ガシャン!
……お皿を洗う力加減がわからない。
「ま、まあ、今日は無理しなくていいわ」
マリーさんが焦って私から割れた皿を取り上げた。
「ごめんなさい。お皿を割っちゃって……」
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「いいのよ。誰にだって最初はあるんだから。野菜の下ごしらえはむつかしいかしら?」
ジャガイモ、玉ねぎ、人参が箱にゴロゴロ置いてあるところにやってきた。
「ジャガイモを洗って皮を剥くの。無理なら違う仕事がまだまだあるから無理せずやってみてね。ライラちゃん、教えてあげてくれる?」
「はーい。料理したことある? え? ない? これは……難しいかな」
ジャガイモを洗い、ナイフを渡された。
野菜の皮剥きか……私にできるだろうか?
ゴブリンの首なら簡単に落とせるのだが。
「こうやって皮を薄く剥いて、芽のところは取るんだよ」
ナイフ……その手に馴染むしっかりとした質感に落ち着いてきた。
「こう?」
「そうそう、上手いじゃん。その芽はこうやって取るんだよ」
「こうかな?」
さっと教えてもらった通りに芽をとる。
「いいじゃん、上手い上手い」
皮を剥いたじゃがいもを水につけ、次を手に取る。
さっきみたいにすればいいんだよね。
じっと、ジャガイモを見つめるとナイフを構える。
スススッ。
「え? 今何が?」
ライラが目を擦った。
私の手には一瞬で皮の剥けたジャガイモが乗っていた。
刃物の扱いは得意だ。
野菜の下処理にも刃物の扱いが役に立つようだ。
「ジャガイモって、どれくらいの数剥けばいい?」
「あ、じゃあそのカゴに入ってるジャガイモ全部お願い」
「了解」
一度上手くいけば後はその通りに反復するだけだ。
私はあっという間にカゴのジャガイモを剥き終えた。
「次は何すればいいかな?」
「え? もうできたの?」
ライラが驚いて剥き終えたジャガイモをみる。
「すごい全部できてる……」
「ナイフは得意だから」
「なるほど……刃物系は器用で早いのか」
ライラは何か考え込むと、人参と玉ねぎを持ってきた。
そこで、人参と玉ねぎの皮剥きとみじん切りを教えてもらった。
「玉ねぎは切ると涙が出るから気をつけて」
教えてもらったように皮を剥いて、まな板でみじん切りにし、ボウルに入れていく。
「うん、上手いね。いい感じ。人参と玉ねぎもカゴにあるだけみじん切りよろしく」
「了解!」
嬉しい。
さっきお皿を割ってしまって凹んでいたが、何とかできる仕事がありそうだ。
待てよ、要はみじん切りしてこのボウルに入れればいいんだよね。
私は皮剥きした人参を顔の高さまで放り投げた。
「な、何?」
ライラさんの驚いた声がする。
ナイフを構えると人参に向かって素早く何度も振るった。
シャシャシャキン!
ボウルを手にして、空中でみじん切りになった人参を受けとめる。
ザアッ。
うん、やっぱりこっちの方が早く切れる。
「何? 今、何やったの?」
ライラさんがこちらにすごい勢いでやってきた。
「まな板を使わない方が早く切れるかなって思って?」
「思って? じゃないわよ。何よ今の技は? アンタ何者なの?」
「やだなあ、ただの元冒険者よ。剣士だったからできるだけ」
マスターとマリーさんも近寄ってきた。
「何、何? どうかしたか?」
「すごいわ、アニーちゃん、もうこんなに野菜がきれたのね」
マリーさんが野菜の入ったボウルを見て褒めてくれた。
「はい! 野菜を切るのは得意みたいです」
「得意とかいうレベルか!?」
その後、皮剥きした玉ねぎも同じようにみじん切りにして見せたら、マスターもマリーさんも手を叩いて喜んでくれた。
賄いにと、あっという間にマスターが作ってくれた肉野菜炒めとパンをいただきながら、私はライラさんに給仕係の仕事とは何をするのかを聞いていた。
「まず朝は店の掃除、で、昼営業でしょ。営業中はさっき見てた通り、料理を運んだり、食事の終わった皿を片付けてテーブルを拭いたりお会計したり……まあ色々とやることは沢山ね」
「沢山あるんですね……」
「あ、私に敬語はいいから。ホントは皿も洗うんだけど、今は給仕係が一人しかいないからマリーさんがやってたの」
「皿洗いですね」
皿か……いつも外食だったから洗ったのは遠い昔だ。
ダンジョンでは保存食で皿なんか使わなかったし。
「昼休憩の後は夜の仕込みの手伝い。その後夜営業よ。夜はお酒も出すから賑やかよ」
昼でもすごい賑わいだったのに、ほんとに人気店なんだ。
「あ、私、賄いのお皿洗います!」
いいところを見せなければ。
しかし……。
バリン!
ガシャン!
……お皿を洗う力加減がわからない。
「ま、まあ、今日は無理しなくていいわ」
マリーさんが焦って私から割れた皿を取り上げた。
「ごめんなさい。お皿を割っちゃって……」
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「いいのよ。誰にだって最初はあるんだから。野菜の下ごしらえはむつかしいかしら?」
ジャガイモ、玉ねぎ、人参が箱にゴロゴロ置いてあるところにやってきた。
「ジャガイモを洗って皮を剥くの。無理なら違う仕事がまだまだあるから無理せずやってみてね。ライラちゃん、教えてあげてくれる?」
「はーい。料理したことある? え? ない? これは……難しいかな」
ジャガイモを洗い、ナイフを渡された。
野菜の皮剥きか……私にできるだろうか?
ゴブリンの首なら簡単に落とせるのだが。
「こうやって皮を薄く剥いて、芽のところは取るんだよ」
ナイフ……その手に馴染むしっかりとした質感に落ち着いてきた。
「こう?」
「そうそう、上手いじゃん。その芽はこうやって取るんだよ」
「こうかな?」
さっと教えてもらった通りに芽をとる。
「いいじゃん、上手い上手い」
皮を剥いたじゃがいもを水につけ、次を手に取る。
さっきみたいにすればいいんだよね。
じっと、ジャガイモを見つめるとナイフを構える。
スススッ。
「え? 今何が?」
ライラが目を擦った。
私の手には一瞬で皮の剥けたジャガイモが乗っていた。
刃物の扱いは得意だ。
野菜の下処理にも刃物の扱いが役に立つようだ。
「ジャガイモって、どれくらいの数剥けばいい?」
「あ、じゃあそのカゴに入ってるジャガイモ全部お願い」
「了解」
一度上手くいけば後はその通りに反復するだけだ。
私はあっという間にカゴのジャガイモを剥き終えた。
「次は何すればいいかな?」
「え? もうできたの?」
ライラが驚いて剥き終えたジャガイモをみる。
「すごい全部できてる……」
「ナイフは得意だから」
「なるほど……刃物系は器用で早いのか」
ライラは何か考え込むと、人参と玉ねぎを持ってきた。
そこで、人参と玉ねぎの皮剥きとみじん切りを教えてもらった。
「玉ねぎは切ると涙が出るから気をつけて」
教えてもらったように皮を剥いて、まな板でみじん切りにし、ボウルに入れていく。
「うん、上手いね。いい感じ。人参と玉ねぎもカゴにあるだけみじん切りよろしく」
「了解!」
嬉しい。
さっきお皿を割ってしまって凹んでいたが、何とかできる仕事がありそうだ。
待てよ、要はみじん切りしてこのボウルに入れればいいんだよね。
私は皮剥きした人参を顔の高さまで放り投げた。
「な、何?」
ライラさんの驚いた声がする。
ナイフを構えると人参に向かって素早く何度も振るった。
シャシャシャキン!
ボウルを手にして、空中でみじん切りになった人参を受けとめる。
ザアッ。
うん、やっぱりこっちの方が早く切れる。
「何? 今、何やったの?」
ライラさんがこちらにすごい勢いでやってきた。
「まな板を使わない方が早く切れるかなって思って?」
「思って? じゃないわよ。何よ今の技は? アンタ何者なの?」
「やだなあ、ただの元冒険者よ。剣士だったからできるだけ」
マスターとマリーさんも近寄ってきた。
「何、何? どうかしたか?」
「すごいわ、アニーちゃん、もうこんなに野菜がきれたのね」
マリーさんが野菜の入ったボウルを見て褒めてくれた。
「はい! 野菜を切るのは得意みたいです」
「得意とかいうレベルか!?」
その後、皮剥きした玉ねぎも同じようにみじん切りにして見せたら、マスターもマリーさんも手を叩いて喜んでくれた。
0
あなたにおすすめの小説
離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています
鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」
そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。
お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。
「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」
あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。
「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。
戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」
――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。
彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。
「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」
「……本当に、離婚したいのか?」
最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。
やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。
婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く
基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」
王太子は女を突き飛ばした。
「その恩も忘れて、お前は何をした!」
突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。
その姿に王太子は更に苛立った。
「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」
「ソル…?」
「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」
王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました
山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。
生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。
十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした
柴田はつみ
恋愛
侯爵令嬢エラナは、父親の命令で突然、10歳年上の国王アレンと結婚することに。
幼馴染みだったものの、年の差と疎遠だった期間のせいですっかり他人行儀な二人の新婚生活は、どこかギクシャクしていました。エラナは国王の冷たい態度に心を閉ざし、離婚を決意します。
そんなある日、国王と聖女マリアが親密に話している姿を頻繁に目撃したエラナは、二人の関係を不審に思い始めます。
護衛騎士レオナルドの協力を得て真相を突き止めることにしますが、逆に国王からはレオナルドとの仲を疑われてしまい、事態は思わぬ方向に進んでいきます。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる