魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

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回想〜魔物の襲撃

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二、回想~魔物の襲撃

 二年前のあの日、十五歳になったばかりの私は、両親と共に荷馬車に乗っていた。

私の両親は旅商人をしていて、その日も父が御者台に乗って、私と母は仕入れた荷物と一緒に荷馬車の中に乗っていた。

すると突然馬がいななき、荷馬車が大きく揺れて止まった。

「どうしたの?あなた?」

母が、父に尋ねると、父は厳しい声で言った。

「どうやら魔獣に囲まれたようだ。2人とも絶対に外に出るんじゃないぞ」

父はどうやら腰に下げた剣で応戦するようだ。

父と私は魔法が少し使える。

魔法が使える人が20パーセントいるかいないかと言われるこの国では魔法を使える事は重宝される。

父も私も水魔法が使えるが、私は魔力量がそんなに多くないらしく、飲み水に困らない程度しか出せない。

父はもう少し使えるようだが一人で大丈夫だろうか。

私達が旅するこのアストリエ王国という国は資源豊かな国だ。

北の山脈からは上質な魔鉱石が取れ、それに魔力を込める事で日常生活に役立つ魔道具を作る事ができる。

父は主に魔鉱石の買い付けを北の街で行って、王都の工房に下ろす仕事をやっていた。

今日は買い付けた魔法石を乗せ、王都に帰るところだったのだ。

「父さん、私も戦う」

少しなら役に立てるかも、と聞いたのだが、父は緊迫した様子で厳しい声で答えた。

「数が多い。ダメだ!いいと言うまで何があっても絶対にそこから出るんじゃないぞ!」

「父さん!?」

「あなた?」

「絶対に出るな!」

魔獣の唸り声がだんだん近づいている。

やがて激しい魔獣の唸り声、ザシュッというような肉を切る音、ダンダンと何かを叩くような音、色んな音が激しく聞こえてきた。

「あなた…どうか無事でいて…」

母は私と荷馬車の中で手を取り合って祈った。

「お父さん……」

やがて大きな音がして、荷馬車が横倒しになった。

「キャア!!」

そして馬車の側面が破られるとそこから狼のような魔獣が顔を出した。

「ま、魔獣!!」

私が叫ぶと、母が私の上に覆い被さってきたのは同時だったと思う。

「ティナ!伏せて!動かないで」

「お母さん!!」

耳のすぐ近くで魔獣の唸り声が聞こえる。

「お母さん、どいて!私が戦う」

「ダメよ!あなたは生きて!絶対に生き延びるの!約束よ!」

「おかあさん!!」

血の匂いが鼻につく。

「!!」

左足が焼け付くように痛い。

どうやら噛まれたようだ。

「お願い、神様。この子を助けて」

最後に聞いた母の言葉だった……。


「こっちだ!馬車がわれているぞ!」

見知らぬ男の声がする。

ドーン、ドーンという何かが爆発したような音。

風の切り裂く音。

ザクっという裂けるような刺さるような音。

色んな音が重なった後、あたりは静かになった。

そして…。

「人がいるぞ、大丈夫か?」

急に視界が明るくなった。

「ダメだ。この人はもう生き絶えている」

お母さん!?

「待て、もう一人いるぞ。大丈夫か?」

私は誰かに抱き起こされた。

意識はぼんやりとしているが、目の前の人物の顔はわかる。

「う、う」

思うように声が出ない。

「生きてるぞ!だが足に酷い怪我をしてるな」

その人は、腰の鞄から白い布を出すと、私の足にキツく巻いた。

「もう大丈夫だ。痛いだろうが少し我慢してくれ。すぐ病院に連れて行ってやる」

力強い声でそう言われて助かったんだとわかった。

私がかすかに頷いたのがわかったのだろう、その人は優しく微笑んで力強い腕で私を抱き抱えた。

そして私はそのまま意識を失った…。
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