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ノエルと買い物
四、ノエルと買い物
私はレオニス様の家のソファで途方にくれていた。
もう家事が終わってしまった……。
さすが魔法師団長の家というべきか。
洗濯は洗濯機なる魔道具で、洗濯物と洗剤を入れボタンを押すだけでできてしまった。
家には掃除の魔法でもかかっているのか、塵一つ落ちてない。
買い物は昨日した分で十分だし、夕飯の仕込みも終わった。
どうしよう……まだお昼前だというのに家政婦らしい仕事はもう終わってしまったのだ。
その時窓をトントンと叩く白い鳥がいた。
「あれ? 鳥?」
私が立ち上がって窓を開けると、その鳥はレオニス様の声を発した。
「ティナ。レオニスだ。すまん、お前の服や身の回りのものを買うのを忘れていた。俺が帰って一緒に行きたいところだが、あいにく今日は仕事で遅くなりそうだ。代わりにうちの女性団員のノエルに行ってもらうことにした。金もノエルに預けてあるから遠慮なく好きなものを買ってくるといい」
白い鳥のようなものはレオニス様の声でそう言い終わると一枚の真っ白な紙になった。
「わあ、すごい。これも魔法?」
レオニス様といると新しい驚きでいっぱいだ。
「ええと……ノエルさんという方がくるということね」
私の身の回りの物のためにわざわざきていただくなんて申し訳ないな。
お給料をもらったら少しずつ揃えていこうと思っていたのだ。
その時、家のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい」
私はガチャリと玄関ドアを開けた。
そこには私より少し背が高い、ふんわりした赤毛にそばかすの笑顔の少女が立っていた。
「こんにちはっ! 怪しいものではありません。王立魔法師団に所属しているノエル、17歳ですっ」
眩しいほどの元気なパワーを感じる。
「ティナちゃんですね。団長の依頼でティナちゃんのお買い物のお手伝いに来ました。お金も預かっているので遠慮しないで買いまくりましょう」
何故か玄関先でガッツポーズだ。
「と、とりあえず中へ……」
私がドアを大きく開けて迎え入れると、ノエルさんは家に入ってきた。
「わ~、ここが団長の家ですか。なかなか立派ですね」
「お茶入れますね」
私がお茶を入れにキッチンに向かうと、キョロキョロしていたノエルさんが「おかまいなく」と呟いた。
お茶をだして、改めてキッチンで向かい合って挨拶を済ませると、ノエルさんは言った。
「それにしてもティナちゃん、家にやってきた人を確認せずに玄関を開けたらダメですよ。悪いやつだったらどうするんですか」
「あの……レオニス様から鳥の形をしたメッセージをいただいていて、ノエルさんがくると聞いていたんです」
私が恐る恐る言うと、ノエルさんはなるほどと呟いた。
「へー。団長にしては気が効いてますね。どうせカインさんが助言したんでしょうが。ところで、ティナちゃんは、身の回りの品は何があるんですか?」
どうしよう。遠慮して答えるべきかな。
「あ、遠慮はいらないです。ありのまま答えてください」
この人は心が読めるのか。
「あの……今着てる服と下着です」
「え?」
ノエルさんの顔が驚愕に染まった。
「助けられた時に着ていたこの服と下着で全部です」
ノエルさんはしばらく固まった後ボソッと呟いた。
「ほんとに使えない奴らだな……」
「え?」
私が聞き返すと今度は笑顔で私に言った。
「何でもないですよ。それはさぞかし不便でしょう。さあ、買い物に出かけましょう。あ、私のことはノエルと呼び捨てにしてください。私もティナって呼ばせてもらいます。敬語も不要です」
「え……でも」
今日初めて会った、王立魔法師団の方にそんな……。
「私がその方がいいの。わかった? ティナ」
「はい。それじゃあ、よろしく。ノエル」
「用意はいい? それでは街に出よう!」
ノエルは私の手を掴むと外に飛び出した。
街に出るとノエルと私はまず洋服の店に入った。
私は両親と旅商人をしていたので王都の街は知っていると思っていたが王都は常に新しい物に溢れているようだ。
「ここが、最近王都で若い女の子に人気の洋服屋さんだよ。さあ、入ろう」
ノエルの案内で、とある洋服店の中に入ると、そこは素敵な洋服や小物で溢れていた。
「わあ、素敵」
私が思わず声を漏らすと、奥から若い女性の店員さんが出てきた。
「いらっしゃいませ。ふふ、ありがとうございます。うちは既製品からセミオーダーまで色々ありますよ」
ノエルさんが店員さんに言った。
「すいません、この子に似合う服どんなのがありますか? 普段着とお出かけ用と欲しいんですけど」
お出かけ?
「あの……ノエル? お出かけする予定はないから普段着だけでいいのだけど」
「ダメだよ。ちゃんと団長から買うよう言われてきているんだからね。これも任務の一環といえばいえなくもないし」
そう言われても、レオニス様のお金で自分のものを買うのは気が引ける。
「ティナ、考えてみて。天下の魔法師団団長の家に客人が来て、家政婦がみすぼらしい格好をしていたらどう思われるかな」
確かに……。団長の家を訪れた人は、団長が家政婦に十分な服を着せられないほど困窮しているか、ケチだと思われるだろう。
「レオニス様はケチではありません!」
「でしょう? それにティナが可愛くしてると団長もきっと癒されるよ。だから色々買おうよ」
少しでも喜んでくれるだろうか。
「それなら……よろしくお願いします」
我ながら簡単に説得されてしまったが、レオニス様の名前を出されると弱い。
それからあっという間にあれやこれや着せ替え人形のように着せられ、気がついたら普段着三着にお出かけ着を一着(ノエルは二着は欲しいと言ったがそこは譲れなかった)さらに下着を数着買ってもらっていた。
「あー楽しかった。勤務中にこんなに楽しい買い物ができるなんて。日頃の行いがいいからかな」
ノエルは店を出ると伸びをした。
「あ、ノエル荷物貸して。魔法袋にに入れちゃうね」
私はノエルから荷物を受け取ると、レオニス様にお借りしている魔法袋に入れる。すると、あっという間に服の入った大量の紙袋が収納され、消えた。
「ほんと便利だよね~。私も欲しいわ」
え? 魔法師団はみんな持ってるのかと思っていたが、違うのだろうか?
「団には魔法袋が一つあって、遠征の準備が常に入ってるんだけど、流石に個人にはないね」
そんなすごいものだったのか。
預かっていて大丈夫だろうか。
「あ、団長は自分で作れるから気にしなくて大丈夫だよ。でも団長も流石にレアすぎて誰かに作ってあげるわけにはいかないからね」
ますます持っているのが怖い。
「心配しなくてもその魔法袋は防犯の魔法がかかってるから取られることはないよ」
そんな防犯の魔法もあるのか。世の中には私の知らない魔法が多い。
「ところでお腹すいたね。何か食べにいこう! もちろん団長のお金で」
ノエルがニヤリと笑う。
「え?団長にことわりもなくご飯まで?」
そんなに自由にお金を使って大丈夫だろうか。
「大丈夫、大丈夫。団長めちゃ給料もらってるけど使う暇ないから。たまには使ってあげないとね」
「……」
私が返答に困っていると、ノエルは再び私の手を引いて歩いて行った。
「さあ、美味しいお店教えるからね。行こう!」
そして私とノエルは食事だけでなくしっかりスイーツまでいただいてしまった。
レオニス様ごめんなさい。
私はレオニス様の家のソファで途方にくれていた。
もう家事が終わってしまった……。
さすが魔法師団長の家というべきか。
洗濯は洗濯機なる魔道具で、洗濯物と洗剤を入れボタンを押すだけでできてしまった。
家には掃除の魔法でもかかっているのか、塵一つ落ちてない。
買い物は昨日した分で十分だし、夕飯の仕込みも終わった。
どうしよう……まだお昼前だというのに家政婦らしい仕事はもう終わってしまったのだ。
その時窓をトントンと叩く白い鳥がいた。
「あれ? 鳥?」
私が立ち上がって窓を開けると、その鳥はレオニス様の声を発した。
「ティナ。レオニスだ。すまん、お前の服や身の回りのものを買うのを忘れていた。俺が帰って一緒に行きたいところだが、あいにく今日は仕事で遅くなりそうだ。代わりにうちの女性団員のノエルに行ってもらうことにした。金もノエルに預けてあるから遠慮なく好きなものを買ってくるといい」
白い鳥のようなものはレオニス様の声でそう言い終わると一枚の真っ白な紙になった。
「わあ、すごい。これも魔法?」
レオニス様といると新しい驚きでいっぱいだ。
「ええと……ノエルさんという方がくるということね」
私の身の回りの物のためにわざわざきていただくなんて申し訳ないな。
お給料をもらったら少しずつ揃えていこうと思っていたのだ。
その時、家のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい」
私はガチャリと玄関ドアを開けた。
そこには私より少し背が高い、ふんわりした赤毛にそばかすの笑顔の少女が立っていた。
「こんにちはっ! 怪しいものではありません。王立魔法師団に所属しているノエル、17歳ですっ」
眩しいほどの元気なパワーを感じる。
「ティナちゃんですね。団長の依頼でティナちゃんのお買い物のお手伝いに来ました。お金も預かっているので遠慮しないで買いまくりましょう」
何故か玄関先でガッツポーズだ。
「と、とりあえず中へ……」
私がドアを大きく開けて迎え入れると、ノエルさんは家に入ってきた。
「わ~、ここが団長の家ですか。なかなか立派ですね」
「お茶入れますね」
私がお茶を入れにキッチンに向かうと、キョロキョロしていたノエルさんが「おかまいなく」と呟いた。
お茶をだして、改めてキッチンで向かい合って挨拶を済ませると、ノエルさんは言った。
「それにしてもティナちゃん、家にやってきた人を確認せずに玄関を開けたらダメですよ。悪いやつだったらどうするんですか」
「あの……レオニス様から鳥の形をしたメッセージをいただいていて、ノエルさんがくると聞いていたんです」
私が恐る恐る言うと、ノエルさんはなるほどと呟いた。
「へー。団長にしては気が効いてますね。どうせカインさんが助言したんでしょうが。ところで、ティナちゃんは、身の回りの品は何があるんですか?」
どうしよう。遠慮して答えるべきかな。
「あ、遠慮はいらないです。ありのまま答えてください」
この人は心が読めるのか。
「あの……今着てる服と下着です」
「え?」
ノエルさんの顔が驚愕に染まった。
「助けられた時に着ていたこの服と下着で全部です」
ノエルさんはしばらく固まった後ボソッと呟いた。
「ほんとに使えない奴らだな……」
「え?」
私が聞き返すと今度は笑顔で私に言った。
「何でもないですよ。それはさぞかし不便でしょう。さあ、買い物に出かけましょう。あ、私のことはノエルと呼び捨てにしてください。私もティナって呼ばせてもらいます。敬語も不要です」
「え……でも」
今日初めて会った、王立魔法師団の方にそんな……。
「私がその方がいいの。わかった? ティナ」
「はい。それじゃあ、よろしく。ノエル」
「用意はいい? それでは街に出よう!」
ノエルは私の手を掴むと外に飛び出した。
街に出るとノエルと私はまず洋服の店に入った。
私は両親と旅商人をしていたので王都の街は知っていると思っていたが王都は常に新しい物に溢れているようだ。
「ここが、最近王都で若い女の子に人気の洋服屋さんだよ。さあ、入ろう」
ノエルの案内で、とある洋服店の中に入ると、そこは素敵な洋服や小物で溢れていた。
「わあ、素敵」
私が思わず声を漏らすと、奥から若い女性の店員さんが出てきた。
「いらっしゃいませ。ふふ、ありがとうございます。うちは既製品からセミオーダーまで色々ありますよ」
ノエルさんが店員さんに言った。
「すいません、この子に似合う服どんなのがありますか? 普段着とお出かけ用と欲しいんですけど」
お出かけ?
「あの……ノエル? お出かけする予定はないから普段着だけでいいのだけど」
「ダメだよ。ちゃんと団長から買うよう言われてきているんだからね。これも任務の一環といえばいえなくもないし」
そう言われても、レオニス様のお金で自分のものを買うのは気が引ける。
「ティナ、考えてみて。天下の魔法師団団長の家に客人が来て、家政婦がみすぼらしい格好をしていたらどう思われるかな」
確かに……。団長の家を訪れた人は、団長が家政婦に十分な服を着せられないほど困窮しているか、ケチだと思われるだろう。
「レオニス様はケチではありません!」
「でしょう? それにティナが可愛くしてると団長もきっと癒されるよ。だから色々買おうよ」
少しでも喜んでくれるだろうか。
「それなら……よろしくお願いします」
我ながら簡単に説得されてしまったが、レオニス様の名前を出されると弱い。
それからあっという間にあれやこれや着せ替え人形のように着せられ、気がついたら普段着三着にお出かけ着を一着(ノエルは二着は欲しいと言ったがそこは譲れなかった)さらに下着を数着買ってもらっていた。
「あー楽しかった。勤務中にこんなに楽しい買い物ができるなんて。日頃の行いがいいからかな」
ノエルは店を出ると伸びをした。
「あ、ノエル荷物貸して。魔法袋にに入れちゃうね」
私はノエルから荷物を受け取ると、レオニス様にお借りしている魔法袋に入れる。すると、あっという間に服の入った大量の紙袋が収納され、消えた。
「ほんと便利だよね~。私も欲しいわ」
え? 魔法師団はみんな持ってるのかと思っていたが、違うのだろうか?
「団には魔法袋が一つあって、遠征の準備が常に入ってるんだけど、流石に個人にはないね」
そんなすごいものだったのか。
預かっていて大丈夫だろうか。
「あ、団長は自分で作れるから気にしなくて大丈夫だよ。でも団長も流石にレアすぎて誰かに作ってあげるわけにはいかないからね」
ますます持っているのが怖い。
「心配しなくてもその魔法袋は防犯の魔法がかかってるから取られることはないよ」
そんな防犯の魔法もあるのか。世の中には私の知らない魔法が多い。
「ところでお腹すいたね。何か食べにいこう! もちろん団長のお金で」
ノエルがニヤリと笑う。
「え?団長にことわりもなくご飯まで?」
そんなに自由にお金を使って大丈夫だろうか。
「大丈夫、大丈夫。団長めちゃ給料もらってるけど使う暇ないから。たまには使ってあげないとね」
「……」
私が返答に困っていると、ノエルは再び私の手を引いて歩いて行った。
「さあ、美味しいお店教えるからね。行こう!」
そして私とノエルは食事だけでなくしっかりスイーツまでいただいてしまった。
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