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危険と出会い①
五、危険と出会い
レオニス様の家政婦になって一ヶ月が経った。
かなり街にも慣れて、市場の方々は気軽に声をかけてくれるようになった。
「ティナちゃん、今日はジャガイモが安いよ。どうだい?」
八百屋のおばさんはいつもおすすめ品を教えてくれる。
「ティナちゃんは今日の夕飯は何を作るつもりだい? 毎日大変だねえ」
「いえ、料理くらいしかすることがないので……。今日はジャガイモでグラタンにしようかな」
「それは美味しそうだね。ティナちゃんの雇い主は毎日美味しいご飯を食べられて幸せだ」
「そうだといいんですが……。そうだ、チーズはどこのお店がおすすめですか?」
私がたずねると、おばさんは快く教えてくれた。
「チーズはもう少し奥の市場の端の方の店がおすすめなんだけど、更に行くと治安が悪くなるから店より奥には行かないようにね」
何度も言われた治安の悪い場所か。
「はい、気をつけます。ありがとうございます」
チーズだけ買ってすぐに戻ろう。
私は足早に教えてもらった店に向かった。
「多分ここよね……」
教えてもらった通りに進むと小さなそれらしい店に辿り着いた。
あまり店構えは立派とは言えないが、勇気を出して入ってみると、中はさまざまなチーズが所狭しと並べられていた。
「すごい」
私が夢中で色々なチーズを眺めていると後ろから男性の声がした。
「嬢ちゃん、見ない顔だな。この店は初めてかい?」
がっしりした体格に鼻の下の髭がよく似合うおじさんだ。
「はい、八百屋のおばさんに教えられてきました。チーズはここが一番だって」
「当たり前だ。俺はプライドをかけてチーズを作っているからな。どんな料理に使うチーズを探しにきたんだ?」
「グラタン用のチーズが欲しいのですが」
「グラタンか……粉チーズをかけることもあるが、一緒に乗せて焼き上げるならモレラもいいぞ」
店主はチーズについて熱く語り出した。
しばらく聞いていたが、このままでは夕飯に間に合わなくなるのではないかと思い、勇気を出して話を遮った。
「あの……、そろそろ夕飯の仕込みもありますので、モレラチーズとそのワインに合うチーズをいただきます」
「ああ、もうそんな時間か、悪い悪いついチーズのことになると熱くなっちまってな」
なんとかチーズを買うことに成功して鞄にしまった。
「ふう、早く帰ろう」
店を出ると目の前を横切っていたおじいさんが急に腰を抑えてうずくまった。
「イタタ! あー、腰が……」
大変だ。
「おじいさん、どうされました?」
「急に腰が強く痛み出してな。お嬢さん、悪いがウチまで付き添ってくれないか。すぐ近くなんじゃ」
「いいですよ。立てそうですか? 私に捕まってください」
私はおじいさんを支えると、おじいさんの指差す方向に向かって歩き始めた。
「あの……本当にこっちで合ってます?」
何か周りの寂れた様子が気になる。
「ああ、もうすぐそこじゃ」
おじいさんはさっきもそう言っていた。
ここは市場の人たちが行っては行けないと言っていたあたりではないのか。
「あの……私、仕事がありますので、ここまでで失礼します」
おじいさんには悪いが、引き返した方がよさそうだ。
「ありがとう。ここまでくれば大丈夫じゃ」
おじいさんの言葉にホッとして離れると、目の前には体格のいい男性三人が立ちはだかっていた。
「へえ、今度は結構な上玉じゃねえか」
「ジジイ、ご苦労だったな。約束の金だ」
男の一人がおじいさんには小さな袋を投げて渡す。
「くく、ありがとよ」
さっきまで痛そうに腰をさすって歩いていたらおじいさんが、袋を受け取りスタスタと遠ざかっていく。
「一体何が……」
男の一人がニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて言った。
「まだわからないか? お前はあのジジイに騙されたんだよ。俺たちが貴族にお前を売ってやるからせいぜい可愛がってもらえよ」
「!!」
なんてことだ。
レオニス様も市場の奥には立ち入らないようにと言っていたのに。
私が逃げようと振り向くと、頭から大きな麻袋を被せられた。
真っ暗で何も見えない。
「暴れるんじゃねえ! 傷でもついたら売値が下がっちまう」
このまま売られるなんて冗談じゃない!
「助けて! 誰か! レオニス様!」
私は力の限り叫んだ。
「うるせえ! 静かにしないとぶん殴るぞ!」
「おい、殴って傷でもつけたらどうするんだ」
「でも、このまま騒がれたら厄介だぜ」
「急いで運ぶぞ!」
どこに連れて行かれるのか?レオニス様にもう会えなくなるなんて嫌だ!
「誰か!助けて!」
レオニス様の家政婦になって一ヶ月が経った。
かなり街にも慣れて、市場の方々は気軽に声をかけてくれるようになった。
「ティナちゃん、今日はジャガイモが安いよ。どうだい?」
八百屋のおばさんはいつもおすすめ品を教えてくれる。
「ティナちゃんは今日の夕飯は何を作るつもりだい? 毎日大変だねえ」
「いえ、料理くらいしかすることがないので……。今日はジャガイモでグラタンにしようかな」
「それは美味しそうだね。ティナちゃんの雇い主は毎日美味しいご飯を食べられて幸せだ」
「そうだといいんですが……。そうだ、チーズはどこのお店がおすすめですか?」
私がたずねると、おばさんは快く教えてくれた。
「チーズはもう少し奥の市場の端の方の店がおすすめなんだけど、更に行くと治安が悪くなるから店より奥には行かないようにね」
何度も言われた治安の悪い場所か。
「はい、気をつけます。ありがとうございます」
チーズだけ買ってすぐに戻ろう。
私は足早に教えてもらった店に向かった。
「多分ここよね……」
教えてもらった通りに進むと小さなそれらしい店に辿り着いた。
あまり店構えは立派とは言えないが、勇気を出して入ってみると、中はさまざまなチーズが所狭しと並べられていた。
「すごい」
私が夢中で色々なチーズを眺めていると後ろから男性の声がした。
「嬢ちゃん、見ない顔だな。この店は初めてかい?」
がっしりした体格に鼻の下の髭がよく似合うおじさんだ。
「はい、八百屋のおばさんに教えられてきました。チーズはここが一番だって」
「当たり前だ。俺はプライドをかけてチーズを作っているからな。どんな料理に使うチーズを探しにきたんだ?」
「グラタン用のチーズが欲しいのですが」
「グラタンか……粉チーズをかけることもあるが、一緒に乗せて焼き上げるならモレラもいいぞ」
店主はチーズについて熱く語り出した。
しばらく聞いていたが、このままでは夕飯に間に合わなくなるのではないかと思い、勇気を出して話を遮った。
「あの……、そろそろ夕飯の仕込みもありますので、モレラチーズとそのワインに合うチーズをいただきます」
「ああ、もうそんな時間か、悪い悪いついチーズのことになると熱くなっちまってな」
なんとかチーズを買うことに成功して鞄にしまった。
「ふう、早く帰ろう」
店を出ると目の前を横切っていたおじいさんが急に腰を抑えてうずくまった。
「イタタ! あー、腰が……」
大変だ。
「おじいさん、どうされました?」
「急に腰が強く痛み出してな。お嬢さん、悪いがウチまで付き添ってくれないか。すぐ近くなんじゃ」
「いいですよ。立てそうですか? 私に捕まってください」
私はおじいさんを支えると、おじいさんの指差す方向に向かって歩き始めた。
「あの……本当にこっちで合ってます?」
何か周りの寂れた様子が気になる。
「ああ、もうすぐそこじゃ」
おじいさんはさっきもそう言っていた。
ここは市場の人たちが行っては行けないと言っていたあたりではないのか。
「あの……私、仕事がありますので、ここまでで失礼します」
おじいさんには悪いが、引き返した方がよさそうだ。
「ありがとう。ここまでくれば大丈夫じゃ」
おじいさんの言葉にホッとして離れると、目の前には体格のいい男性三人が立ちはだかっていた。
「へえ、今度は結構な上玉じゃねえか」
「ジジイ、ご苦労だったな。約束の金だ」
男の一人がおじいさんには小さな袋を投げて渡す。
「くく、ありがとよ」
さっきまで痛そうに腰をさすって歩いていたらおじいさんが、袋を受け取りスタスタと遠ざかっていく。
「一体何が……」
男の一人がニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて言った。
「まだわからないか? お前はあのジジイに騙されたんだよ。俺たちが貴族にお前を売ってやるからせいぜい可愛がってもらえよ」
「!!」
なんてことだ。
レオニス様も市場の奥には立ち入らないようにと言っていたのに。
私が逃げようと振り向くと、頭から大きな麻袋を被せられた。
真っ暗で何も見えない。
「暴れるんじゃねえ! 傷でもついたら売値が下がっちまう」
このまま売られるなんて冗談じゃない!
「助けて! 誰か! レオニス様!」
私は力の限り叫んだ。
「うるせえ! 静かにしないとぶん殴るぞ!」
「おい、殴って傷でもつけたらどうするんだ」
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「急いで運ぶぞ!」
どこに連れて行かれるのか?レオニス様にもう会えなくなるなんて嫌だ!
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