魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

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魔法師団と騎士団③

しばらくすると、玄関の方からガヤガヤと声がしてきた。

「ただいま戻りましたー、って団長達は会議中か」

「おいノエル、うるさいぞ」

「リードには言われたくないな」

ん? ノエル?

私はそろりと部屋を出ると階段の上から玄関をみた。

そこにはノエルを入れて五人の人物がいた。

ノエル以外はみんな男性だ。

「あの……こんにちは。お邪魔してます」

私が挨拶すると、焦茶の髪の男性が怪訝な顔で言った。

「ん? 誰だお前?」

「あっ! ティナじゃない! どうしたの? 団長に用事?」

ノエルが階段を上がってくる。

「レオニス様の忘れ物を届けにきて、一緒に帰るので仕事が終わるのを待ってるの」

私が言うと、ノエルは私の両手を掴んで上下にブンブン振った。

「そうだったんだ。こんなところでティナに会えるなんて嬉しい。来て、お茶でも入れるよー」

ノエルが私の片手を繋いだまま一階に促す。

「だから誰なんだよ。コイツ」

焦茶の髪の男性がさらにノエルに尋ねる。

「ちょっと! コイツってなによ」

「誰だって聞いてんだよ」

名乗りたいが口を挟めない。

「ノエル、リード。彼女が困ってるよ」

少し年上らしい青年が言うと二人とも気まずそうな顔をした。

「初めまして。私はレオニス様の家政婦のティナと申します」

「ああ。あの時の……」

リードさんの言葉を年上の男性が手で制する。

「あっ、悪い」

みんな私を助けてくれた時にいたのだろう。気を使わせて申し訳ない。

「大丈夫です。皆さん、あの時は私を助けてくださってありがとうございました」

おかげでこうして元気に生きている。

「もう! リードはデリカシーに欠けるのよ」

ノエルの言葉に残りの二人が頷いた。

「そんなことより自己紹介がまだだったね。俺はバリル。二十三歳で水属性の魔術師だ」

さっきノエル達を諌めたお兄さんだ。緑がかった黒髪で下がった目尻が優しそう。

「で、こっちのおじさんはゴードンだよ」

レオニス様よりまだ大きく、さらにがっしりとした筋肉質の男性だ。

「よろしくな。俺は土魔法だ。ちなみに妻と可愛い娘が一人いる」

「よろしくお願いします」

がっしりした手と握手する。

「それからここ三人は同じ十七歳。ノエルは知ってるね。こっちがリードで、こっちがザックだ」

「よろしく……」

シルバーアッシュの整った顔の男性が軽く頭を下げた。

「俺はリード。火魔法が得意だ」

焦茶の髪のリードさんが手を差し出してくれたので、握り返す。

「よろしくお願いします」

私が言うと、ノエルがリードさんをからかった。

「リード真っ赤じゃん。ティナが可愛いからって照れてんの?」

「うるせえ、黙れ」

また喧嘩が始まりそうだ。

「そ、そうだ。私も少しですが水魔法が使えるんですよ」

話をそらそうとそう言うと、みんなが興味を持ってくれたようだ。

「へー、水魔法なら俺と同じだね。どのくらい使えるの?」

バリルさんがそう言ってくれるが、ほとんど使えない。

「水魔法と言っても大した魔力はなくて、せいぜい家事に使ったり、飲み水を出せるくらいです」

「ふーん、魔力量ちゃんとみてもらったの?」

「いえ、ちゃんとみてもらったことはないんですが」

ノエルがそれを聞いて言った。

「じゃあ団長に一度調べてもらうといいよ。あまり上手く使えなくても実は多かったりすることもあるみたいだし」

「そうなんですか?」

それは初耳だ。

「ところでティナちゃんはなんでここに一人でいるの?」

ザックさんの言葉に私は今日の経緯を説明する。迷って騎士団に行ってしまったことも。

「あいつらマジ最低!!」

ノエルは怒ってドンと足を踏み鳴らした。

「私もちゃんと道を確認しなかったのが悪いんだよ」

家政婦たるものレオニス様の勤め先までの道くらい把握しておくべきだった。

「そもそも騎士団はろくなやつがいないんだよ」

リード君も怒っている。

「騎士団って貴族の息子が多いから何にもできないくせに偉そうなんだよね」

ザックさんもか……。

バリルさんに詳しい説明を求めると、

騎士団員は元々貴族の子弟が多く、上官になればなるほど貴族のみになる。

今の騎士団長であるルードリッヒ様は侯爵家の嫡子ながら人格者であるが、副団長のマルフォンは家の権威だけでその地位を手に入れた典型的なクズらしい。

騎士団も二分化されており、割とまともな団長派と人を貴族の血統だけで判断する副団長派に分かれているそうだ。

私を連れて行った人はおそらく副団長派だろう。

「さらにだな。副団長派は俺たち魔法師団を目の敵にしているんだ。俺たちが王直属ですぐに行動できるから自分達騎士団の手柄を横取りして大きな顔をしていると思っている」

「そんな!」

私のように魔法師団のおかげで助かった人も多いだろうに。

「まったく。何もしてないくせに大きな顔をしているのはどっちだって言うんだ」

「ほんとよ。議会待ってたら、助かるものも助からないよね」

騎士団は議会の承認がないと、表立って動けないそうだ。

「それに貴族達は鍛錬もそこそこにサボってばっかなやつもいるし。そのくせ街では騎士団だからって偉そうに」

「貴族だから下手に手を出せないのが辛いところ。ティナは可愛いんだから目をつけられないように気をつけなね」

ノエルはそう言って私を抱き寄せた。

「おい、お前ら、何やってるんだ?」

その時、レオニス様の声にみんなが玄関を向いた。

「ただいま~。皆も戻ってきてたのか」

続いてカインさんも入ってきた。

「ティナ、待たせて悪かったな。団員達と仲良くなったのか?」

レオニス様は私の頭を撫でる。

「はい、皆さんとお話ししていました」

「そうか……。皆、ティナと仲良くしてくれてありがとう。さあ、帰るか。ティナ」

団長の言葉に皆が何故が驚愕の表情を浮かべる。

「え? これは誰?団長の皮を被った別人なの」

「笑顔逆に怖え~~」

「団長も笑顔ができたんですね」

ノエル達のその言葉にレオニス様はムッとする。

「そうか、お前ら。明日は存分に鍛錬したいみたいだな」

その言葉を聞いたノエル達は慌てて回れ右をした。

「じゃあティナまたね~。気をつけて」

「会えて嬉しかったよ。またね」

「怖っ」

散り散りに去っていく団員達に私は挨拶をする。

「皆さん、お会いできて嬉しかったです。さようなら」

団員達は皆振り向いて軽く手を振ったり頷いてくれた。

私は爆笑するカインさんの声を聞きつつ家路についた。
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