魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

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モンターニュ侯爵と騎士団③

荷馬車にしばらく揺られると、やっと目的地に着いたようだ。

馬車が止まると私は急いで麻袋に入り、すでに寝かされてきる麻袋の横に同じように並んだ。

御者をしていた老人が降りる気配がして、程なく男の声がした。

「今回は二人と聞いていたが、三人に増えたんだな。待ってろ、追加の金を取ってくる」

男がお金を取りに戻った気配がして、老人の呟きが聞こえた。

「今回は二人だったと思ったが、三人だったか? まあ金が増える分にはいいか」

それを聞いて私は自分がどれだけ危険な事をしているか、ゾッとした。

しかしもう後には引けない。

「ほら三人分の運び代だ。わかってるとは思うが命が惜しければ余計な事は言うんじゃないぞ」

「へい。わかっておりますよ」

男は他に二人連れてきており、私たちは麻袋に入れられたまま担がれたようだ。

乱暴な担ぎ方に思わず声が漏れそうになったがなんとか抑えられた。

「おい、大事な商品に傷がついたら困るから丁寧に運べよ」

程なくドサリと床に置かれる音がした。

麻袋を開けられたのか、閉じた瞼の裏が明るくなる。

「おい、お前ら。また飯食ってねえじゃねえか。痩せたら商品価値が下がるんだからちゃんと食え」

私達を床に置いて、男が言った。

「誰がアンタ達の持ってきたもんなんか食べるもんか。早くここから出してよ」

この声は! ルチア!

「待て待て、オークションまでまだ日があるんだ。もう二、三人集めたいと仰っているからな」

がちゃんと何かが閉まる音がして、しばらくすると女性達の話し声がした。

「この子達も騎士団に攫われたのね。かわいそうに」

「なんとかこの状況を気づいてもらえないかしら」

「怖い……。私一体どうなるの?」

もう目を開けてもいいかもしれない。

うっすら目を開けると、心配そうに覗き込むルチアと目があった。

「ティナ? ティナなの? あなたどうしてここに? その髪の色どうしたの?」

動揺しているルチアにまずは落ち着いてと言う。

「ルチアを探しに騎士団の様子を見ていたら成り行きでここにきちゃって……」

ざっくりと状況を説明する。

「ティナ……あなた、レオニス様はティナがここにいることを知ってるの?」

「知らない……。レオニス様は家で待ってるようにって……」

「こんなとこまできちゃって、呆れた……。でも心配してくれた事はありがとう」

そう言ってルチアとすでにいた二人の女性は今の状況を説明してくれた。

ルチアと他二人は昨日からここに連れてこられたそうだ。

その時には先に一人の女性がいたのだが、その人は意識が朦朧としているようでとても話せるような状態ではなかった。

出されたであろう食事が食べかけであった事、男達がその女性を連れ出した時に薬が効いたようだと話していたことから、自分たちはここで出された食事には手をつけていないと言う事だ。

麻薬の取引もしているようなので食事に手をつけなかった事はいい判断だ。

「そうだ! 私食べ物を持っているわ」

私は服の下に隠し持っていた魔法バッグからサンドイッチを取り出して皆んなに分けた。

さらにからのコップを出して水魔法で水を出す。

ごくごくと水を飲む三人は相当喉が渇いていたようで、更に水を追加した。

「ああ、本当に美味しい。こういうのは不謹慎なんだろうけど、あなたが来てくれて助かったわ」

一人の女性が言った。

「いえ。お役に立ててよかったです」

しばらくすると、私と運ばれた眠らされていた女性達も目を覚ました。

状況を説明すると彼女達は泣き出した。

すすり声が響き渡る中、三人の男がやってきた。

二人は騎士団の制服を着ており、一人は街のごろつきのようだ。

「どうだ? 新しい女達は? 俺様が直々に売り物になるか吟味してやろう」

ニヤニヤ笑いが気持ち悪い。

金髪のつり目の男だ。

「ちょっと! 騎士団がこんなことして、ただで済むと思ってるの?」

ルチアが怒鳴ると男は更に笑みを深めた。

「ああ、思ってるよ。どうせ売られるお前らに教えてやるよ。俺の父親は地位がある方だからな。俺は選ばれた人間なんだ。だから何をしたって許される」

なんですって?

それが本当ならこの国は一体どうなってしまうのか。

「私達は一体どうなるの?」

運ばれた女性の一人が震える声で尋ねた。

「隣国の貴族に向けた奴隷としてオークションで売るんだよ。運が良ければ可愛がってもらえるぜ」

「そんな! この国で奴隷は禁止されているはず」

「馬鹿だなお前。だから隣国で売るのさ」

そういうと男は近づいてきて一人一人の顔をランプの灯りで照らした。

私の番だ。レオニス様の家政婦だとバレませんように。

「お前……」

私の顎を掴んでランプを顔に寄せる。

バレたのか……。

「ふうん、髪と瞳の色は地味だがなかなか顔立ちは整ってるな。なんなら俺の奴隷にしてもいいぞ」

気持ち悪い視線にゾワっと鳥肌が立つ。

「マルフォン様。女が足りてないので今は我慢してください」

もう一人の言葉にマルフォンと言われた騎士がもう一人の騎士を殴りつける。

「お前! 何俺の名前を言ってるんだ! ふざけるな」

こいつが騎士団副団長のマルフォンだったとは。

「戻るぞ!」

「申し訳ありません……」

マルフォンはもう一人の騎士の失言のおかげでなんとか戻って行った。

それにしてもここは一体どこなんだろう。

モーリスはレオニス様に伝えてくれているだろうか。

家で待ってろと言われたのに、レオニス様は怒っているに違いない。

魔法師団の計画を台無しにしてしまったかもしれないと思うと今頃罪悪感でいっぱいになる。

「大丈夫、きっとレオニス様が助けてくださるわ」

ルチアの言葉に私は首を横に振る。

「ううん、待ってろって言われたのに。レオニス様の仕事を邪魔してしまった……。家政婦失格だわ」

そんな私にルチアは優しく寄り添ってくれた。

「元はといえば私が意地を張って騎士団に一人で行ったせいよ。今はただ助けを待ちましょう」
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