27 / 47
モンターニュ侯爵と騎士団③
荷馬車にしばらく揺られると、やっと目的地に着いたようだ。
馬車が止まると私は急いで麻袋に入り、すでに寝かされてきる麻袋の横に同じように並んだ。
御者をしていた老人が降りる気配がして、程なく男の声がした。
「今回は二人と聞いていたが、三人に増えたんだな。待ってろ、追加の金を取ってくる」
男がお金を取りに戻った気配がして、老人の呟きが聞こえた。
「今回は二人だったと思ったが、三人だったか? まあ金が増える分にはいいか」
それを聞いて私は自分がどれだけ危険な事をしているか、ゾッとした。
しかしもう後には引けない。
「ほら三人分の運び代だ。わかってるとは思うが命が惜しければ余計な事は言うんじゃないぞ」
「へい。わかっておりますよ」
男は他に二人連れてきており、私たちは麻袋に入れられたまま担がれたようだ。
乱暴な担ぎ方に思わず声が漏れそうになったがなんとか抑えられた。
「おい、大事な商品に傷がついたら困るから丁寧に運べよ」
程なくドサリと床に置かれる音がした。
麻袋を開けられたのか、閉じた瞼の裏が明るくなる。
「おい、お前ら。また飯食ってねえじゃねえか。痩せたら商品価値が下がるんだからちゃんと食え」
私達を床に置いて、男が言った。
「誰がアンタ達の持ってきたもんなんか食べるもんか。早くここから出してよ」
この声は! ルチア!
「待て待て、オークションまでまだ日があるんだ。もう二、三人集めたいと仰っているからな」
がちゃんと何かが閉まる音がして、しばらくすると女性達の話し声がした。
「この子達も騎士団に攫われたのね。かわいそうに」
「なんとかこの状況を気づいてもらえないかしら」
「怖い……。私一体どうなるの?」
もう目を開けてもいいかもしれない。
うっすら目を開けると、心配そうに覗き込むルチアと目があった。
「ティナ? ティナなの? あなたどうしてここに? その髪の色どうしたの?」
動揺しているルチアにまずは落ち着いてと言う。
「ルチアを探しに騎士団の様子を見ていたら成り行きでここにきちゃって……」
ざっくりと状況を説明する。
「ティナ……あなた、レオニス様はティナがここにいることを知ってるの?」
「知らない……。レオニス様は家で待ってるようにって……」
「こんなとこまできちゃって、呆れた……。でも心配してくれた事はありがとう」
そう言ってルチアとすでにいた二人の女性は今の状況を説明してくれた。
ルチアと他二人は昨日からここに連れてこられたそうだ。
その時には先に一人の女性がいたのだが、その人は意識が朦朧としているようでとても話せるような状態ではなかった。
出されたであろう食事が食べかけであった事、男達がその女性を連れ出した時に薬が効いたようだと話していたことから、自分たちはここで出された食事には手をつけていないと言う事だ。
麻薬の取引もしているようなので食事に手をつけなかった事はいい判断だ。
「そうだ! 私食べ物を持っているわ」
私は服の下に隠し持っていた魔法バッグからサンドイッチを取り出して皆んなに分けた。
さらにからのコップを出して水魔法で水を出す。
ごくごくと水を飲む三人は相当喉が渇いていたようで、更に水を追加した。
「ああ、本当に美味しい。こういうのは不謹慎なんだろうけど、あなたが来てくれて助かったわ」
一人の女性が言った。
「いえ。お役に立ててよかったです」
しばらくすると、私と運ばれた眠らされていた女性達も目を覚ました。
状況を説明すると彼女達は泣き出した。
すすり声が響き渡る中、三人の男がやってきた。
二人は騎士団の制服を着ており、一人は街のごろつきのようだ。
「どうだ? 新しい女達は? 俺様が直々に売り物になるか吟味してやろう」
ニヤニヤ笑いが気持ち悪い。
金髪のつり目の男だ。
「ちょっと! 騎士団がこんなことして、ただで済むと思ってるの?」
ルチアが怒鳴ると男は更に笑みを深めた。
「ああ、思ってるよ。どうせ売られるお前らに教えてやるよ。俺の父親は地位がある方だからな。俺は選ばれた人間なんだ。だから何をしたって許される」
なんですって?
それが本当ならこの国は一体どうなってしまうのか。
「私達は一体どうなるの?」
運ばれた女性の一人が震える声で尋ねた。
「隣国の貴族に向けた奴隷としてオークションで売るんだよ。運が良ければ可愛がってもらえるぜ」
「そんな! この国で奴隷は禁止されているはず」
「馬鹿だなお前。だから隣国で売るのさ」
そういうと男は近づいてきて一人一人の顔をランプの灯りで照らした。
私の番だ。レオニス様の家政婦だとバレませんように。
「お前……」
私の顎を掴んでランプを顔に寄せる。
バレたのか……。
「ふうん、髪と瞳の色は地味だがなかなか顔立ちは整ってるな。なんなら俺の奴隷にしてもいいぞ」
気持ち悪い視線にゾワっと鳥肌が立つ。
「マルフォン様。女が足りてないので今は我慢してください」
もう一人の言葉にマルフォンと言われた騎士がもう一人の騎士を殴りつける。
「お前! 何俺の名前を言ってるんだ! ふざけるな」
こいつが騎士団副団長のマルフォンだったとは。
「戻るぞ!」
「申し訳ありません……」
マルフォンはもう一人の騎士の失言のおかげでなんとか戻って行った。
それにしてもここは一体どこなんだろう。
モーリスはレオニス様に伝えてくれているだろうか。
家で待ってろと言われたのに、レオニス様は怒っているに違いない。
魔法師団の計画を台無しにしてしまったかもしれないと思うと今頃罪悪感でいっぱいになる。
「大丈夫、きっとレオニス様が助けてくださるわ」
ルチアの言葉に私は首を横に振る。
「ううん、待ってろって言われたのに。レオニス様の仕事を邪魔してしまった……。家政婦失格だわ」
そんな私にルチアは優しく寄り添ってくれた。
「元はといえば私が意地を張って騎士団に一人で行ったせいよ。今はただ助けを待ちましょう」
馬車が止まると私は急いで麻袋に入り、すでに寝かされてきる麻袋の横に同じように並んだ。
御者をしていた老人が降りる気配がして、程なく男の声がした。
「今回は二人と聞いていたが、三人に増えたんだな。待ってろ、追加の金を取ってくる」
男がお金を取りに戻った気配がして、老人の呟きが聞こえた。
「今回は二人だったと思ったが、三人だったか? まあ金が増える分にはいいか」
それを聞いて私は自分がどれだけ危険な事をしているか、ゾッとした。
しかしもう後には引けない。
「ほら三人分の運び代だ。わかってるとは思うが命が惜しければ余計な事は言うんじゃないぞ」
「へい。わかっておりますよ」
男は他に二人連れてきており、私たちは麻袋に入れられたまま担がれたようだ。
乱暴な担ぎ方に思わず声が漏れそうになったがなんとか抑えられた。
「おい、大事な商品に傷がついたら困るから丁寧に運べよ」
程なくドサリと床に置かれる音がした。
麻袋を開けられたのか、閉じた瞼の裏が明るくなる。
「おい、お前ら。また飯食ってねえじゃねえか。痩せたら商品価値が下がるんだからちゃんと食え」
私達を床に置いて、男が言った。
「誰がアンタ達の持ってきたもんなんか食べるもんか。早くここから出してよ」
この声は! ルチア!
「待て待て、オークションまでまだ日があるんだ。もう二、三人集めたいと仰っているからな」
がちゃんと何かが閉まる音がして、しばらくすると女性達の話し声がした。
「この子達も騎士団に攫われたのね。かわいそうに」
「なんとかこの状況を気づいてもらえないかしら」
「怖い……。私一体どうなるの?」
もう目を開けてもいいかもしれない。
うっすら目を開けると、心配そうに覗き込むルチアと目があった。
「ティナ? ティナなの? あなたどうしてここに? その髪の色どうしたの?」
動揺しているルチアにまずは落ち着いてと言う。
「ルチアを探しに騎士団の様子を見ていたら成り行きでここにきちゃって……」
ざっくりと状況を説明する。
「ティナ……あなた、レオニス様はティナがここにいることを知ってるの?」
「知らない……。レオニス様は家で待ってるようにって……」
「こんなとこまできちゃって、呆れた……。でも心配してくれた事はありがとう」
そう言ってルチアとすでにいた二人の女性は今の状況を説明してくれた。
ルチアと他二人は昨日からここに連れてこられたそうだ。
その時には先に一人の女性がいたのだが、その人は意識が朦朧としているようでとても話せるような状態ではなかった。
出されたであろう食事が食べかけであった事、男達がその女性を連れ出した時に薬が効いたようだと話していたことから、自分たちはここで出された食事には手をつけていないと言う事だ。
麻薬の取引もしているようなので食事に手をつけなかった事はいい判断だ。
「そうだ! 私食べ物を持っているわ」
私は服の下に隠し持っていた魔法バッグからサンドイッチを取り出して皆んなに分けた。
さらにからのコップを出して水魔法で水を出す。
ごくごくと水を飲む三人は相当喉が渇いていたようで、更に水を追加した。
「ああ、本当に美味しい。こういうのは不謹慎なんだろうけど、あなたが来てくれて助かったわ」
一人の女性が言った。
「いえ。お役に立ててよかったです」
しばらくすると、私と運ばれた眠らされていた女性達も目を覚ました。
状況を説明すると彼女達は泣き出した。
すすり声が響き渡る中、三人の男がやってきた。
二人は騎士団の制服を着ており、一人は街のごろつきのようだ。
「どうだ? 新しい女達は? 俺様が直々に売り物になるか吟味してやろう」
ニヤニヤ笑いが気持ち悪い。
金髪のつり目の男だ。
「ちょっと! 騎士団がこんなことして、ただで済むと思ってるの?」
ルチアが怒鳴ると男は更に笑みを深めた。
「ああ、思ってるよ。どうせ売られるお前らに教えてやるよ。俺の父親は地位がある方だからな。俺は選ばれた人間なんだ。だから何をしたって許される」
なんですって?
それが本当ならこの国は一体どうなってしまうのか。
「私達は一体どうなるの?」
運ばれた女性の一人が震える声で尋ねた。
「隣国の貴族に向けた奴隷としてオークションで売るんだよ。運が良ければ可愛がってもらえるぜ」
「そんな! この国で奴隷は禁止されているはず」
「馬鹿だなお前。だから隣国で売るのさ」
そういうと男は近づいてきて一人一人の顔をランプの灯りで照らした。
私の番だ。レオニス様の家政婦だとバレませんように。
「お前……」
私の顎を掴んでランプを顔に寄せる。
バレたのか……。
「ふうん、髪と瞳の色は地味だがなかなか顔立ちは整ってるな。なんなら俺の奴隷にしてもいいぞ」
気持ち悪い視線にゾワっと鳥肌が立つ。
「マルフォン様。女が足りてないので今は我慢してください」
もう一人の言葉にマルフォンと言われた騎士がもう一人の騎士を殴りつける。
「お前! 何俺の名前を言ってるんだ! ふざけるな」
こいつが騎士団副団長のマルフォンだったとは。
「戻るぞ!」
「申し訳ありません……」
マルフォンはもう一人の騎士の失言のおかげでなんとか戻って行った。
それにしてもここは一体どこなんだろう。
モーリスはレオニス様に伝えてくれているだろうか。
家で待ってろと言われたのに、レオニス様は怒っているに違いない。
魔法師団の計画を台無しにしてしまったかもしれないと思うと今頃罪悪感でいっぱいになる。
「大丈夫、きっとレオニス様が助けてくださるわ」
ルチアの言葉に私は首を横に振る。
「ううん、待ってろって言われたのに。レオニス様の仕事を邪魔してしまった……。家政婦失格だわ」
そんな私にルチアは優しく寄り添ってくれた。
「元はといえば私が意地を張って騎士団に一人で行ったせいよ。今はただ助けを待ちましょう」
あなたにおすすめの小説
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~
柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。
そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。
クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。
さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。