俺の可愛い皇帝陛下〜けしからんモフらせろ!〜

えの

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もふもふは病んでいない

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俺の胸で眠る小さな存在。そっと腕をまわして抱き締める。やさしく、やさしく抱き締める。小さな寝息が聞こえる。




「レイ、愛している。どうしようもなく、お前を愛してる」





起きている時には伝えられなかった言葉を囁く。好きだと心の中では言えるのに、口に出して想いを伝えることが出来ない。もどかしい。思い通りにならない自分が自分で恨めしい。












あの狸オヤジのヨルムのやつ。父上が皇帝の時には、黒い噂があったものの、大人しくしていた。しかし、俺が皇帝に即位した途端に本性を現した。アイツは獣姿の獣人を徹底的に蔑むレイシストだ。人身売買、強制労働、挙げ出したらきりがないが…中々しっぽを掴ませない。以前、人身売買の取引現場を現行犯で捕まえたのだが、ヨルムに繋がる証拠は見つからなかった。






アデルと話をしている姿を見て眼光が鋭くなる。相手にしないように足を早めたが、最悪なことに捕まってしまった。忌々しいハゲ狸が!!ニタニタと音がしそうな顔でレイの事を話す。お前ごときが俺のレイの名前を呼ぶな。穢れてしまう。いつもは嫌味を言われても気にしないが、レイの事となると別だ。適当に切り上げ部屋に入り、いつも通り椅子に座る。


本当に最悪だ。ヨルムの話を真に受けるつもりは無いのに気落ちする。先程までの胸の高揚が嘘のようだ。暗い、暗い。俺の心は灯りのない闇夜のように染まってゆく。ダメだ。抑えの効かない感情が込み上げてくる。レイを閉じ込めて、誰にも見せたくない。ダメだ。ダメだ。ダメだ!!どうして俺はこんなにも弱い…。レイに会うのはしばらく控えよう。何をするか自分で分からない。




何も考えたくなくて無心に執務をこなす。






コトッ、ティーカップが机に置かれた。レイから良く漂ってくる香りと一緒だ。





「気持ちは察するが、休憩ぐらいはした方がいい」






「……」






「くくっ…泣く子も黙る皇帝が、恋をするとここまでダメになるとは。レイ様は本当に面白い」








「黙れアデル。お前が狸オヤジとあんな所で話し込んでいるから…!!」








「俺が悪いと?冗談!!俺だって好きで話すか!!仕事だよ。絶対にアイツは動く。お前の婚儀程に楽しいイベントはないだろう?」





「レイに何かしたら生き地獄を見せてやる。生まれてきた事を後悔すればいい」





「おー怖い怖い。ヤンデレも程々にな」




「ヤンデレ…?普通の事だ。お前も知っているだろう。番への執着を」






「はいはい」






ヤンデレ?俺の愛が重いのは承知しているが、決して病んでいる訳ではない。








夜も、そして次の朝も食事を断る。昨日と同様に同じ事を淡々とこなす。そんな時、レイからお茶会の誘いがきた。悩んだ末、現状打破出来るかもしれないと、一抹の希望を抱き了承した。









遠目から見てもレイは美しかった。テラスに射し込む光でキラキラと輝いている。天使だ。地上に紛れ込んだ天使に違いない。珍しく柄にでもない事を考えてしまう。


俺を気遣ってくれているのに、素っ気ない返ししか出来ない。目が見れない。すると、突然レイが席を立つ。やはり愛想をつかされたか…しかし、俺の予想とは反し、レイは俺に触れてきた。視線が合う、紡がれる愛しい言葉に、昨日感じた以上に胸が高鳴る。


白く、折れてしまいそうな腕で俺の頭を抱き締める。あぁ俺がレイから感じた想いは間違いない。俺も好きだ。伝えたくて同じように腕をまわし、細い体を抱き締める。レイの心音が心地よい。俺の頭に擦り寄るレイに、愛しい想いが溢れ、もっと、もっとと求めるように強く抱く。想いが重すぎた…やってしまった…腕の中のレイが糸の切れた人形みたいに崩れる。俺が人生で一番焦った瞬間だった。






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