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もふもふはナイト
しおりを挟む「クロノ」
名前を呼ぶと、部屋の中でウロウロと忙しなく歩き回っていた足が止まる。
「…」
えっ?まさかの無言?!俺の格好おかしい?いや、おかしくないよね?!みんな綺麗だって言ってくれたし…まさかクロノたんの好みじゃないとか?!しまったー!!好みの色とか聞いとけば良かった!!
「クロノ…」
あぁ不安が声に伝わってしまった…。クロノたんは無言で俺の傍までくると、いきなり片膝をつき、そして片方の手を自分の右胸にかかげた。背筋をピンと伸ばし、堂々としていて格好良い…。
「レイ」
クロノたんが俺の手を取り、目をしっかりと見つめる。
「愛している。どんな事からもお前を守ると誓う。お前は俺の全てだ」
嬉しい、興奮、様々な感情に一瞬にして支配される。こんな…こんな、素敵なプロポーズされるなんて聞いてない!!引っ込めたはずの涙が出てくる。ヤバイ視界がボヤける…クロノたんの姿を目に焼き付けたいのに…。
「はい…。私の生涯をかけて、クロノをお慕い申し上げます」
バルコニーまで、クロノたんがエスコートしてくれる。外からは、鳴り止まない歓声と音楽が聴こえている。緊張するー!!!!!エスコートされている手に力が入る。ふっ、頭上から笑い声がする。見上げたと同時に肩を抱かれた。えぇー?!はっ恥ずかしいんですけどー!!!!!無情にもバルコニーが開く…ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇ────!!!!!
この日から数日間、ハーデ帝国は二人の婚儀を祝い、お祭り騒ぎが続いた。
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢
バフッ。
つっ疲れたー!!!!!お腹空いたー!!!!!疲れたー!!!!!お腹空いたー!!!!!もう限界……。
「レイ様、はしたないです」
「疲れました。お腹が空きすぎて倒れます」
「すぐに用意しますのでお待ちください」
何故俺がこんなにもお腹が空いているか…それは出された料理のせいだ!!!!!国民へのお披露目が終わり、次は招待客とのお食事。ひっきりなしに挨拶にくる。いくら笑顔継続時間が延びたからって無理。限界がある。
おまけに全然お料理が楽しめない。しかし、料理長には、悪いが手をつけたくない。何故かクロノたんにも絶対に食べるなと言われた。言われなくても食べないよ…だって…だって…あのドロドロのオリーブオイルがかかってるんだよー!!あれ?俺言ったよね?偽物ですよって?本物渡したよね?!めっちゃ聞きたい…でも次々とお祝いの言葉を述べてくれるから、クロノたんに聞けるタイミングがない。
「こんな美しい方を娶られるとは、さすが陛下ですな!欲しい物はどんな手を使っても手に入れる手腕!!いや~お見逸れ致します!!」
一際大きな声に、わざとらしいジェスチャー…。それに言葉に嫌味がこもってる…。料理とにらめっこしていた顔を声の主に向ける。なんだとっ…?!ハゲてるだと?!ザビエルじゃないか!!!!!俺、初めて見た。ハゲにもふもふの耳の破壊力!!!!!視界の暴力だ…。一体何があったんだ?髪は家出中ですか?長期家出中ですか?まじマジと見つめてしまう…
「いや~実に美しい。あなたの様な美しい人は見た事がない!!是非とも親しくして頂きたいですな」
「ヨルム。その様な発言は控えて頂きたい」
「おぉー!これは失礼致しました。こんな場で本当の事を言うもんではありませんな。しかし美しい…」
「あっ、ありがとうございます」
「料理は進んでおりますかな?料理長が腕によりをかけたと自慢していましたよ!!」
「えっ、えぇ。とても美味しいです…」
もしかしてオリーブオイルの偽物掴まされた人?すみません!!せっかく用意してもらったけど、食べる気にはなれません!!あとでお詫びしよう…。
「では私はこれで」
役目は終わったとばかりにヨルムさんは去っていった。後ろ姿のヨルムさんを見詰める。主に頭を…いや~ほんと不思議だ。後ろはまだ少し残ってるんだな髪の毛。世の中には色々な人がいるもんだ。
はぁ────。お腹空いた────!!!!!誰か俺に食べ物を!!!!!
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