俺の可愛い皇帝陛下〜けしからんモフらせろ!〜

えの

文字の大きさ
43 / 48

もふもふは波乱万丈《番外編》

しおりを挟む

レイの事は信用している。不貞など疑ってなどいない。なのにレイの発言を聞いて自信が揺らぐ。つい思ってもない、疑うような言葉をぶつけてしまった。



案の定、怒りを露わにするレイ…。静かに怒っている。厳しい顔つき。非難するような目。凛とした態度。俺の前でだけ見せる甘い雰囲気は全くない。



だがその態度が余計に俺の心を揺さぶる。ダメだ…抑えきれない嫉妬心がむくむくと育っていく…。ここに居てはダメだ。レイに酷い事をしてしまうかもしれない。閉じ込めて、誰にも見せないように…繋いで…。レイと出会った頃の黒い感情が顔を出す。


背筋をピンと伸ばし、背を向けて立つレイ。ただ、立っているだけなのに、美しさが伝わってくる。だが、いつもの様に被さり抱きしめ押し倒す事は叶わない。力を込め作った握り拳が震える。グルッっと抑えきれない感情を唸り声で流す。



同じ空間に居てはダメだ。様々な感情が入り交じる。足早にレイの部屋を出た。感情を薙ぎ払うかのように扉を勢い良く閉める。自分の執務室までの足取りが重い。行きたくない…きっとあいつが待っている…。ところ構わずついてきて…鬱陶しい。だが、邪険に扱うわけにもいかない。今日は最悪の一日になりそうだ。




▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ 




やってしまった…。どうして俺は感情が先走るんだ…。レイの事となるとダメだ…。



ゼダがどうしてもレイとお茶会をしたいと言うので渋々了承した。俺もレイに謝る機会が欲しかったからだ。レイがお茶会をしているであろうテラスに足を運ぶ。微笑みを携え、俺の三歩程後ろを付いて歩くゼダ。はたから見れば、側室として申し分ない態度だ。だが、俺は騙されない。絶対に何か企みがあるはずだ。悶々としながらテラスに着いた時、俺の目に信じられない光景が飛び込んできた。




レイが…レイが泣いている…涙を流しているだと?!俺でさえ数える程しか見た事ない貴重な泣き顔を…惜しみなくデールに…。頭は氷のように冷たく冴え、喉には焼けるほどの何かが下から押し上げてくる。激しい嫉妬の炎が心の中で爆発する。もう我慢出来ない。



目を見開き、驚愕の眼差しで俺を見るデールの胸ぐらを掴む。そのまま投げ飛ばしてしまいたい衝動を堪え、思った以上に出た冷ややかな声でデールを問い詰める。しかし、デールが答える前に追求は愛しい人の声と腕で遮られた。



何故だ?!何故庇う?!泣いてはいるが声は穏やかだ。しかし厳しい物言い。泣きながらも強さを感じさせる美しい表情。束の間だが怒りも忘れ見惚れてしまう程だ。レイ…何故なんだ…。従者に抱えられ去って行く姿をただ為す術もなく見送る。ゼダも今日はお茶会は出来そうにありませねと部屋に戻って行った。


はぁー。俺は何をしているんだろうな…。


「陛下…失礼ですが…話を聞いて貰えますか?」


デールが遠慮がちに話しかけてくる。あぁ、先程の非礼を詫びなくてはな…


「デール…上に立つ者としてあるまじき行為をした。許せ…」


「とんでもありません。ですが、陛下が疑うような事は何もしておりません…。少しだけ…私に最近出来た茶飲み友達の話をしましょう…」


そう言ってデールは茶飲み友達の恋の話を始めた。最近現れた恋敵、だが選ぶ相手を決めるのは自分ではない事。想い人には幸せになって欲しい事。でも本当は自分がその人の一番でありたい。揺れる心。些細な事からのすれ違い。意地を張った事を後悔しているなど…。


それは…。まるで…。くっそ!!俺は馬鹿な事をした。本当にレイの事となると俺は空回りしてしまう…。


「すまないデール。少し行くところが出来た」


椅子が倒れそうな勢いで立ち上がる。



レイ…すまない。不安にさせた。こんなにも想っていてくれているのに…。当たり前過ぎで気付かなかった。許してくれ。


足早にレイの部屋に向かう。まだ泣いているだろうか?俺がその涙を舐めとってやる。もう二度と悲しい思いはさせない。心が急ぎノックをする行為さえも時間が惜しい。



ガチャガチャ


おかしい…鍵が掛かっている。


ガチャガチャ


何度かドアノブをいじると、ボトッっと音を立ててドアノブが床に落ち壊れた。しまった…。力を込めすぎたか…。そっと手で扉を軽く押す。レイ?何処だ?なんだか嫌な胸騒ぎがする。なんだ…。不安が押し寄せてくる。


部屋の中にゆっくりと歩みを進めると、壁際に手足を縛られぐったりとした従者の姿が見えた。体中が氷の様に冷えていく。


「んっ…ぁッ…」


間違いなくレイの声。行為を思わせるような耐えるような喘ぎ。体だけではなく血も凍りそうな程の寒さが体を走る。そして俺はベッドに近づき信じられない光景を目の当たりにした。





しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

処理中です...