猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…

えの

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いつもと変わらない朝の目覚め。いつも通り顔を洗い、朝ごはんの支度をし、窓を開けて朝の空気をめいいっぱい肺に吸い込む。新鮮な空気美味しー!!これが俺の朝の日課。たが今日は少し違う。窓を開けた向こうに見える景色がいつもと違うのだ。


あれ?湖?昨日まであったっけ…?信じられなくて窓の外の景色に目が釘付けになる。何度瞬きしても変わることの無い景色。そっと窓を閉めお湯を沸かす。落ち着け…とりあえず朝ごはんを食べる事が先決だ。


もぐもぐと口を動かし、ジャムをたっぷり塗ったパンを口いっぱいに頬張り、頬っぺの膨らみを少しずつ減らしながら考える…。昨日まで住んでいた森と違う事は間違いない。でもこの家は今まで住んでいた俺の家だ。


森が違う…そうなんだ。森違いなんだ!!俺は元々、森の中に家を建て住んでいた。街に行く事もほとんどない。俺が人目を避けているからだ。なんせ俺の外見は麗しいからな。おまけに猫獣人だし…。貴重な猫獣人は人気がある。男でも女でも妊娠可能だし。



だが俺は男だ!!見た目が華奢なだけで男ばかり寄ってくる。俺だって女の子にモテたい!!しかし、いくら頑張ろうと身につかない筋肉。女の子にアピールしても自分より顔の可愛い人は御免なさい…お友達で…と言われる始末…くっそー!!俺だって恋がしたい!!



はぁー。何だっていいや。どうせ森の中なんだし今まで通り過ごせば問題ない。誰に会うこともないし、話す事だってない。最後の一口を詰め込み、考えることを放棄し、紅茶と一緒に流し込む。



いつもと変わらない日常を過ごす。お腹すいたな…そろそろパンもなくなる…買いに行かないとダメだ…。果物も森に取りに行かないとダメだし…。でもな…外に一歩を踏み出す勇気が湧かない。ドアの前でしり込みをしていると、ススッ…ススッっと何処かで啜り泣く声が聞こえてきた。


えっ?!この森って意外と人が入ってくるのか?!それは困るんですけど…。とりあえず泣き声の元を探すべく外に足を踏み出した。足音を立てないように地面をそっと優しく歩く。耳をピコピコ動かし、泣き声の方向に足を進める。



見つけた!!


サッと素早く体を茂みに隠し様子を窺う。顔は見えないけど…見た感じ子供か?湖のほとりにちょこんと座り三角座りをしている。暫く同じ体勢で観察していたが、全然動く気配がない…。大丈夫か…?もう少し近くに寄ろうとした時、子供が湖に足を入れた。


ヤバイ!!まさか…命を断つつもりじゃ?!茂みから急いで飛び出し子供に向かってタックルをかます。馬乗りになり子供を見下ろす形になった。


「おい!!何を考えてる?!死ぬな!!もっと自分を大切にしろ!!」


怒鳴る俺を見て目をまん丸に見開き固る子供。やべぇ…ちょっと強く言い過ぎたかな…。無言で見つめ続ける子供。気まづい…耳がぺしゃんこになり、しっぽもくるんと丸まってしまう。子供がゆっくりと起き上がり顔が近くなる。穴が空くほど見つめられ、増々俺は居心地が悪くなった。


「ねこがみ様…?」


子供が更に顔を近づけ首を傾げ聞いてくる。はっ?神だと?!馬鹿言え!!俺は獣人だ!!奉るな!!


「違う。神じゃない。断じて違う。それよりお前!!今何をしてたんだ?!」


騙されないぞ!!お前は今とんでもない事をしようとしていたな!!ぷいと顔を背け近すぎる子供の顔から自分の顔を遠ざける。こいつ綺麗な顔しやがって…子供の癖に整いすぎだろ!!子供は暫く無言で俯いていたがポツリポツリと言葉少なげに、教えてくれた。


「僕はね、嫌な事があってね…湖を眺めてたの…」


ちらりと顔色を窺うと何とも泣きそうな顔をしている。もう一度、子供を上から下までじっくりと眺める。シンプルなデザインの服だが、見た目だけでも上質とわかる生地。間違いなく良いところの坊ちゃんだな。ここら辺に別荘でもあんのか?付き人は何処だ?拙い話し方からして四、五歳ってところか?おまけに…耳としっぽがないだとぉ────?!


「お前…耳としっぽは…その…どうしたんだよ…」


まさか切られたとか言わないよな?!そんな残酷な事…自分で聞いておきながら返事を聞きたくないと目を固く瞑る。


「えっ、あっ、その…みんな無いよ?人間だもの。ねこがみ様はここに住んでるの?」



へっ?みんな無いだと?!予想を上回る答えに驚愕する。


「神じゃない。ミルルだ。人間とはなんだ?」


しっぽで無意識にバシバシと子供の足を叩き答えを催促してしまう。


「人間はね、ミルルと違って、可愛い耳もしっぽもない人の事だよ?僕はエール!!よろしくね!!」


先程までの悲しい顔とは打って変わって、楽しそうに笑顔で手を差し出してくる。これが俺とエールの初めての出会いだ。


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