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しおりを挟む俺は今、前にエール、後ろにデュオという絶対逃げられない構図で再び元いた部屋に連行されている。
もはや逃亡など罪を重ねる事はせず大人しくついて行く。2人が終始無言で威圧放ってるのも怖い。何よりもエールの独り言が怖い。アイツって誰だよ、から始まり、いつの間に?ずっと一緒に居たはずなのに、とブツブツと呪文のように同じ言葉を繰り返している。
アイツ(ベッド)でお前も一緒に寝てたじゃないか!!と言いたい。素晴らしい寝心地だったろ?と問いたい。
バンッ!!
扉を勢い良く開け大股気味に歩くエール。ヨロヨロと後を着いて行くと、ソファに座ったエールが無言でポンポンと自分の隣を叩く。座れってことか…。
フカフカすぎるソファに遠慮がちに腰を下ろす。王族と一緒のソファに座っても良いのだろうか?不安になり、傍に立つしかめっ面のデュオを見上げる。デュオ、俺座っても大丈夫?罪状増やさない?こればっかりは不可抗力だよ…。沢山の思いを込め、デュオ、と小さく名前を呼ぶ。そして呼んだ後に気づく。王様を呼び捨てって不敬罪なんじゃ…。ヤバイ!!失言を隠すように口を手で覆う。
「はぁ、ミルル…。本当に君は…」
デュオは少し目を見開いたあと、いつも通りの優しい笑顔で、俺の前に膝を着き、そっと俺の手を取った。
「すまないミルル。私は嫉妬でどうかしていた。アイツとは余程ミルルに強く想われているんだね…羨ましいよ…私なんか怖がらせてしまって…私がアイツとやらに勝っている所はあるだろうか?」
笑っているのに悲しそうな瞳。何故アイツ(ベッド)にそこまで拘る?全然デュオの思考が読めん!空いている片手で安定剤のしっぽを抱き込む。俺なりに考察してみよう。何故態度が豹変したのか?俺がベッドの話しを始めたからだ。ベッド…嫉妬…つまりは…そうゆうことなのだろうか?デュオは同士?ベッドが変わると寝れない体質。俺の素晴らしいベッドに嫉妬。そうか!!なんだお前もなのか!!
「デュオ…様ッ、は…」
「ミルル…。様付けはよしてくれ。心の距離を感じてしまうよ。いつも通り接して欲しい」
「あっ、えっ、デュオがそう言うなら…」
「ありがとう」
気持ちを汲んでくれて嬉しいと、添える手に力が籠った。会話の続きを促しているのだろう。
「あぁーあのさ、まぁ、アイツ(ベッド)は素晴らしいよ?凄く良い。絶妙な硬さで体にも負荷少ないし正直言って最高だと思う。でもさ、お前のヤツ(ベッド)も凄いんだろ?」
話している途中、曇り顔になっていたデュオだが、最後の質問で顔を少し赤らめ出した。なんだ…?確かに寝室に誰かを入れるの抵抗あるけど、恥ずかしがる要素がどこに…。
「なぁ、お前のヤツ(ベッド)を見せてくれよ。俺、めちゃくちゃ硬いのが好き。デュオは好みある?」
初めて出会った同士に俺の心は躍る。語り合いたい。より良い睡眠を手に入れる為の情報が欲しい。俺は少しでも柔らかいと腰痛になるのだ。ベッド選びは非常に難しい。安い買い物じゃないし、そんな次々変えれないからな。
「んんっ、好みと聞かれるとミルルだ。だが、硬いのが好き…私の硬さを確かめたいと…そんな…どこでそんな誘い方を…。ミルル、嬉しいがこういった話はベットで語らうものだよ」
口調は困ったような言い草だが、デュオの顔は耐えきれなかった笑みが口角に浮かんでいる。まぁ、ベッドの話はベッドの上で語らうっても一理あるよな。ベッドを購入する時は寝心地、硬さ、サイズ、実際に寝転んで確かめるのが一番!!俺は広い大きなベッドが好き。シングルとか寝返り打ったら落ちそうだしな。デュオのベッドはさぞかし大きいのだろう。期待が膨らむ。
「そうだよな。今度ベッドで語らおうぜ。楽しみにしてる。王様なんだし、やっぱりサイズもデカいんだろ?もしかしてキングサイズ?俺、大きいの好きだから」
そう言って満面の笑みでベッドの好みを伝えた。
ポタッ、ポタッ、
滴り落ちる赤い液体。デュオの手の甲を赤く染めていく。綺麗な顔から鼻血が出ているが、全く気に止めていなのか、はたまた気づいていないのか、デュオは独り自分の世界に入り込んでしまった。
「私は何を試されているのだ。自制心か?欲望か?あぁ、猫神様。何故あなたはこのような試練をお与えに…」
「あぁ、確かに私のサイズは自慢出来る。キングサイズだ。ミルルにも気に入って貰えるだろうが…事には順序というものがだな…」
俺のお耳に届く内容はこんな感じ。寝室に入れたくないなら断ればいいだろ。そんなに心の葛藤を口に出さなくても…。デュオに手を固定されているので、横目でエールの様子を窺う。そして直ぐに鼻血を垂らすデュオに視線を戻す。
えッ、何あのエールの虫けらでも見るような目は。低音ボイスにも驚いたけど、そんな顔も出来るんだな。先程までの親子の微笑ましい会話の風景を思い出し背筋が凍りつく。
人間の親子とは実に奥深いものだ。
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