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俺、解せぬ
しおりを挟むなんてこった…この世界には獣人しかいないだと…おまけに男しかいない…。いや、ゲーム設定だとしてもよ…そうか…俺の童貞卒業の夢は消え去ったな。いいよ、いいよ、どうせ現実世界でも玄人のお世話になるだけだしさ…。はぁー。
俺は…俺は冒険に生きる!!まずはこの世界で俺の魔法がどの程度使えるのか、威力はゲームと同じか、色々と試したいことがある!!あと、魔物についても調べたいし…ギルド…やる事が多すぎてワクワクするー!!善は急げだ!!
「騎士団に所属していると言っていましたが
…見学は出来ますか?今から…」
これ我儘じゃないよね?!大丈夫だよね?!遠慮がちに目を伏せ質問をしてみる。
「…」
「…」
切なそうな、何かを訴えるような目で俺を見る二人。何を思っているか知らんが…そんな目でみるな!!確かに俺の体は貧相よ。でもエルフなのよ!!ハイエルフ!!このままでは見学に行って、強さの基準を確かめる目的が果たせない…。どうすれば…頭をフル回転させ考える。
そうか!!おだて作戦だ!!褒めて褒めて褒めまくる!!男たるもの褒められれば気が良くなるものだ!!
「二人とも強そう…です…剣を振るっている姿を…見てみたいです…カッコイイと…思います…」
大丈夫かな…?褒めれたかな?慣れてなくて詰まったけど。心配になって最後の方、声が小さくなっちゃった…。二人を穴が空くほど見詰める。
おかしい…二人して俯き小刻みに震えてる。これは…どっちだ?!
「えぇ、えぇ!!行きましょう!!」
「今すぐにでもご案内致します!!」
二人の目が褒められて嬉しくて堪らないと輝いている。やっぱり男は褒められるとチョロいな…。悲しい生き物だわ。
しかし、いただきましたよ!オッケーです!!気が変わらないうちに行きましょー!!
▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣ ▢ ▣
「誰の許可を得てここに入った」
俺はただ今、絶賛お説教中です…。
容姿が目立つとからとマントのフードを被り、騎士団の詰所に向かう。思っていたよりも部屋から近くて驚いた。これなら、こっそり抜け出して来れそうだ。内緒で魔法の練習とか出来るかも。クルトさんとジンさんが、訓練場で剣技を披露してくれると言うので、一緒に行こうとした時、おい!とドスの効いた声で呼び止められた。
ゆっくりと振り返る。二人よりも更に大きな体に身長。ラスボス感漂う雰囲気…。何者?!
「団長…」
クルトさんとジンさんの声が重なる。えっ…団長ー?!ヤバイ人に見つかってしまった!!大柄な人を再度見る。褐色の肌に野性的で魅力的な顔立ち、燃えるような真っ赤な髪…The団長ですね。あなた団長キャラですわ。ほんと…美形しか居ないのね…キモモブとか存在するの?
しかし、どうやってこの場を切り抜けようか…。二人の様にべた褒め作戦で行くか?嫌、無理だな。すでにこの人の発する圧力でぺちゃんこになりそう…。お世辞なんて言えない…。
まてよ、この人に恩を売れば、逃げる時に手助けしてもらえるんじゃ…いや、協力してくれなくても、恩を仇で返すのか?!とか詰めよれば…いける!!これは使えますよ!!
「誰の許可を得てここに入った」
「だっ、団長!!」
「部外者を入れるなど…言語道断だ」
ひぃ!!怖い…恐怖で顔が蒼くなる。怖いけど…二人が怒られちゃう!!震える手をもう片方の手で抑えて、必死に訴える。
「あ、あの…俺が無理を言いました…二人は…」
「お前には聞いていない」
一刀両断です。恐ろしいです。今にも拳が飛んできそう!!ダメだ!!勇気を振り絞り、少しほんの少し、えっ今動いた?ぐらい動き、両手を広げる。俺の顔色は蒼いを通り越し白くなっている事でしょう。
「ぼ、ぼ、暴力は反対です…」
俺の足は産まれたての子鹿のように震えてるが、マントのおかげでバレてはいないだろう!!両腕の震えに関しては隠しようがない。獲物を前にした猛獣みたいな目で俺を見据える団長様…。
怖い!!顔が…だって…美丈夫だけど…左の額から頬にかけて傷がある…そのせいか片目も見えなさそうだし…魔物につけられたのかな?そんな厳つい顔で凄まれてみろ!!ちびる…。
あっ、そうだ。この怖さを倍増している顔の傷を消せばいいんだ!!ついでに、魔法の威力も試せるし一石二鳥じゃないか!!
「ヒール」
横に広げていた腕を、自分の頭より高く上にあげ、小さく詠唱する。団長様の顔が光に包まれ、そして次第に光は収束していく。どう?どうよ?
「なっ、何をする!!」
いきなりの事に団長様が叫ぶ。やっぱ無理。怖い。急いで二人の後ろに身を隠す。
「えっ?…視界が…」
「だっ、団長?!」
「かっ、顔がッ!!」
おっ、成功ですか?二人の間からチラッと覗き見る。うーん。どうして俺を殺さんばかりの目で見ているのでしょう…。解せぬ。
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