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しおりを挟む最悪だ。本人ならさっさと本人発表してくれよ…。エロいってバレたじゃん、淫乱だと思われちゃったかも…。いや否定はしないけどさ。つーかさ、さっき好きが限界突破してるって言わなかったか?あれは俺がガイの寝ている時に…まさか?!…あの痴態を気付かれていた…。なんと言う事だ!!どんどん顔から血の気が引くのがわかる。
「あぁ…痛たた…急に頭が…俺、記憶喪失なっちゃったかも~」
なんとも表現力が乏しく棒読みになってしまったが構わん!!この場を凌ぐ為だ!!両手を頭に添え軽く振り、下手なくそな演技をしているとドスッと音と共にガイの両腕が顔の真横に…。ベッドドンだ…。俺の顔以外みるなと言う様な態度に胸がキュンとした。俺のガイが素敵過ぎて困る。まぁ、まだ!!俺のじゃないですけど…。まだね。
「記憶喪失かぁ~そりゃぁ大変だ…俺が記憶取り戻すの手伝ってやるよ」
「はうっ…」
耳元で囁かれ、全身に歓喜の鳥肌が立つ。耳が溶けちゃいそうなんですけどッ!!どーしよ、ムラムラしてきた。両足をもじもじと擦り合わせ必死に我慢をする。もっとガイの声が聞きたい。気が狂うほどエロい事を囁いて欲しい…。
「ガイ…声が…エロい…」
「あぁ?」
「もっと…もっと耳元で聞かせて」
俺は今どんな顔をしているのだろう。おそらく、うっとりおフェロ顔を披露している事だろう。もうガイにエロい事して貰えたら何でも良い。
「シオン…シオン。そんな色っぽい顔、俺以外見せんなよ」
「んッ…」
くはぁッ!!頂きました俺様独占欲丸出し発言!!ゾクゾクが止まらず身悶える俺。自分で頼んでおきながら、俺の顔は今、真っ赤に染っているに違いない。荒い口調の中に含まれる優しさと甘さ。あー好き。ほんと好き。心臓の限界かもしれん。どうしよ…苦しい…。
「ガイ…助けて…好きすぎて怖い…」
もふもふの首に腕を回し自分の方へぐいと抱き寄せた。自分の感情が自分で分からない。好きな気持ちが膨らみすぎて辛い。ガイは俺と違って人気者だから誰かに取られたらどうしよう、俺のことを本当に好きなんだろうか?不安と嫉妬が俺の中で浮上して心を乱す。
異変に気付いたガイは俺の手を首からはずし、ゆっくりと自分の胸の上に置いた。
「わかるか?俺も同じだ。シオンと居ると余裕がなくなる」
ガイの心臓はうるさいほど高鳴り、俺の手にまで振動が伝わってきた。俺と一緒に居るからこんなにもドキドキしてるんだ…。
「めちゃくちゃ嬉しい…」
「シオン、好きだ。何があってもお前を守り抜く」
真剣な顔で俺を穴が空くほど見つめている。あぁ、そっか。今のガイのセリフ…そうなんだ。あれは幻なんかじゃなかったんだ。サド野郎じゃなくて俺の傍に居てくれたんだね。じゃぁ、俺の質問の答えを聞かせてよ。
「好きだよガイ。ねぇ、俺の事を選んでよ…他の誰でもなく…俺を選んで…」
「ったく、シオン。お前以外に誰がいるってんだよ」
ガイは髪、額、目、頬と順番にキスをしてくれた。最後に唇にガイの唇が触れ合いそうになった瞬間、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
おいー!!誰だよー?!今からエロ展開突入って時に何を邪魔してくれてんだよ?!ガイは全く聞こえないフリをして続きをしようとしている。
コンコン
俺の上から退く気が全く無いガイ。なおもノック音が部屋に響く。それは段々と強さを増し、最後はトゴォンッ!!と凄まじい音がした。あれでも穴が空かない扉すげぇな…。俺はもうガイとの続きは諦め、どうでもいい事に関心していた。
キィー
扉がゆっくり開く。まるで幽霊が出てきそうで怖い…。そして扉の先には全身に怒りを身にまとったヘラが立っていた。魔王降臨。怖っ…。幽霊なんかよりもずっと怖い…。ゆっくりと部屋に敷かれた絨毯を踏みしめるようにこちらに向い、ベッドのそばに立った。
ヘラは素早く足を高く振り上げ、ガイの脳天目掛けて振り下ろす。強力な足技。かかと落としを披露した。強い衝撃を受けたガイは、ぐぉっと小さく呻き、頭を押さえベッドでのたうち回っている。ほう…素晴らしい…今日もカッコイイですヘラさん!!
「シオン様、お加減はいいがですか?」
何事も無かったようにいつも通りのヘラに、第一王子にそんな事していいのかと悶絶中のガイに視線をやると、あんなやつ放っておいて構いません、となんとも非情な発言をした。しかし、ガイにあんな一撃をお見舞いするとはヘラは只者じゃないな。
「うん、大丈夫。ヘラ凄いな。さっきの技はかかと落としだろ?!カッコイイ!!」
少し興奮気味に伝えると、目が合ったヘラは楽しそうに笑いながら言った。
「お褒め頂きありがとうございます。シオン様に近づく不埒な者共を排除する為に鍛えておりますので」
不埒な者…俺の視線はガイに固定された。なるほど…。ヘラにとってガイは排除対象なのか…。哀れなガイ…。
「病み上がりのシオン様のお体も労わらず、盛るコイツは第一王子じゃないのかもしれないですね」
耳を疑う様な発言がヘラの口から飛び出した。無表情な冷たい目でガイを見ている。ガイよ、お前ヘラに何をしたらこんなにも酷い扱いをされるんだよ。しかし、最初に俺が誘うような行為をしたからな…俺にも非がある訳で…。
「ヘラ、ごめん…俺も…」
「いいえ!!コイツが悪いんです。シオン様は何も悪くありません。お気に病まないで下さい。いいですね?!」
「ふぁい!!」
ヘラに凄みのある形相で低く告げられれば、誰だって従ってしまうだろう。勿論、俺もです!!よって、ガイ、お前が悪い!!
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