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第16話 魔法が使えた!?

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 俺の指先には小さな火がともっていた。

「これって……魔法……!?」

 驚いたことに俺はあっという間に魔法を習得できてしまったようだ。
 計算式とイメージをもとに、そこに魔力を流し込むような感じで簡単に魔法が出た。
 夢の中でいろいろやってるうちに寝ながら魔法が出てしまったのだ。

「はは……! 思ったより簡単だ……!」

 今まで魔力なんて意識したこともなかったが、夢の中でぼんやりとした光を追いかけているうちにだんだんと意識できるようになっていた。

「すごい……! これが魔力……!」

 目が覚めて、当たりを見渡すと、そこらじゅうに魔力が見えるようになっていた。
 今までなにげなく過ごしていた周りに、こんなにも魔力があったなんて……!
 とくに生き物には多くの魔力がまとわりついているようだった。
 自分の身体を見てみると、あふれんばかりの魔力におおわれている。

「シロ……! お前も魔力を持ってるんだな!」

 もちろんシロからも魔力が漏れ出している。
 普通の犬でさえこれなんだから、魔物ともなるとどれだけの魔力を持っているんだろうか。
 これは冒険に出るにしても、かなり修行してからじゃないと危なそうだぞ……。



 翌朝、庭に出てみると驚くべきことがわかった。
 なんと野菜や植物にも魔力が感じられたのだ。

「おお! 魔力があるのは人間や動物だけじゃいのか……!」

 つまり魔力というのは生命力のようなものらしい。
 これもあの本でそんなことが書いてあったっけなぁ。

「それにしても、これはどういうことだ……?」

 なぜだかはわからないが、俺の家の庭の周りだけ、他と比べて以上に魔力量が多かった。
 隣の孤児院の土地はまるで枯れたように魔力がない。
 俺の家が吸い取っているかのように、ここだけ魔力の質がやけに高いのだ。

「これのせいで野菜の育つスピードがはやかったってことか……?」

 野菜の育成には土地の魔力がいるって話だったな。
 でも、俺はなにもしていないのに変な話だ。
 もともとこの土地がそうだったのか?
 だけどレベッカからこの家を買ったとき、そんなことはきかなかったしなぁ。
 まあ、深く考えても仕方がないか……。

「とりあえず、今日は魔法の練習だ……!」

 昨日の魔法は寝ぼけながらかってに使ってしまったものだった。
 そのあともう一度魔法を出そうとしたけど、なんだか眠くなってしまったからな。
 あらためて庭に出てリベンジだ。
 家の中で炎を出すと万が一のときが怖いからな。
 いちおう、燃えそうにない石の壁に向かって練習をしよう。

「えい……!」

 昨日、夢の中でやっていたのとおなじように、本のとおりにやってみる。
 まずは数式と化学式、それから火のイメージを脳内に描く。
 それを魔法陣という形にして、頭に思い描く。
 魔法陣が出来たらそこに魔力を流していくイメージだ。

「プチファイア……!」

 すると――。
 ――ボウ!

「おお……!」

 また俺の指先にわずかだが火がともった。

「すげえ! 俺魔法が使えた……!」
「ばうわう!」

 隣にいるシロもしっぽを振って喜んでくれている。

「ようし、時間はいくらでもあるんだ! この調子で練習するぞ!」

 そう、俺はこの世界の一般人の多くと違って、仕事をしないでもいい。
 だからこうやって昼間から魔法の練習を一日中やれるのだ。
 こうやって一気に練習をして、さっさと魔導士や貴族のレベルに追いついてやるんだ!



 それから一週間ほどで大体の魔法がカタチになってきた。

「よし……! これで冒険者になれるかな……」

 俺はシロを連れて、ようやく冒険者になることを決意した。
 目指すは冒険者ギルドだ。
 ダンに教えてもらった場所を目指す。
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