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第16話 ルキアール王国
しおりを挟む「この国は、瘴気のせいで不毛の地なんでしたよね……?」
「はい、そうです。大昔はここまでではなかったらしいのですが……」
私とリシアンさんは、お城の中から城下町を見渡します。
見渡す限り、一切の緑はなく……赤茶けた砂壁の街が広がっています。
その外に広がるのも、荒れ果てた土地。
もう少し行けば、私の住む森があるのですけどねぇ……。
ここから徒歩では少々遠すぎますし……。
森の土地を農耕にお貸しするというのは難しいでしょうね。
「では、まずは瘴気を祓うところから始めましょうか」
「えぇ!? そんなこと、できるんですか!?」
「ええできますよ。何を隠そう、あの森の瘴気を祓ったのも私ですし……」
「エルキアさん、本当になんでもできちゃうんですね……」
若干引かれたでしょうか……。
人は自分と違い過ぎるものには共感を示さないと言いますし……。
そのせいで議会を追放されたようなものです。
でも、リシアンさんは違いました。
ふと彼の目を見ると、そこには一切の畏怖がなく、むしろそれは尊敬と驚きの眼差しでした。
「あの……そんなにじっくりと見つめられると照れます……」
「あ! す、すみませんでした……。私、そんなに見つめていましたか?」
「ええ、それは……もう」
リシアンさんは顔を真っ赤にしてそむけます。
私まで恥ずかしくなってしまいます。
いい歳をして、なにを若者にときめいてしまっているのでしょうか、私は。
「い、いいですか? いきますよ! 土壌浄化!」
私は誤魔化すように、瘴気を祓います。
「すごいです……一瞬にして瘴気の風が消えました……」
「すぐにとはいきませんが、これでしばらくすれば作物が育つ肥沃な土地に回復するはずです」
「ありがとうございます! エルキアさん」
「あの……よければ二人きりのときは、シルヴィアと呼んでもらえますか?」
「……え?」
「実は、エルキアというのは偽名なんです。黙っていてすみませんでした」
「なにか……事情があるのですね? わかりました。これからはそうします、シルヴィアさん」
なぜだかわからないが、私はそこで、リスクを取ってしまいました。
どうも偽名で呼ばれるのはしっくりきません。
そのしょうもない私の感情と、名前が組織にまで広まるリスクを考えれば、当然、本名をばらすべきではなかったでしょう……。
ですが、なぜかこのときの私は、自分のくだらないわがままな気持ちを尊重してしまったのです。
「当面の食糧はどうしましょうか……まだ土地が完全に回復するまでには時間がかかります……」
本当であれば、私が能力を駆使して食料をかき集めてもいいんですけどね……。
それでは彼らのためになりません。
なるべく私の介入は最低限で、彼らの自立を促す方向性で解決したいです。
真の賢者は、魚を与えるのでなく、その獲り方を教えるものですから。
それに、無償の施しなどは、リシアンさんたちも望んではいないでしょう。
なるべく私たちは対等な関係でありたいです。
「私の国――エルムンドキアに希望者を送る、というのはどうでしょう? それで、定期的に作物を送る、というのは……」
「それはいいアイデアですね。自分たちで育てた作物を頂く、というのであれば、こちらとしても気が楽です」
完全に無償で食料を与える、というのでは、それは国同士の協力関係ではなくなります。
それでは属国として相手の国の軍門に降るようなものですから。
このほうが、国民からの反発等もなしに、スムーズに事が運ぶでしょう。
「ですが、送るといってもどうやって……? 森まではかなりの距離がありますが……」
「それもちゃんと考えてありますから、お任せください」
「……?」
「列車――というものをご存じで?」
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