魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
7 / 56
忌み子編

7.村を救え

しおりを挟む

 三日ほど森林を彷徨っただろうか……アルはもうずいぶん遠くまで来ていた。ほとんど実家から出たことがなかったアルにとって、今世一番の遠出といえる。

「うーん……そろそろ森を抜けてもいいころだと思うけど……どんだけ広いんだ……この森」

 燻製にしたゴブリンの腕をかじりながら、独り言をこぼす。

「……ん?なんか煙臭いな……」

 そう思ったアルが上を見上げると、たしかに黒煙が上がっているのが見える。

「ここからそう遠くない場所だな……気になるし、行ってみよう」

 黒煙に向かって進んでいくと、なにやら話し声が聞こえてきた。そしてそれは煙の出どころに近づくにつれ、大きく、はっきりと聞こえてくる。

「さあ!さっさと食料と女をよこしな!」

「うちにはもうなんにもありません!はやく出ていってください!」

 声の正体は、盗賊の男と、それに襲われている村人のものだった。黒煙は誰かが助けを求めて上げたものか……もしくは盗賊がなにかに火を放ったかだろう。というのがアルの見立てだった。

 それほど人口の多くない村のようで、みたところ家も十軒にも満たない。アルはしばらく茂みに身を潜めてそれを観察していた。

(盗賊は全部で六人……まあいざとなれば僕一人でも倒せるかな……)

 村人たちが村の中心に集まり、それを盗賊が取り囲んでいるような形。盗賊たちの目的は食料と女ということだったが……この村にそれほど物資があるとは思えない。というのがアルの正直な感想だった。

「さぁ……!こっちにこい!」

 盗賊の一人が、ある女性の腕をつかみ上げ、命令した。女性の反対側の手には、小さな女の子の手が握られている。見たところアルの同年代の少女だ。

 女性もその娘と思われる少女も、たいそう綺麗で、盗賊たちがまっさきに目を付けたのも納得の美人だった。

「や、やめてください……!」

「ママ……!」

「大人しくしねぇと、そっちのガキからやっちまうぞ!」

「やめて!それだけはどうか!」

 その光景に見かねたアルは、考えるより先に、飛び出していた。

「やめろ!」

 森の中から突然、栗色の美少女(?)が現れたので、盗賊たちも村人も一瞬動きが止まって、目を丸くして驚いた。

「おい、ガキ!いまから楽しいところなんだよ……!それともお前も混ざりたいのか?げっへっへ」

 盗賊たちが一同ゲスな笑いをこぼす。

「その人を離せ!」

「ぎゃっはっは!その人を離せ!だってよ!てめぇみてえなガキがなに息まいてやがんだ!」

 盗賊がそう言い終わると同時に、彼の右手が地に落ちた。

「……あ?」

 男は自分の身に起こったことをしばらく理解できないでいた。不思議と痛みも遅れてやってくる。男がアルのほうを見ると、アルの手には剣が握られており、それでやっと状況を理解した。

「ぎゃああああああああああ!!!!このガキ!いきなり俺の手首を切りやがった!!」

 男はあまりの痛みに立っていることができず、地面に尻をつけ、見方がそれを支えた。

「どうやったんだ……?いま、誰かあの子が剣を抜くのが見えたか?」

 村人の一人が驚いて言った。みないちように顔を見合わせるも、だれも頷くものはいない。

 よくわからないが、アルの登場を僥倖とみなし、村人たちの顔に生気が戻る。

「僕は、手を離せといいましたよね?それを無視したのはあんたたちのほうだからね……?」

 アルは剣を再び構えて、盗賊たちににじり寄る。

 手を切り落とされた男が恐怖のあまり座ったまま後ろに下がった。そして仲間たちに命令をくだす。

「馬鹿野郎!お前ら、なにボーっと見てやがんだ!いいからそのガキを殺せ!」

「そうだ!殺せ!うおおおお」

 残りの盗賊たちがいっせいに襲い掛かる。

「いやーやっぱり盗賊ってだけあって、ぜんぜん剣の扱いがなってないなぁ……。そんなんだから盗賊やるはめになってるんだろうけど……。ちょっと粗削りにもほどがあるよ。正直言って、隙だらけ……」

 アルはやれやれといった感じで愚痴りながら剣を交える。

「なにをごちゃごちゃいってやがんだ……!戦いに集中しやがれ、このガキ!」

「こういうことさ……!」

 アルが勢いよく剣を一振りすると、盗賊たちの身体が後ろに吹き飛んだ。

「うお……」

 吹き飛んだまま、壁や地面にぶち当たり、男たちの身体は数か所の骨折を負った。

「てめぇ……いま何しやがったんだ……?」

 起き上がれなくなった盗賊たちが、それでもなんとか起き上がろうとしながら、アルに問いかけた。

「え?なにって……僕はただとてつもなく強い力・・・・・・・・・で剣を一振りしただけですよ?」

 アルがこのくらいなんでもない、あたりまえだ、というふうに言ったもんだから男たちは理解に苦しんだ。

「……は?」

「だから……剣を振ると、弱い風が起きますよね?それをめちゃくちゃ強い力でやったってだけなんだけど……。わからなかったかな……?」

 アルは皮肉たっぷり、されど無邪気に笑ってみせた。

 盗賊たちはようやく実力差を理解したみたいで、あきらめてその場に寝転んだ。骨が折れていてはどのみちなす術がない。

「くっそぉ……なんつーガキだ……」

「おお……!」

 傍観していた村人も、感嘆の声を漏らす。

「てめぇら……!なにあきらめてやがる!骨折れても、内臓飛び出してでも戦え!」

 最初に手を斬られた男が、ぼろぼろの身体でわめく。

「いやーむりですって……あのガキ、めちゃくちゃ剣の腕がある。それに、あとはアイツ・・・にまかせときゃいいんですよ……」

「……っ!くそっ……仕方ねえ、アイツ・・・だけが頼みの綱だ……」

 盗賊の会話を不思議に思ったアルは、近くの村人に尋ねた。

「アイツって……?」

「それが……奴らにはもう一人仲間がいて……もうちょっとで帰ってくるはずなんだが……そいつがもうとにかく腕の立つやつで……君もはやく逃げた方がいい……俺たちはもう十分助けてもらったよ……」

「ふーん……まあ逃げないけどね……」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...