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忌み子編
24.決戦!! - 後編
しおりを挟む「だがそんなもので僕に勝てると思ったら大間違いだ」
「……は?」
アルは言うやいなや、鎧男に向かって、こちらから踏み込んだ。
相手の懐に潜り込む。
「っは! とうとう気が狂ったようだなぁ! 敵わないと思ったら自ら飛び込んでくるとはなぁ! 心中でもするつもりか? 小さな魔術師さんよぉ! っ……まあ魔法は使えないだろうけどよぉ! だって魔力がないんだもんなぁ、かわいそうに! きゃっはっは!!!」
ジークが猿のように喚く。
だがアルはそんなこときいちゃあいない。
(鎧の弱点は、それを着て動かなくちゃいけないことにある。動くかぎりは絶対に、関節や隙間が生じる……! そこを突く!)
アルは杖を男の鎧の関節部分に差し込む。
男は鎧のせいで動きが鈍いので苦労なく成功した。
「……は?」
突然のことに男はなにがなにやらわからない。
「よし! 着火……!」
アルが水晶に指を滑らせ、杖のギミックを作動させる。
すると水晶にあらかじめ貯められていた魔力が、杖に内臓された魔法陣に繋がり、発動する!
――ぼぅ!
杖の先端から火球が鎧の中へと発射される。アダマンタイト製の鎧といえども、その結合部分は堅くするわけにはいかない。
逆にその強固な鎧は、脱ぐことも破壊することもできない鉄壁の棺桶となるのだ。
「うわちちちちちちちちちち」
男の身体を炎が包む。それが鎧の中で行き場をなくし、さらに燃え上がる。
鎧はいい蒸し器となったようで、一瞬で男の身体全体に超高熱の火が回る。
アルは作戦勝ちをしたのだ。相手の切り札を、逆に致命的な弱点へと変えた。
「すごい! これが魔法の力!」
はじめての魔法での勝利に、アルは興奮を抑えきれない。たった一つの魔法を使えるだけで、自分はこんなにも戦えるのだ。
もし自分に人並みの魔力が備わっていたらいったいどうなっていただろう?
そんなことも夢想する。
男は最初こそ声を上げてもだえ苦しんでいたが、やがてそれは声とも似つかぬ断末魔へと変わる。
「だふぇkげgkwp@あだwふぇふぁうfkl;l;!!!!」
男は絶命し、その重たい身体は無防備に地面に倒れる。
大きな音と共に、アダマンタイト製の鎧が地面を揺らした。
「……あ、……なん、で……」
ジークは目の前の光景が信じられないようだ。いつしか雑魚兵士たちもみな村人にやられてしまっていて、残るはジークだけになってしまっている。
ジークは地面にへたり込んで、股間を濡らしている。あまりの恐怖におびえているのだ。
彼もアルが剣の達人であることは既にしっている。
それに魔力が使えないはずであることも。
それがどうだろう、目の前の怪物は、無類の剣の達人でありながら、魔法を行使し、アダマンタイト製の鎧をみごと打ち破ったではないか。
しかも杖の先端から魔法を出すことでしか鎧は倒せなかったはずだ。普通の魔術師相手なら、鎧が魔法をはじくから。つまりこの芸当はアルにしかできない戦い方であった。
剣聖並みの身のこなしと、的確な魔法操作を持った人物などいないからだ。
「そ、そんな……」
ジークは畏怖の感情を目に浮かべ、アルを見上げる。
「……ん?」
「剣の達人が、……それも魔法を使えないはずの奴が……魔法まで使いこなしてしまったら……それこそ、それこそ……化物じゃないか……!」
アルはにやりと笑う。
「ああ、ここから面白くなりそうだ……!」
転生した当初はどうなるかと思っていたが、アルはもはや魔法が使えない訳ではない。
最強の剣士が、人工的にだが、魔法を手にした。
それが意味することは…………まさしく、最強!!!
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