魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
28 / 56
忌み子編

28.嵐の前

しおりを挟む

 アルとミュレットは12歳になっていた。

 あれからポコット村はずっと平和だ。

 アルは魔法陣をずっと研究して、独自の理論を確立していた。

 もはやアルに書き記せない魔法陣はなくなっていた。

 それを利用して、杖を新しく改造しているのだ。

 何度も杖に改良を重ねて、ついに一つの杖で複数の魔法を繰り出せるように進化していた。

 もちろんアルにはいまだに魔力がない。

 だからこそ杖の改良にこの三年をつぎ込んだのだ。

 そして今日、カイドの工房に行き、新しい杖を受け取ることになっている。

「ミュレット、ママ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「アル、はやく帰ってきてね」

 ミュレットは以前ほどアルについて回ったりはしない。

 もはやアルは自分のパートナーだという確信があるからだ。

 アルは一人で街まで行き、カイドの工房を訪れた。

 カイドはあのいつもの屈託のない笑顔でアルを出迎えた。

「いつもタダでこんな改造をしてもらって、カイドさんには頭が上がりませんよ」

「おいおい、アル、それを言うのは俺の方だぜ? お前のおかげで魔法陣なんていうトンデモ技術の開発を間近でお目にかかれるんだからよ、それだけでも十分な報酬だよ、俺にとっちゃ」

「ははは、そう言ってもらえると助かります」

「それじゃあ、試しに使ってみな」

「はい」

 アルは工房の外に出て、新しい杖を構える。

 杖はアダマンタイトでできていた。以前アルが倒した鎧の男から得た素材だ。

(ずっしりして重い……でもこの重厚感が、剣みたいで落ち着くな……)

 アルが杖の水晶に手を滑らせると、怪しく光る。

 水晶から魔法陣へと魔力が流れ込む。

 今までなら杖につき一つの魔法、というふうになっていたが、この改良版は違う。

 魔力が流れたあと、ダイヤルを回して、魔法陣を入れ替えることができるのだ。

 これによって最大5種類の魔法を展開することができる。

「まずは、火炎球ファイアボール!!」

 杖から火球が産み出される。

「続いて、水流弾ウォーターショット!!」

 それを水流ですぐさま消火する。

「さらに、風斬撃エアスラッシュ!!」

 頭上に向けて垂直に風の刃を放つ!

 風の刃はある程度の高度までいくと、そのまま落下してくる。

「それを……吸収盾マジックシールド!!」

 杖の先端に青い透明の盾が出現し、刃を消し去った。

「よし、ここまでは順調だな」

「次は……いよいよ人体加速スピードギアの魔法ですね」

 いままでの魔法はいわば、外部に放出したりする類のものばかりだ。

 だが次の魔法は人体強化、すなわち自分自身に影響を及ぼすものだ。

 その複雑な魔法が、はたして魔法陣による方法で、しかも水晶に込めた魔力で、行使できるのだろうか。それはやってみなければわからない。なぜなら現代において、魔法陣なんて時代遅れの遺物を使うのは、アルたちだけだからである。いわばここが魔法陣研究の最先端だった。

「いくぞ!!」

 ダイヤルを人体加速スピードギアにあわせる。そして水晶の魔力を杖に流す。

 瞬間、アルの世界が加速した。

「やった!! 成功だ!」

 カイドがなにやら言っているが、よく聞き取れない。もはや体感スピードが違うからだ。

 水晶を元の位置にもどし、魔力の流れをせき止める。

「ふぅ、なんだか一日分動いた気がしますよ」

「そりゃあそうだろう、人体の感覚を加速させるってことは、それなりに身体に負荷がかかるからな」

「これはいざというとき用ですかね……」

「とりあえずまぁ成功してよかったよ。またなにか思いついたらいつでも持ってきてくれ」

「はい、ありがとうございます。でも当分はこれでいいかな。この5種類の魔法さえあれば、どんな敵にも対応できる気がしますよ」

「ははは……それが冗談に聞こえないところが、お前さんの恐ろしいところだよ、まったく」

 アルは軽くカイドに別れを告げると、工房を後にした。

 せっかく街に来たのだから、買い物とかもして行きたい。それに、レミーユにも会っていきたいなぁ、などと考えながら歩いていると、突然アルの目の前に、修道服姿の女性が現れた。

「ねぇねぇそこの坊や~、お姉さんがいいことしてあげるからちょっとついて来てくれなぁい?」

 女性はやけに艶のこもった声で、アルを誘惑するように言った。

 身の危険を感じて、アルは無言でその女に背を向ける。

「って、ちょっとちょっと! いきなり無視するなんてひどいじゃない!」

「いやいやいや、そりゃあ無視しますよ明らかに怪しいんだもん」

 言いながら、アルはいそいそと歩いて、女を振り切ろうとする。

「私のどこが怪しいっていうのよ! こんなに可愛いシスターさんが誘ってるんだよ?」

「それが怪しいってんですよ! どこに子供を誘惑して連れ去ろうとする修道女がいるっていうんですか!」

 女は早歩きのアルになんなく歩調を合わせてくる。

 アルは痺れを切らして、水晶を起動した。

 ――人体加速スピードギア

 アルの世界が加速する。

 どんどんどんどん人を追い越して、街を出て森へ来た。

「ふぅ……ここまでくれば大丈夫だろう……」

「なにが大丈夫なのかしら?」

 後ろを振り向くと先ほどの修道女。

「!?」

 アルは確信する。この女はただモノではない。

 女はアルを舐めるように見回して、言う。

「ふぅん……魔力がないのに本当に魔法を使えるんだ……」

「僕についてなにを知っているんですか!?」

「まあとにかく、うちの教会に来てよ。あんたに会いたい人がいるから。あんたのその不遇の肉体や、転生・・についても知りたいでしょ?」

「なぜそのことを!?」

 アルが前世の記憶を持っていることは、誰も知らないはずである。

 とにかくアルは女についていくしかないと感じていた。

(なんだかおかしなことになったな……)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...