魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
29 / 56
忌み子編

29.女神

しおりを挟む

 女に連れられ、教会に入ると、そこには大きな女神像が鎮座していた。

「で、用件はなんなんですか? 僕に会いたい人というのは?」

「まあまあ、ここに手を」

 女は女神像へと触れるように促した。

 なにがなんだかわからないまま、アルはそれに従う。

「……うっ!?」

 女神像に触れた瞬間、アルを強烈なめまいが襲う。

(なんだこれは!?)

 次に目が見えるようになった瞬間、アルは別の空間にいた。

「ここは?」

 周りを見渡すも、そこにはなにもない。

 先ほどの修道女も消えている。

 あるのはただ靄がかった空間だけだった。

「ようこそ……アル……」

 声がした。

 そして次の瞬間、目の前に先ほどの女神像を実体化させたような女性が現れた。

 まるでコマ送りのように、一瞬で目の前に現れたのだ。

「あなたは……?」

 アルは訊ねながらも、その答えを予測していた。

 その見た目からして、彼女は女神なんだろう。

 それにしても信じがたい状況に、困惑せざるを得ない。

「そうです、あなたの予想通り、私が先ほどの教会に祀られていた女神です」

「そうですか……とは言い難い状況ですね……」

「信じられないのも無理はありませんね」

 アルはそれ以上に、なぜ自分がこのような状況に置かれているのか不思議だった。

「僕になんのようですか?」

「そうですね、あなたには謝らなければなりません……」

「あやまる……?」

 なにか女神に謝られるようなことをしただろうか? アルには全く身に覚えがない。

 そもそも神がなにかを詫びるなどということがあるのだろうか。それもまたアルにとって大きな疑問だった。

「あなたが魔力を持たないのは、一部私の責任でもあります」

「なんだって!?」

 思わず大きな声が出る。相手は女神だというのに、責めるようなニュアンスを含む声が出てしまった。

「というのも、あなたが死ぬことは私にとって予想外だったのです。本来であれば死んだ者の記憶を消去し、新しい肉体を与え、新たな人生を始めさせるのは私たち女神の役割なのですが……」

「へぇ……じゃあなにか? 貴方がミスをしたから僕は魔法が使えないというのか?」

 アルは怒りと悔しさでよくわからない表情になる。

 女神は申し訳なさそうな、されどどうしようもない諦めを含んだ複雑な表情でアルを見据えている。

「本当にこのようなことはまれなのです……。あなたの死は、いわば自然の死ではない」

「なんだって……? じゃあ僕は何者かに意図的に運命を捻じ曲げられたとでも?」

「そうですね、あなたが転生したのは、おそらく魔法によってでしょう……。そのせいで、あなたは記憶はそのままに転生してしまったのです。魔力がないのもその影響によるものでしょう。女神を通さずに無理やり転生させられてしまったのですから、それも仕方がないことです」

「いったい誰がそんなことを……?」

「それはもちろん私にもわかりません……。それはあなたがこれからの人生で見つけてください」

 アルはまだ女神の目的がわからないでいた。

「で、それを伝えるためにシスターに僕を拉致させたと?」

「もちろんそれだけではありません。私はあなたに補償をしたいとおもっているのです」

「補償?」

「ええ、魔力が使えないあなたに、代わりになにか授けてあげたいと思うのです」

 アルは震える。女神が力を授けると言っているのだ。それはどれほどのものだろう。

 アルが真っ先に思いついたのは、魔力を人並みに持ちたいということだった。

「なら、魔法が使えるようにはできないのか?」

「それはできません、あなたはそもそも身体のつくりが違ってしまっているのです。仮に私が何かしたところで魔力受容体がありませんから、魔力を扱うことはできません」

「なんだ……そうなのか……」

 アルはがっくしして、肩を落とす。そううまい話はないだろうとは思っていたが、やはり真実をほかならぬ神から告げられると、ショックだ。

「あ、でも一つだけ方法はありますよ。一度死んで、もう一度身体を作り直せばいいんです」

 女神がとんでもないことを口にする。アルは顔面蒼白になる。

「そ、それは遠慮したいです……」

「では代わりに他のことで……」

(とはいってもなぁ……ほかに得たい能力は特にないし。剣術は極めたのだからやはり他となると魔法のことしか思い浮かばない)

 アルの考えを察したのか、女神は、

「ではこれはどうでしょう?」

 なにやらアルに光る石のようなものを手渡した。

「これは?」

「それは魔力石といって、永遠に魔力を放出しつづける石です。あなたの杖に組み込めば、無限に魔法が撃てますよ」

「……!? それは、ありがたい! 今の水晶じゃあせいぜい数十回魔法を使ったら打ち止めになってたからな……」

「では、あなたの人生に幸運あらんことを……」

「あ、ちょ……!」

 女神がそう言い終わると同時に、アルの意識が現実へと引き戻される。

 目を開けると、女神の姿はどこにもなく、目の前にあるのはただの女神像だけだ。

 外を見ると先ほどと全く変わらない明るさで、通行人や立ち止まって話し込んでいる人の位置もそのままだ。

「なんだったんだ今のは……」

 アルが独り言ちると、横にいた先ほどの修道女が声をかけた。

「どうしたんですか……? 顔色が悪いようですけど……?」

 修道女の声は先ほどとは打って変わって、清楚で穏やかな喋り口調だ。

 まるでアルのことを初対面のような顔で見つめてくる。

「え、いや……その……」

「もし体調が悪いようでしたら、修道院にベッドがありますから、そこで休んでいってくださいね?」

 修道女は満面の笑みで、アルに優しさを向ける。

「は、はぁ……ありがとうございます」

(なんだこのシスター……さっきのことを覚えてないのか? 女神に操られていたのか?)

 アルはなんだか不気味になって修道院を後にした。

 その足で、カイドの工房に再び戻る。

「お、アルじゃねえか、さっきぶりだな。どうしたんだ?」

 アルはカイドにさきほど女神にもらった魔力石を見せた。

「おいおいこれは……! お前とんでもない代物をゲットしたな! どこで手に入れたんだ?」

「いやぁそれはちょっと……。内緒っていうことで」

「まぁいいけどよ……。ちょっと待ってな、今、水晶と入れ替えてやるからよ」

 魔法陣の改良と違って、魔力石の装着はものの数分で済んだ。

 女神が気を利かせて、水晶と同じ大きさの石をくれたからだろうか。

「ほらよ、これで魔法陣撃ち放題だぜ」

「おお! これはすごいですね」

 アルは素振りのように素撃ちをしてみる。

 無限に魔法を撃ち続けられるので、言い知れぬ万能感があった。

「大魔術師さまの誕生だな」

 カイドがからかうように言う。

「茶化さないでくださいよ。いくら魔法を撃てても、結局僕自身に魔力はないんですから……」

「まあまあ、そうコンプレックスに思う必要もないんじゃねえのか? 剣の腕は一流で、魔法も杖さえあれば撃ち放題の最強少年なんだからよ。もうお前に勝てるような奴はいねぇんじゃないのか?」

「そうですかねぇ……。ま、とりあえず今日は助かりました。また来ます」

「おうよ」

 アルはカイドと別れ、街を後にする。

 街を出てすぐに、杖を構える。

 草原はこの魔力石の効果を試すに絶好の場所だった。

 ――人体加速スピードギア

 アルの世界が加速する。

 さして障害物もないから、気持ちよく草原を走り抜ける。

 森へ入ってからは少し慎重になってスピードを落とすが、それでもものの数分で村へと帰りついた。

 村へ着くとアルは倒れてしまった。

「あ、この魔法使うと疲労がすごいの忘れてた……」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...