魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
30 / 56
忌み子編

30.番外編 キムのその後【サイド:キム】【ざまぁ】

しおりを挟む

 金も家もない、頼れる身寄りもないキムは、一人夜の街をさまよっていた。

「なんで私だけがこんな目に……。お父様も、アルも、ベラも許せないわ……」

 もう三日ほども飲まず食わずでいる。

 元居た街にいてはまたいつ石を投げられるかわからないので、今は別の街にいた。

 都会にくれば、自分を知る人はいないだろうということで、ある程度賑わいのある街を選んだ。

 それに、都会であればなにか仕事にもありつけるだろうという考えもあった。

 だが世間はそれほど甘くはない。

 キムは根っからの貴族家庭で育ったせいで、家事のスキルなどはてんで身についていない。

 使用人やアルにばかりまかせていたツケがまわってきたというところだろう。

 よって彼女にできる仕事などはこれっぽっちもなかった。

 それに、仮にそれらの仕事ができたとしても、やはり彼女を雇い入れるところは多くはなかっただろう。家も金も、身分も失った彼女は、もはや何者でもないのだ。

 身分を証明しようにも、それをする術を彼女は知らない。

 とうとう打ちひしがれて、もうこのまま死ぬのかと思った彼女が最後に行きついた先は、娼館だった。

 ラドルフがよく利用していたなと思うと、キムは虫唾が走る思いだった。

 だが最後の手段と思い、店の前に立った。

「いや……やっぱり……」

 だがいくら空腹でも、なかなかその門をくぐることは難しい。

 なにせ彼女は箱入り娘だし、なにより貴族としてのプライドがそれを許さない。

「はぁ……」

 結局諦めて、元来た道を引き返す。

 途中、定食屋の前に立ち止まり、お腹の虫を鳴らす。

 そんな彼女を見かねてか、声をかける集団がいた。

「よう姉ちゃん、お腹空いてるのかい?」

 キムが声の主を見やると、3、4人の屈強な男たちがそこにいた。

「俺たちもちょうど仕事終わりでよ、よかったらいっしょに食うかい? おごるぜ?」

 男たちは見るからに肉体労働者で、いわゆる労働者階級のものたちだ。

 キムのような貴族からすると、下々の者にあたる。

 しかも彼らは一日中働いていたせいか、煤で汚れ、汗でひどい悪臭を放っている。

 そのような者たちと食卓をともにするなど、キムとしては考えもしなかったが、背に腹は代えられない。

 この悪臭を二、三十分がまんすれば、娼館なんぞに行かなくて済むのだ。

 そう思うだけで、なんだかキムは耐えられそうな気がした。

「そう、よろしくお願いするわ……」

 力なくキムは提案を了承する。

「っへっへっへ、よろしくな」

 男たちに連れられ、キムは大衆食堂へと入る。

 このような食堂を利用することは初めてだったが、久しぶりの食事で、キムは心底満足する。

 適当に相づちを打って、男たちの会話をやり過ごす。

 中にはセクハラまがいのものもあったが、一食の恩があると思ってなんとか耐えた。

 ようやく男たちは酒を飲み干し、店を出ることとなった。

 食堂からしばらく歩いたところで、キムは男たちに礼と別れを告げる。

「ありがとう。助かったわ……」

「おっと、お楽しみはこれからだぜ?」

「……え?」

 いつしか辺りは人通りの少ない暗い場所になっていた。

 男たちがキムを取り囲む。

「どういうつもり……?」

「は? わかってるだろ? この世のどこにタダで飯が食える場所がある?」

 男たちは乱暴にキムの腕をつかむと、路地裏に引きずり込む。

「放して……!」

「うるせぇ!」

 ――ゴン!

 男のこぶしがキムの頭蓋に炸裂する。

「おい、殺すなよ? 面倒はごめんだぜ」

「わかってるって……」

 気を失った彼女がこのあとどうなったかは、言うまでもない。

 



 翌朝、キムはゴミに埋もれて目を覚ます。

 ゴミ以外にも身体には様々な液体が付着している。これはゲロだろうか?

 きっとそうに違いない。酔っぱらってこんなところで行き倒れてしまったのだ。

 そこに別の酔っぱらいがゲロを吐いていったに違いない。

 混濁する意識の中で、ぼんやりとキムはそう思う。

「はぁ……」

 手首に爪を押し当て、死んでみるのも悪くはないかと思うも、そうは出来ない。

 やれやれと、重い腰を持ち上げるのに、それから50分ほどかかった。

「昨日はなんとか食事だけは出来たけど……」

 問題はこれからである。

 毎日毎日あの男たちに縋るわけにもいかない。なにせ代償が高くついた。

 キムにとってはこれほど屈辱的な話はない。

 思い返してもはらわたが煮えくり返りそうな思いだった。

「うぐ……」

 腹を抑える。昨日、男たちに行為の最中に何発が殴られた。

 首にも痣ができている。殴られたせいで頭もいたい。

 もはやどうとでもなれという思いだった。これ以上の最悪はないだろうから。

 キムはまた午前中職を求めてさまよったが、昨日以上に感触が悪い。

 なにせゲロやらゴミにまみれて寝たせいで、悪臭が前よりひどくなっているし、見た目ももうボロボロだ。

 また彼女が足を止めたのは娼館の前だった。

 昨日とは事情が違っていた。

 もはやキムはやけくそだ。

 もう怖いものなんかないと、決意をして娼館の門をくぐる。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...