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忌み子編
34.番外編 ラドルフのその後【サイド:ラドルフ】【ざまぁ】
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【7/21この話だけ投稿し忘れていましたので追加します。すみませんでした】
家を売り払ったラドルフは、大金を手にしていた。
アルは出ていった。ベラは捕まった。キムは捨ててきた。
もはやラドルフにはなんのしがらみもなかった。
「ふん、それにしても腹立たしい。わしはもう終わりだ」
ラドルフもまた、やけになっていた。
「せめて死ぬ前にこの金で豪遊しようか……」
ラドルフがやってきたのは比較的都会にある娼館だった。
「今日は金があるからな、とことん遊べるぞ」
「新人の子が入ったんですが、どうしますか?」
店の男がそういうので、ラドルフは適当に返事をする。
「ん、まあいいじゃろ……」
ラドルフの前に現れたのは、キムだった。
「お父様……」
キムは絶句していた。自分を捨て、家を売り、その次に訪れる場所がここかと……。
「ん? なんだ? キムに似ているな……」
知ってか知らないでかは分からないが、ラドルフはそんなことを言う。
昼間からやけ酒に浸っていたせいで、意識がもうろうとしているのかもしれない。
「ちょっと……」
状況を飲み込めないでいるキムがつっ立っていると、ラドルフが近づいてきた。
ラドルフがキムを認識できなかったのも無理はない。
キムは連日の放浪ですっかり別人のように痩せこけ、すたれた見た目になっていたのだ。
キムの顔にラドルフの酒で蒸れた息がかかる。
「うっ……」
「ぐっへっへ、豪遊じゃー」
ラドルフは嫌がるキムの顔をみて、心底嬉しそうに嫌な笑いを浮かべるのだった。
◇
娼館を遊びつくしたラドルフは、カジノを訪れていた。
「ふぅ……。なんだか今日は女の子の反応がいまいちだったのぅ……」
カジノで遊びながらも、ラドルフはどこか夢心地、現実味がなく、浮いた気分だった。
ドラッグのせいか酒のせいか、それとも現在の境遇によるものか。
もはやどうとでもなれと思っていた。
そのおかげか、不思議と上手く勝つことができた。
「ほぅ……わしもまだまだ終わってないな……」
元手が大きかったこともあって、ラドルフはかなりの大金を手にしてカジノを出る。
「ちょっとあなた、儲け話に興味はない?」
カジノを出たところで、色気のある女がラドルフに声をかけてきた。
赤いドレスからすらっとのびた足が、ラドルフの男心を妙にくすぐる。
思わずラドルフは足をとめて、その女の怪しい話に乗ってしまう。
「儲け話……?」
「そう、ちょっと内緒のいい話があるのよ……」
女の話はにわかには信じがたい話だったが、もし本当に上手くいけば、一発逆転も夢ではないようなうまい話だった。
絶体絶命のラドルフにとっては、ぜひともあやかりたい。そんな話。
(ふむ……それだけの金があれば、わしももう一度どこかでやり直せるかもしれん……)
これに彼は飛びついた。
もともとカジノで得た金は、降って湧いたようなものだったし、惜しくない。
とりあえず詳しい話を聞くために女と行動を共にする。
話し合いは隠れ家のような飲食店で、秘密裏に行われた。
若く魅力的な女性と、秘密を共有してこそこそするのは、ラドルフにとっては新鮮な体験だった。まるで青春時代に戻ったかのようなわくわく感で、年甲斐もなくラドルフはイキイキしていた。
何杯か飲んだはずみで、女と宿に流れ込む。
「いいのですか……? わしとは今日出会ったばかりだし、それにあなたがしたいのは金の話だけでしょう……?」
ラドルフも、自分のようなオヤジに価値などないことは自覚していた。彼女はただラドルフの金にあやかりたいだけなのだ。
「そんなことありませんわ……。それに、あなたもまだ私のことを信用できてないでしょう? だから、ね……?」
そして夢から覚める時間が来た。
翌朝ラドルフが目を覚ますと、女と共に金もすべて消えていた。
「あの女……!」
◇
あとがき
第一章これにて終了です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
もしよければ、評価や感想などいただけますと、大変励みになります。
何卒宜しくお願い致します。
家を売り払ったラドルフは、大金を手にしていた。
アルは出ていった。ベラは捕まった。キムは捨ててきた。
もはやラドルフにはなんのしがらみもなかった。
「ふん、それにしても腹立たしい。わしはもう終わりだ」
ラドルフもまた、やけになっていた。
「せめて死ぬ前にこの金で豪遊しようか……」
ラドルフがやってきたのは比較的都会にある娼館だった。
「今日は金があるからな、とことん遊べるぞ」
「新人の子が入ったんですが、どうしますか?」
店の男がそういうので、ラドルフは適当に返事をする。
「ん、まあいいじゃろ……」
ラドルフの前に現れたのは、キムだった。
「お父様……」
キムは絶句していた。自分を捨て、家を売り、その次に訪れる場所がここかと……。
「ん? なんだ? キムに似ているな……」
知ってか知らないでかは分からないが、ラドルフはそんなことを言う。
昼間からやけ酒に浸っていたせいで、意識がもうろうとしているのかもしれない。
「ちょっと……」
状況を飲み込めないでいるキムがつっ立っていると、ラドルフが近づいてきた。
ラドルフがキムを認識できなかったのも無理はない。
キムは連日の放浪ですっかり別人のように痩せこけ、すたれた見た目になっていたのだ。
キムの顔にラドルフの酒で蒸れた息がかかる。
「うっ……」
「ぐっへっへ、豪遊じゃー」
ラドルフは嫌がるキムの顔をみて、心底嬉しそうに嫌な笑いを浮かべるのだった。
◇
娼館を遊びつくしたラドルフは、カジノを訪れていた。
「ふぅ……。なんだか今日は女の子の反応がいまいちだったのぅ……」
カジノで遊びながらも、ラドルフはどこか夢心地、現実味がなく、浮いた気分だった。
ドラッグのせいか酒のせいか、それとも現在の境遇によるものか。
もはやどうとでもなれと思っていた。
そのおかげか、不思議と上手く勝つことができた。
「ほぅ……わしもまだまだ終わってないな……」
元手が大きかったこともあって、ラドルフはかなりの大金を手にしてカジノを出る。
「ちょっとあなた、儲け話に興味はない?」
カジノを出たところで、色気のある女がラドルフに声をかけてきた。
赤いドレスからすらっとのびた足が、ラドルフの男心を妙にくすぐる。
思わずラドルフは足をとめて、その女の怪しい話に乗ってしまう。
「儲け話……?」
「そう、ちょっと内緒のいい話があるのよ……」
女の話はにわかには信じがたい話だったが、もし本当に上手くいけば、一発逆転も夢ではないようなうまい話だった。
絶体絶命のラドルフにとっては、ぜひともあやかりたい。そんな話。
(ふむ……それだけの金があれば、わしももう一度どこかでやり直せるかもしれん……)
これに彼は飛びついた。
もともとカジノで得た金は、降って湧いたようなものだったし、惜しくない。
とりあえず詳しい話を聞くために女と行動を共にする。
話し合いは隠れ家のような飲食店で、秘密裏に行われた。
若く魅力的な女性と、秘密を共有してこそこそするのは、ラドルフにとっては新鮮な体験だった。まるで青春時代に戻ったかのようなわくわく感で、年甲斐もなくラドルフはイキイキしていた。
何杯か飲んだはずみで、女と宿に流れ込む。
「いいのですか……? わしとは今日出会ったばかりだし、それにあなたがしたいのは金の話だけでしょう……?」
ラドルフも、自分のようなオヤジに価値などないことは自覚していた。彼女はただラドルフの金にあやかりたいだけなのだ。
「そんなことありませんわ……。それに、あなたもまだ私のことを信用できてないでしょう? だから、ね……?」
そして夢から覚める時間が来た。
翌朝ラドルフが目を覚ますと、女と共に金もすべて消えていた。
「あの女……!」
◇
あとがき
第一章これにて終了です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
もしよければ、評価や感想などいただけますと、大変励みになります。
何卒宜しくお願い致します。
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