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企む男

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「こ、こちら、第一駐屯基地!見たことのないフィギュアに襲われています!」

爆音と騒音の中、兵士は通信室で必死に叫んでいた。

「オバマ部隊壊滅!至急、え、援軍を!ぐわっ!」

天井が落ち、兵士はそのまま押し潰され、命を落とした。

「噂の新型は、いないですよ。兄貴」

建物を踏み潰したのは、フィギュアの足であった。

毛のような鋭い突起物が、生えた八本の足。

そのフィギュアは、白をベースにしながら、鬼の顔のように見える模様を背中に浮かび上がらせていた。

「あまり、刺激するな。今回は、試運転なのだからな」

フィギュアの中にいる男の耳に、低い声が飛び込んできた。

「わかっているよ。兄貴」

ユーテラスの中で、男はにやりと笑うと、来た道を戻り出した。

その様子をモニターで見ていた長髪の男に、後ろから軍服を着た男が声をかけた。

「閣下!予想以上の結果ですな。こいつが、量産化されれば、我が日本軍はさらに強くなれまする」

興奮した軍服の男の言葉に、長髪の男は鼻で笑うと、モニターから離れた。

振り向く時も、軍服の男を見なかった。

部屋から外へ出る扉を真っ直ぐに見つめながら、長髪の男は口を開いた。

「あの機体は、あくまでも実験機だ。量産化はしない」

「え」

長髪の男の言葉に、一瞬気の抜けた声を出してしまったが、軍服の男は遠ざかる長髪の背中に叫んだ。

「世界中で、我が軍以外のフィギュアも作られております!早めに、そういった危険分子を一刻も早く排除しなければ、我が国が!」

「木村」

長髪の男は扉の前で立ち止まると、少しだけ振り返った。 

「は!」

突然、軍服の男は足を合わせ、敬礼した。

「今回の戦争は、数の力で勝ち取っていいものではない」

「は!」

「我が祖国日本が、導かなければならないのだ。良い未来にな」

「は!」

最敬礼する木村から目を離すと、長髪の男は部屋から出た。

すると、すぐに別の軍人が、長髪の男に近付いて来た。

「閣下!6番目のオリジナルの情報が届きました」
「やはり…人型か」

長髪の男の言葉に、軍人は目を見開き、

「そうであります」

姿勢を正した。

「やはりな」

長髪の男は、廊下の向こうを軽く睨んだ。

(始まったか)

そう心の中で呟くと、長髪の男はフッと笑った。

「今頃になってのオリジナルフィギュアの起動…解せませんな」

軍人は、長髪の男の後ろを歩きながら、考え込んでいた。

「レクイエムの愛され人が、亡くなって三年になる。時期を見ていたのだろう」

長髪の男は、周りに誰もいないことを確認してから、口を開いた。

「水戸の老人が、動き出したのですか!あやつは、宮内庁を抱え込み、陛下をも」

「香川」

少し興奮気味になった軍人を、長髪の男がたしなめた。

「す、すいません。少し興奮してしまいました」

香川は慌てて、後ろを確認した。

「…」

長髪の男は少し、目を瞑った。

「しかしですな〜。水戸の老人が薦めていた武藤のいう男ですが、6番目のパイロットになれなかったようであります」

「!」

「自らの配下に、愛され人をつくるという野望は砕かれたようですな」

嬉しそうに話す香川に、長髪の男は足を止め、振り返った。

「誰が、パイロットになったのだ?」

「そ、それは…まだ、情報が」

長髪の男の鋭い眼光に、香川は思わず怯んでしまった。

「すぐに、調べよ」

長髪の男は前を向くと、再び歩き出した。

「は!」

香川は頭を下げると、来た道を戻って行った。

(パイロットが変わった?)

長髪の男は、眉を寄せた。

(流れも変わるのか)

真っ直ぐ廊下を歩いていくと、突き当たりの壁が唐突に開いた。

「お前は、どう思う?」

壁の向こうは、巨大な格納庫になっていた。

そこに佇む…一機のフィギュア。

「雷電」

それは、オリジナルフィギュアの一つ…亜門型、雷電であった。

「お前が、話せるならば聞いてみたいものだ」

長髪の男の名は、上杉正継。

オリジナルフィギュア雷電の愛され人であった。

「まあ〜いい。ここから、導けばよいのだからな」

正継は、フッと笑った。






(ここは、どこ?)

その頃、6番目のオリジナルフィギュアの中で、眠りについていたコウは、ゆっくりと目覚め始めていた。



「まったくよお~」

オリジナルフィギュアが、横たわる格納庫内にあるゴミ箱の中から蓋を開けて、辺りを伺っているのは、コウの友人であるアキラであった。

彼は、どさくさに紛れて、コウが向かった格納庫内に侵入していたのだ。

「コウは…どこだ?」

アキラは、コウがオリジナルフィギュアの中にいることを知らない。

「それにしても…」

アキラが隠れているゴミ箱は、オリジナルフィギュアの足の向こうにあった。

「女の×××をこんな間近で見るとは…。しかもこんな大きさで」

アキラはため息をつき、

「やる前にトラウマになるわ」

周囲を確認した。

監視カメラは所々にあるし、基地の囲いが破壊された為に、見回りがそこら中を巡回していた。

結局、忍び込んだものの…ゴミ箱から動けなくなっていた。

「時期を待つか」

そう自ら納得させると、アキラは蓋を閉めた。


「くそ!」

アキラが隠れるゴミ箱の近くに、武藤真也が近付いて来た。

「折角、水戸のご老公が用意していた舞台を!あんなガキに!」

真也は、オリジナルフィギュアを見上げながら、拳を握り締めた。

「それも、軍人ではない!一般人が!」

真也の言葉を聞きながら、アキラはゴミ箱の中で考え込んでいた。

「くそが!」

ぶつけることのできない怒りを溜めながら、真也はオリジナルフィギュアに背を向けて、再び歩き出した。

(ガキ?一般人?)

真也の言葉を頭の中で繰り返しながら、アキラはしばらくして少しだけ蓋を上げた。

(まさかな)

でかい×××を見つめながら、アキラは首を捻った。

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