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赤き鳥

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「赤い人型のフィギュア!?」

カタパルトデッキに降り立ったフィギュアを見て、有馬は下唇をかみ締めた。


「フィギュアの識別番号が変わりました!コードネーム…明智?我が軍のフィギュアです!」

真理亜の報告を聞いて、有馬の頬に冷や汗が浮かんだ。

「明智…。レクイエムの愛され人だった織田様の苗字から、皮肉った名前が付けられた…裏切りのフィギュア。フィギュア研究の第一人者であった霧島博士が、テラ亡命時に強奪した機体。テラのフィギュアのほとんどは、あの機体から生まれた」

有馬の言葉に、真理亜は目を丸くした。

「生まれたって!あの機体もオリジナルなんですか!?」

「違うわ」

有馬は首を横に振ると、明智を見つめた。

「あれは、人がつくりし…紛いものよ」








「て、敵襲だと!」


格納庫に飛び込んできた河村と姉妹の三人は、自らの搭乗機に走った。

「麗奈!あんたのフィギュアは、武装がまだ装備されていないわよ」
 
莉奈の言葉に、麗奈はにやりと笑うと、シノビに搭乗した。

「莉奈!いつも通りよ!」

「あいつら!何か仕掛ける気か?」

河村は、雛菊のユーテラス内に入った。

「入り口!開けて!」

格納庫の扉が開きだすと、同時にシノビが床を蹴った。


「うん?」

扉の前にいた明智の赤い目が、開いた隙間から、格納庫内に立つアルテミアをとらえた。

「オリジナルフィギュア、いたな」

フェーンの目も赤く輝く。その瞳の隙間で影が揺らめいた。

「スピードなら!」

床を蹴り、一気に加速したシノビは扉を潜ると、明智の前でさらに床を蹴った。

「もらった!」  

シノビは、明智の頭上を越え、背後を取るつもりだった。

そして、格納庫内には、装甲を付けた麗奈のシノビが、ビームマシンガンを構えていた。

「これで!」
「決まりだ!」

背後と正面からの同時攻撃のはずだった。

「甘いな」  

フェーンは、ユーテラス内で笑った。

「所詮…三流のフィギュアよ」

「え」

背後に着地するはずのシノビは、空中で動きを止められていた。

「そ、そんな…」

麗奈の目に、明智の持つ炎の剣に貫かれ、空にかかげられたシノビの姿が映った。

「サイキックも使えぬ…機体が…」

明智は一歩前にでると、同時に剣を抜いた。

すると、明智の真後ろに、シノビが背中から落ちると同時に、麗奈はビームマシンガンの引き金を弾いた。

ビームの束は、明智を包む炎によって、消滅した。

「フィギュアを名乗るな!」

明智の手に、炎でできた銃が握られた。

「麗奈!莉奈!」

格納庫が全開になると、中から雛菊が飛び出してきた。

莉奈のシノビの盾になると、雛菊はビームを浴びながら、明智に向けて突進した。

「さすがは、二流」

特攻してくる雛菊の装甲の厚さに、フェーンは頷いた。

「しかしな」

明智の手から銃が消えると、雛菊向かって両腕を突き出した。

「そこまでだ」




明智の奇襲により、緊張が高まる格納庫内に、コウが姿を見せた。

(赤いフィギュア)

コウは周りの喧騒よりも、明智を横目で見つめながら、アルテミアに向かって走りだした。




「ば、馬鹿な…」

突進を両手で止められると思っていた河村の雛菊は、どこからか飛び出してきた炎の鎖に巻きつかれて、身動きが取れなくなっていた。


「この機体は頂こう。我が軍の強化のために」

フェーンがふっと笑った瞬間、フィギュアが床を踏む音が、格納庫内に響いた。

「オ、オリジナル!」

明智は、鎖に巻きつかれた雛菊を、起動したアルテミアに向かって投げた。


「河村くん、脱出して!」

有馬の声が、ユーテラス内に響いたのと、アルテミアの手刀が、雛菊の機体を貫くのは同時だった。


「遅かった…」

有馬は、顔を伏せた。

「始まる」

そして、拳を握りしめると、アルテミアの背中を睨んだ。
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