22 / 23
あらざる者
しおりを挟む
「くそ!」
雛菊はアルテミアの手刀が、自分の背中を貫いたと感じた瞬間、体内にあるユーテラスを外に吐き出した。
床に落ちたが、ユーテラス内にある液体のお陰で、中に居た河村にはダメージがなかった。慌てて這い出すと、体を包む液体は蒸発し、すぐさま立ちあがった。
「雛菊!」
手刀に貫かれた雛菊は泣いているように、河村には見えた。
アルテミアが手刀を抜くと、その手には雛菊のコアが握られていた。
「オリジナルフィギュア!」
明智が両手をアルテミアに向けると、無数の炎の蛇が発生し、襲いかかってきた。
「アルテミア!」
シンクロしているはずのコウの声を無視するかのように、アルテミアは手にした雛菊のコアを口に運んだ。
「お前を捕獲する!サイキックが使えぬうちに!」
コアを頬張るアルテミアの全身に、蛇達が絡みついた。炎が、アルテミアの肌を焼いていく。
「四肢がもげようが、再びコアに戻せば、同じこと!貴様を確保すれば!我が祖国はオリジナルを有するだけでなく!貴様の眷属を増やすことも可能!すべての量産機を、二流にできたならば!日本など!」
フェーンの赤き瞳が、アルテミアを映す。
「恐れることはない!」
炎の蛇をさらに発生させたとき、フェーンの心臓が痛みだした。
「く!」
フェーンは、ユーテラス内で胸を掴んだ。
「もう少しだけ…」
フィギュアの受けたダメージは、パイロットにシンクロされることはない。
しかし、コアが傷ついている場合、痛みはダイレクトにパイロットに伝えられた。もうすぐ、コアは活動を停止し、明智を構成している物質が崩れ落ちる。
「私の家で、好き勝手させるか!」
装甲を脱ぎ捨てた麗奈のシノビが、明智の背後に回り、ビームマシンガンの銃口を向けた。
「フッ」
フェーンは笑うと、心臓を押さえながら、右手を横凪ぎに振るった。
すると、炎の巨大な薙刀ができ、ビームマシンガンは持ったシノビの右手を切断した。
そして、明智の飛び蹴りが、シノビの腹にヒットした。軽量であるシノビは、くの字でふっ飛び、床に転がった。
「フィギュアもどきが」
明智が炎の銃をつくり、シノビにとどめを刺そうとしたとき、フェーンの背中に悪寒が走った。
「な、何だ!?」
格納庫内にあるブシに向かって走っていた河村は、思わず足を止めた。
炎の蛇が全身に絡みつき、動けないアルテミアの全身に、無数の血管が浮かび上がった。それは、コアが物質を侵食していくさまに、似ていた。
「河村君に、その姉妹!」
艦内に、有馬の声が鳴り響いた。
「そこから、できるだけ、離れて!」
その言葉に、麗奈のシノビは立ち上がると、攻撃のタイミングが遅れた明智の銃弾を避け、床に倒れている莉奈のシノビまで一気に走ると、機体を抱え、カタパルトデッキ上から、海に飛び込んだ。
「く!」
シノビの後を追うつもりはなかった。明智は、銃口をアルテミアに向けた。
その瞬間、アルテミアの中心にして、凄まじい突風が巻き起こり、炎の蛇を引きちぎった。
フェーンの勘が、明智を遥か上空に移動させた。
「竜巻か…」
草薙が豆粒までに小さく見えるまで、上昇したのは、アルテミアのジャンプ力を恐れた上だった。
「まさか…あれが、やつのサイキックか?」
冷や汗をかくほど、動揺した心を落ち着かせるために、息を吐いたフェーンの右腿から、肩に掛けて激痛が走った。
「な」
絶句するフェーン。
「消えた…」
船上から、瞬きの間で、忽然と消えた二体のフィギュア。
河村は反射的に、空を見上げ、目を細めた。
「そ、そんなはずが…」
明智のボディに、切り傷が走っていた。
「あ、ありえん!」
フェーンは空を見上げたのと、頭上から伸ばした爪を振りかざしたアルテミアが、落下してくるのが、同時だった。
「だが…しかし…」
明智の体が、真っ二つに裂けていく。
「これが…オリジナルか…」
アルテミアの斬撃によって、完全にコアを破壊された明智は、風船が割れるように、全身が飛び散り、四散した。
「こ、これが…」
河村の目に、太陽を背にしながら、静かに下りて来る天使の姿が映った。
「くっ!」
有馬は、そばにあるテーブルを叩いた。
「まさか、うちのフィギュアから、扉を開くなんて」
草薙の望遠カメラが捉えたアルテミアの姿を、モニター越しに睨んだ。
「どうなってる?」
コウには、何が起こったかわからなかった。
ただ全身が軽くなったようには、感じていた。
白い翼を背中から生やしたアルテミアは、ゆっくりと草薙向けって落下していった。
雛菊はアルテミアの手刀が、自分の背中を貫いたと感じた瞬間、体内にあるユーテラスを外に吐き出した。
床に落ちたが、ユーテラス内にある液体のお陰で、中に居た河村にはダメージがなかった。慌てて這い出すと、体を包む液体は蒸発し、すぐさま立ちあがった。
「雛菊!」
手刀に貫かれた雛菊は泣いているように、河村には見えた。
アルテミアが手刀を抜くと、その手には雛菊のコアが握られていた。
「オリジナルフィギュア!」
明智が両手をアルテミアに向けると、無数の炎の蛇が発生し、襲いかかってきた。
「アルテミア!」
シンクロしているはずのコウの声を無視するかのように、アルテミアは手にした雛菊のコアを口に運んだ。
「お前を捕獲する!サイキックが使えぬうちに!」
コアを頬張るアルテミアの全身に、蛇達が絡みついた。炎が、アルテミアの肌を焼いていく。
「四肢がもげようが、再びコアに戻せば、同じこと!貴様を確保すれば!我が祖国はオリジナルを有するだけでなく!貴様の眷属を増やすことも可能!すべての量産機を、二流にできたならば!日本など!」
フェーンの赤き瞳が、アルテミアを映す。
「恐れることはない!」
炎の蛇をさらに発生させたとき、フェーンの心臓が痛みだした。
「く!」
フェーンは、ユーテラス内で胸を掴んだ。
「もう少しだけ…」
フィギュアの受けたダメージは、パイロットにシンクロされることはない。
しかし、コアが傷ついている場合、痛みはダイレクトにパイロットに伝えられた。もうすぐ、コアは活動を停止し、明智を構成している物質が崩れ落ちる。
「私の家で、好き勝手させるか!」
装甲を脱ぎ捨てた麗奈のシノビが、明智の背後に回り、ビームマシンガンの銃口を向けた。
「フッ」
フェーンは笑うと、心臓を押さえながら、右手を横凪ぎに振るった。
すると、炎の巨大な薙刀ができ、ビームマシンガンは持ったシノビの右手を切断した。
そして、明智の飛び蹴りが、シノビの腹にヒットした。軽量であるシノビは、くの字でふっ飛び、床に転がった。
「フィギュアもどきが」
明智が炎の銃をつくり、シノビにとどめを刺そうとしたとき、フェーンの背中に悪寒が走った。
「な、何だ!?」
格納庫内にあるブシに向かって走っていた河村は、思わず足を止めた。
炎の蛇が全身に絡みつき、動けないアルテミアの全身に、無数の血管が浮かび上がった。それは、コアが物質を侵食していくさまに、似ていた。
「河村君に、その姉妹!」
艦内に、有馬の声が鳴り響いた。
「そこから、できるだけ、離れて!」
その言葉に、麗奈のシノビは立ち上がると、攻撃のタイミングが遅れた明智の銃弾を避け、床に倒れている莉奈のシノビまで一気に走ると、機体を抱え、カタパルトデッキ上から、海に飛び込んだ。
「く!」
シノビの後を追うつもりはなかった。明智は、銃口をアルテミアに向けた。
その瞬間、アルテミアの中心にして、凄まじい突風が巻き起こり、炎の蛇を引きちぎった。
フェーンの勘が、明智を遥か上空に移動させた。
「竜巻か…」
草薙が豆粒までに小さく見えるまで、上昇したのは、アルテミアのジャンプ力を恐れた上だった。
「まさか…あれが、やつのサイキックか?」
冷や汗をかくほど、動揺した心を落ち着かせるために、息を吐いたフェーンの右腿から、肩に掛けて激痛が走った。
「な」
絶句するフェーン。
「消えた…」
船上から、瞬きの間で、忽然と消えた二体のフィギュア。
河村は反射的に、空を見上げ、目を細めた。
「そ、そんなはずが…」
明智のボディに、切り傷が走っていた。
「あ、ありえん!」
フェーンは空を見上げたのと、頭上から伸ばした爪を振りかざしたアルテミアが、落下してくるのが、同時だった。
「だが…しかし…」
明智の体が、真っ二つに裂けていく。
「これが…オリジナルか…」
アルテミアの斬撃によって、完全にコアを破壊された明智は、風船が割れるように、全身が飛び散り、四散した。
「こ、これが…」
河村の目に、太陽を背にしながら、静かに下りて来る天使の姿が映った。
「くっ!」
有馬は、そばにあるテーブルを叩いた。
「まさか、うちのフィギュアから、扉を開くなんて」
草薙の望遠カメラが捉えたアルテミアの姿を、モニター越しに睨んだ。
「どうなってる?」
コウには、何が起こったかわからなかった。
ただ全身が軽くなったようには、感じていた。
白い翼を背中から生やしたアルテミアは、ゆっくりと草薙向けって落下していった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる