オリヒメ計画

未来叶慧

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第182話 摩髪不思議

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私はお湯を止めてシャワーヘッドをフックにかけ、体を洗い始める。
もちろんオリヒメに背を向けながら。
これで一緒にお風呂に入る意味はあるのかと問われると答えに困る。
だが、それでもいいのだ。
私がそう決めたのだから。
「オリヒメちゃ~ん。シャワー貸して~。」
肩に手の甲を置いてシャワーを待つ。
手のひらに固いものとお湯の流れる感覚が触れると、しっかり握りしめて体とボディタオルの泡を流していく。
この癒しの時間の中、ふと一瞬のできごとが気にかかる。
それはオリヒメが髪を洗っていた時、泡が僅かにしか立っていないことだ。
昨晩は汚れが酷すぎて泡が立ちにくい状況なのだと思っていたが、今日の様子を見る限りはそれがオリヒメの髪質なのかもしれない。
もしかしたら、見えていないだけで毎日異常な数のゴミが付着してしまっている可能性もある。
止まっていた手を動かし始めると、お湯が出ていないことに気がつく。
後ろを振り向くと、オリヒメが蛇口のハンドルを閉めていた。
「ご、ごめんね~。私が言い出したことなのに。開けてもらえるかな?」
オリヒメは再びハンドルを捻ってお湯を出す。
「ありがと~。」
私は前を向いて体に満遍なくお湯をかけていく。
大きなため息が出る。
(私のバカ。)
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