ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第19話九死に一生を得る

「「……」」

「同好会一同で真心こめて集めました! ではお納めください」

「…………は?」

 友人二人は大量のポーションを見て驚いていた。

 だがそれ以上に驚いているのは生徒会先輩で、目の前の光景すら今一信用出来ていないようだ。

 先輩先輩? 口開けっぱなしですよ?

 少々やりすぎて10ダースも用意してしまったので、遠慮なく貰っていただきたい。

 ちなみにこの5倍はあるけど、そっちは個人的に使わせてもらうつもりです。

 ようやく気を取り直した生徒会先輩は、ズレた厚めのメガネを直しながら咳払いした。

「た、確かにポーションだ。しかし……やはり部室は退去してもらわないといけません」

 そんなセリフを遮るように、浦島先輩はバンと机を叩いて立ち上がった。

「それはないでしょう? きちんと同好会のメンバーで集めたポーションを提出したんだから。約束を破る気?」

「……しかしですね。君達はダンジョン探索部ではない。サブカルチャー同好会でしょう?」

「……それはそうね」

「納得しちゃダメですよ部長!」

「頑張るでござる部長!」

「わかってるよ頑張るよ」

 そりゃあグゥの音も出ないが。サブカルチャー同好会の活動でどう成果を出せばいいのか?

 最初から達成不能だと言うのなら、頑張りすべてが無駄である。

「流石にそれはひどいでござる! 成果の指定はされてないはずでござるよ!」

「そうですよ! 約束してくれたじゃないですか!」

「いや、だからそれは検討するというだけで……」

 あくまで部室を没収しようとするこの先輩は引くつもりはないらしい。

 こいつはとんだ食わせ物だった。

 その時、絶妙なタイミングで部室の扉がノックされて誰かが入って来る。

 顔が見えると、この部屋にいる全員が彼女の顔を知っているようだった。

「失礼するよ」

 そして僕は何やら浦島先輩がニヤリと笑ったのを見逃さなかった。

「せ、生徒会長! お疲れ様です!」

 生徒会先輩は驚きながら慌てて頭を下げた。

 生徒会長!?っと僕は叫びそうになったのを唇を噛んで、何とか堪えることに成功した。

「ああ。お疲れ様。烽火会計。ポーションを大量に提供してくれると聞いて見に来たよ」

「……知っていたんですか?」

「ああ。当然だろう? 随分噂になってたぞ? 同好会と部室を賭けて勝負なんて、君にしては遊び心がある。いいんじゃないか? たまにはそういうのも」

「い、いえ! すぐに退去させますので……」

「いやいや。君は成果を出せば、退去しなくていいと言ったんだろう? 他の学校ならともかく、この竜桜学園でポーションの提出が成果として認められないのは問題だ。しかもこの数……外で売れば相当な額になる。いいんじゃないか? サブカル同好会。元々先生方が許可は出しているんだし」

「し、しかしですね。こんな低俗な……」

「別に構わないと思う。自主性は尊重すべき」

「副会長まで!」

 生徒会先輩改め烽火会計は、なにかこの手のカルチャーに偏見があるようだが、旗色が悪いと及び腰である。

 ザマァ、迷惑クレイマー滅ぶべし。

 今どき偏見のひどい輩もいたものだった。

 それに突然現れた助っ人にとても見覚えのあった僕は、こっそり浦島先輩に確認した。

「……浦島先輩。ひょっとして呼びました?」

「……実は友達です。面白おかしく話をしました」

 なるほど。しっかりと経緯をリークしているあたり、流石先輩抜け目がない。

「ポーションの件は私が預かろう。君はひとまず帰っていいよ」

「い、いえ。しかし、このポーションだって買って来たものでしょうし、同好会の貢献度としては……」

「だとしてもそれだけ高額の寄付だ、立派な貢献だろう?……それにだ、少々今回君は強引だよ。他の生徒の間でもこの話は知れ渡っているようだ。強行すれば君と、生徒会の誠実さが疑われかねない。そちらの方が問題だ」

「……は、はい。すみません」

「謝ることはない。予算も場所も無限ではないからね。引き締めは必要だ。だがここだけの話、うちの部活はすぐにダンジョン系ばかりになってしまうから、やる気のある文系は貴重だ。部室がすべてダンジョンアイテムの倉庫ばかりの学校なんて教育機関としていささかマズイだろう。このポーションは君に任せる。私は少し彼らと話していくよ」

「はぁ……。よろしくお願いします……」

 頭を下げた烽火会計は大量のポーション箱を持って帰っていった。

 そして残された生徒会長と副会長はフゥと軽く息を吐くと、頬杖をついて浦島先輩を見て苦笑を浮かべていた。

「さて、浦島。よくやるなお前?」

「何の事? 私はすこーし色んな人と世知辛い話を共有しただけだよ?」

「はぁ……まぁそうなんだろうがな。しかし正攻法で来るとは、無茶をしたものだ」

「そこは、頼りになる後輩がいたからね」

 そう言った浦島先輩の一言で、僕に注目が集まってしまった。

 さてどうしようかと思ったが、ひとまず僕も話しかけてみた。

 生徒会長と副会長は、豚の串焼きと蟹鍋を振舞った先輩と同じ顔をしていたからである。

「先輩……生徒会長だったんですね」

「そうだよ。なんだ、気がついていなかったのか。入学式の時に挨拶したんだけどね。君はサブカル同好会だったんだな、意表を突かれたよ」

「モンスター食の研究でもしているのかと思ってた」

「いやぁ……それも活動の一部みたいなものかなーって」

 そんなわけないが、乗っかってみよう。

 モンスター食が地味にサブカル界隈で流行していることもまた事実である。

「にしても、よくもまぁあんなにポーションを集めたものだ。浦島だってそう深い所まで潜ってはいないだろう?」

「まぁね。でもポーションが手に入らなくても、どうにかしようとは思ってたけど?」

 浦島先輩は僕が何かしなくてもバチバチにやりあうつもりだったようだ。

 ただ、生徒会長は笑みを浮かべたまま浦島先輩をジロリと見ると、ゆっくりと首を横に振った。

「いや。悪いが私は今回、順当に行けば部室を明け渡してもらうつもりだったよ?」

「えぇ? マジで?」

「ああ。マジだ。文芸部だったから部室ももらえたようなものだろう? それがサブカル同好会に改名の上、部員は3名だ、不満も出るよ。だがまぁ面白い部員も入ったようだし、良かったじゃないか浦島。今後も期待しているよ」

「ハハハ……まぁ頑張るわ」

 冗談のような口調だったが、生徒会長の目がマジだった。

「……ひえー。頑張ってよかったかも」

「そ、そうでござるな」

 同好会は色々厳しい! しかし苦労のかいあってどうやら僕らは本当に九死に一生を得て、愛しい部室を守れたようだった。
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