ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第34話サブカル同好会今後の方針

「シュコー…………」

 呼吸音を深く響かせるガスマスクの桃山君は刀を両手に構えて、鉄巨人に襲い掛かった。

 静から動へ。すさまじい速度で飛び出した桃山君はパーカーの赤い色が尾を引いているように見えた。

「スキル―――乱刃」

 接敵の瞬間、夥しい刀傷が鉄巨人の身体を走り、火花が弾けたことで桃山君が何をしたのか理解出来た。

 侍のスキルは攻撃の性能にとんでもなく補正が掛かっているようで、あの鉄巨人の装甲がまるでバターみたいに切れているのだから信じられない。

「ゴメン遅れた! パワー上げるよ! 感覚注意!」

 浦島先輩は鋭く叫んで、よろめいた鉄巨人の隙を突いて味方のステータスを上げてゆく。

 味方を的確に捕捉した魔力が飛んで行き、一気に力を与えたのを僕は見た。

 その対象は桃山君だけでなく、タイミングを見計らって飛び出した巨大な黒豹含めたすべてである。

「グオオオオオ!」

「!!」

 身体に紅いオーラを纏い、突っ込んだ黒豹は明らかに自分よりも巨大な鉄巨人を、爪の一撃で軽々となぎ倒した。

 ただの腕の一薙ぎの衝撃に耐え切れずガンガランとバウンドしながら地面を転がる鉄巨人は、すぐに起き上がろうとしたが―――その動きはあまりにも緩慢過ぎた。

 転がった先にはもうすでに十分に力を溜めたパーカー侍がマスクの奥の目をギラつかせて待ち構えていたからだ。

「スキル―――薙ぎ断ち」

「!」

 豪快に刃は鞘から抜き放たれ、鉄巨人の身体は上半身と下半身に両断された。

 僕にはその一太刀は目で追うのが精いっぱいで、達人のそれとしか認識出来ない。

 鏡の様な断面をさらし、今度こそ動かなくなった鉄巨人は攻略の証としてその体がゆっくりと崩れていった。

 これにて戦闘は終了である。

 まさに文句のつけようのない正面からの勝利は、思ったよりも圧倒的なもので終わった。

「あちゃー……やっぱ仲間にした階が深すぎたか。守護者相手にならないじゃん。お疲れワカンダ~いい子だねぇ」

 ワシャワシャ分厚いグローブの手で黒豹を撫でる浦島先輩は黒豹のワカンダ君の驚異の戦闘能力を目の当たりにしても扱いが猫だった。

「おお……拙者があの鉄巨人を正面から斬れるとは……斬鉄でござるか? これって斬鉄でござるよね?」

 ワナワナ震える桃山君は、あまりに短期間での自分のパワーアップに歓喜に震えているようだ。

 僕はレベル差があるためいったん見ることに徹してみたが、実際戦闘を傍目で見ていて、みんな恐ろしいほど腕を上げていることは一目瞭然である。

 これがレベルの力なのだろう。

 やはり数字で見るよりも実際に戦っているシーンを見ると、より強力なインパクトがあった。

 そして戦闘終了後、浦島先輩はこちらへ歩み寄ると、僕の前で大きく頷く。

「うん。力試しに鉄巨人相手にして確信した。ワタヌキ君」

「はい?」

「君の知識使え過ぎる。ちょっと動画公開考えよう」

 きっぱり言った浦島先輩は冗談を言っている風でもない。

 それにむしろ当たり前だという感想が浮かんでしまった僕だった。

「あー……やっぱりやめときますか?」

 まぁそういう可能性もあるだろうと頭の炎も弱火である。

 今なら卒業まで黙っていればちょっと強い生徒として普通に卒業できる範囲だろう。

 しかし浦島先輩はいやいや違う違うとフルフェイスのバイザーを上げて―――恐ろしく不敵な笑みを浮かべていたのだ。

「いや。やめるなんてとんでもない。むしろガンガン行こう」

「えぇ? ……ガンガンですか?」

「そう。行けるところまで下層を目指す。できるんでしょう?」

 そう尋ねられたら、僕は首を縦に振る。

「はい。おそらく……でも潜れば潜るだけドンドン危険は増しますよ?」

「当り前でしょう。そう思うなら10階に連れてく前にやめときなさいよ」

「……ごもっともで」

 浦島先輩の指摘に僕はグゥの音も出なかった。

 ただ恐ろしい提案なのも確かなことで、桃山君は動揺しているみたいである。

「だ、大丈夫なんでござるか? 20階でも正直雲の上の話でござるのに……」

「そう、そこよ桃山君。いい? 卒業までに今いる10階にすら到達出来る生徒なんてほとんどいない。まして20階層にたどり着く生徒なんて一割にも満たないって知ってる? 現に私達が潜っている時だって生徒は一人もいなかったでしょう?」

「そ、そうでござるな」

「確かに、誰もいなかったですね」

「そう、私らは今、まさに雲の上にいるってわけよ。10階を超えた生徒も、命からがらジリジリ探索していくのが関の山。まして20階より下なんて未開の土地と一緒。だからこそ……やりたい放題だと思わない?」

「「!?」」

 僕と桃山君は顔を見合わせる。

 おそらく浦島先輩の提案は相当にリスキーだ。

 しかし同時にすごく心惹かれている僕もいた。

「誰も行ったことがないんだから、特定ができない。だからワタヌキ君の案内でいけるところまでとにかく進んで、下の階層から順に動画にしていく。どうよこれ?」

「……」

 これはまた大胆な計画に僕の頭の炎もほんの少し強火になった。

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