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第41話鳥を獲るなら鳥もちだろう
ミッミッミッ。
なかなか大きな音を出しながら、部室のプリンターが揺れている。
印刷しているのは一枚のシールである。
「あ。炎のコスプレシールでござるか?」
桃山君が印刷されているシールを見て言うが、今回印刷しているこれは新作だった。
「いや、違うよ……まぁ同じ理屈のものだけど」
「というと?」
「魔法文字のシールだよ。魔力を流すと決まった効果が出せるけど……今回のこれは結構危ない」
「ほー……」
桃山君は感心していたが、この魔法文字は実に奥が深い。
攻略君提供、不思議魔法なのだが、今回は攻略のために用意した即席シールだった。
『いいかな? ダンジョンに潜る事でえられる魔力を知恵ある者が扱えば、それは容易く魔法となる。スキルの助けがあればさらに簡単なことだろう。しかしもっと複雑なことをしようと思えば文字や言葉が必要だ』
「それがこのシールなんだよね?」
『そうとも。今回の相手はタイミングが重要だ。シールともう一つ、いつでも取り出せるように用意だけは忘れないように』
珍しく注意してくれる攻略君だが、だからこそ緊張してしまう。
攻略君に無駄はない。
それはつまり前もって備えなきゃ死ぬ相手だという事だった。
ダンジョンというのは下の階に潜れば潜るほどフロアは広さを増していくと言われている。
定期的に迷宮の形も変わり、マップを作っても意味がない。
空があったりなかったり、土があったりなかったり。
様々な地形が現れる摩訶不思議な場所だと聞いてはいた。
「しかし……こういうパターンもあるんだな」
40階まで降りて来た僕は、踏み入った鳥かごと空の世界にさすがに絶句していた。
「足場がデカい鳥かごしかない……」
『いいかな? このフロアの守護者は、言ってしまえば巨大な鳥だ』
「鳥……」
確かに鳥かごの中には鳥がいる。
だがその鳥はプテラノドンみたいな大きさをした燃える鳥だった。
空を飛んでいるのに熱気が地上まで届くが……ちょっと暑すぎやしないだろうか?
「……いやこれは!」
『そう、あいつの熱波は十分凶器だ。全身焼けただれたくなければ気を抜かないことだ』
「……頭の炎で軽減されない?」
『……気休めだねぇ』
僕は慌てて、口を塞ぎ、目を細める。
なるほど直接炎を吐きかけられるより、こいつは厄介そうだった。
「キエェェェェッ」
甲高い咆哮を響かせる鳥モンスターは射すような視線で僕を狙っていた。
『ファイアーバードは言ってしまえば燃える猛禽だ。火を吹き、熱波を叩きつける。後は急降下からの爪での攻撃で掴んで空中から叩き落とす』
「それはどれも痛そうだ」
『一度捕まってしまえば終わりと思った方がいいね。だがこちらから捕まえるのは何より難しい。まぁ空を飛ぶ獣だからね』
「飛んでる鳥を捕まえられる気はしないな」
『ならばどうするか? 決まっている。相手のフィールドから引きずり下ろすんだよ。そうすれば後は簡単なものだ、油に飛び込んだフライドチキンみたいなものだよ』
「簡単に言うなぁ」
あの巨体を叩き落すのは、それだけで大変そうだった。
ゆっくりと空を旋回していたファイアーバードはしかし獲物である僕に狙いを付けると、急降下してきた。
「! 来た!」
『熱波で弱らせられないと見るや、即向かってくる。集中だよ』
「じゃあ……幸運を」
『ああ。ここまで来れた君なら心配してはいないさ。なに、要するに度胸の勝負だ』
一発勝負である。
燃える鳥はデカいくせにスピードがすさまじく速い。
その上、初見で距離感が掴みづらいが、やることは簡単だった。
僕は作って来たシールを地面に張り付けて、大量の魔力を流し込む。
ここでのコツは十分に引き付けることだと攻略君から指南を受けていた。
「今!」
回避不能のラインを見極めて、シールで展開したのは水。
しかしそれは素肌に一瞬でも触れたら焼けただれるほどの濃い酸だ。
酸のドームが出来上がり、そこにファイアーバードが突っ込むとひどい悲鳴が鼓膜を震わせた。
『今だ! アレをぶちまけろ!』
「ああもう……最悪だよ」
回避が間に合い、強酸ドームで苦しむ鳥に、放り込んだ追い打ちはこれ以上ないほど凶悪だ。
今回の切り札は、蓋の開いたガラスの瓶。
中に入っているのは30階層の守護者部屋からすくって来たアイツの体そのものだった。
『ガラス瓶の中で腹ペコだ。住みやすい新鮮な水と、ごちそうがあれば大喜びで飛びつくさ』
ああ、そしてこうすることで一度飛び込んだら逃げられない強酸ドームの出来上がりである。
暴れる炎の巨鳥に触手が絡みつき、仕留めようとしている闘いはちょっと直視できないほど凄惨である。
「うわー……やっぱりエッチなスライムだわーモザイクが必要だよ」
『……猛悪な災害にしか見えんがなぁ。ただ公開するつもりならモザイクは必要かもね。今度はモザイクシールも作ってみようか?』
「……そんなんまであるのかぁ」
それは確かに少しばかりマイルドな表現にしたところで、えぐい光景であることは間違いなかった。
戦いはしばらく続く。
そして何もかもを溶かす液体は、燃え盛る炎すら溶かしつくしてしまった。
『ああ、じゃあ洗剤を流し込もうか。後片付けしないと』
「……そうだね」
しかし真に恐ろしきは攻略君だと思う。
最終的にはとっておきの洗剤で掃除すると、鳥かごの中身は綺麗さっぱりなくなってしまった。
「また最悪の攻略技を生み出してしまったね……便利だけど秘密にしておいた方がよさそうだ」
『賢明な判断だ。何事も効率が良いだけで人は納得しないものだよ』
「……」
全くその通りだと思うよ?
そしてモザイクの魔法は実は急務で、この先すぐにでも必要になる、僕はそんな気がしてならなかった。
なかなか大きな音を出しながら、部室のプリンターが揺れている。
印刷しているのは一枚のシールである。
「あ。炎のコスプレシールでござるか?」
桃山君が印刷されているシールを見て言うが、今回印刷しているこれは新作だった。
「いや、違うよ……まぁ同じ理屈のものだけど」
「というと?」
「魔法文字のシールだよ。魔力を流すと決まった効果が出せるけど……今回のこれは結構危ない」
「ほー……」
桃山君は感心していたが、この魔法文字は実に奥が深い。
攻略君提供、不思議魔法なのだが、今回は攻略のために用意した即席シールだった。
『いいかな? ダンジョンに潜る事でえられる魔力を知恵ある者が扱えば、それは容易く魔法となる。スキルの助けがあればさらに簡単なことだろう。しかしもっと複雑なことをしようと思えば文字や言葉が必要だ』
「それがこのシールなんだよね?」
『そうとも。今回の相手はタイミングが重要だ。シールともう一つ、いつでも取り出せるように用意だけは忘れないように』
珍しく注意してくれる攻略君だが、だからこそ緊張してしまう。
攻略君に無駄はない。
それはつまり前もって備えなきゃ死ぬ相手だという事だった。
ダンジョンというのは下の階に潜れば潜るほどフロアは広さを増していくと言われている。
定期的に迷宮の形も変わり、マップを作っても意味がない。
空があったりなかったり、土があったりなかったり。
様々な地形が現れる摩訶不思議な場所だと聞いてはいた。
「しかし……こういうパターンもあるんだな」
40階まで降りて来た僕は、踏み入った鳥かごと空の世界にさすがに絶句していた。
「足場がデカい鳥かごしかない……」
『いいかな? このフロアの守護者は、言ってしまえば巨大な鳥だ』
「鳥……」
確かに鳥かごの中には鳥がいる。
だがその鳥はプテラノドンみたいな大きさをした燃える鳥だった。
空を飛んでいるのに熱気が地上まで届くが……ちょっと暑すぎやしないだろうか?
「……いやこれは!」
『そう、あいつの熱波は十分凶器だ。全身焼けただれたくなければ気を抜かないことだ』
「……頭の炎で軽減されない?」
『……気休めだねぇ』
僕は慌てて、口を塞ぎ、目を細める。
なるほど直接炎を吐きかけられるより、こいつは厄介そうだった。
「キエェェェェッ」
甲高い咆哮を響かせる鳥モンスターは射すような視線で僕を狙っていた。
『ファイアーバードは言ってしまえば燃える猛禽だ。火を吹き、熱波を叩きつける。後は急降下からの爪での攻撃で掴んで空中から叩き落とす』
「それはどれも痛そうだ」
『一度捕まってしまえば終わりと思った方がいいね。だがこちらから捕まえるのは何より難しい。まぁ空を飛ぶ獣だからね』
「飛んでる鳥を捕まえられる気はしないな」
『ならばどうするか? 決まっている。相手のフィールドから引きずり下ろすんだよ。そうすれば後は簡単なものだ、油に飛び込んだフライドチキンみたいなものだよ』
「簡単に言うなぁ」
あの巨体を叩き落すのは、それだけで大変そうだった。
ゆっくりと空を旋回していたファイアーバードはしかし獲物である僕に狙いを付けると、急降下してきた。
「! 来た!」
『熱波で弱らせられないと見るや、即向かってくる。集中だよ』
「じゃあ……幸運を」
『ああ。ここまで来れた君なら心配してはいないさ。なに、要するに度胸の勝負だ』
一発勝負である。
燃える鳥はデカいくせにスピードがすさまじく速い。
その上、初見で距離感が掴みづらいが、やることは簡単だった。
僕は作って来たシールを地面に張り付けて、大量の魔力を流し込む。
ここでのコツは十分に引き付けることだと攻略君から指南を受けていた。
「今!」
回避不能のラインを見極めて、シールで展開したのは水。
しかしそれは素肌に一瞬でも触れたら焼けただれるほどの濃い酸だ。
酸のドームが出来上がり、そこにファイアーバードが突っ込むとひどい悲鳴が鼓膜を震わせた。
『今だ! アレをぶちまけろ!』
「ああもう……最悪だよ」
回避が間に合い、強酸ドームで苦しむ鳥に、放り込んだ追い打ちはこれ以上ないほど凶悪だ。
今回の切り札は、蓋の開いたガラスの瓶。
中に入っているのは30階層の守護者部屋からすくって来たアイツの体そのものだった。
『ガラス瓶の中で腹ペコだ。住みやすい新鮮な水と、ごちそうがあれば大喜びで飛びつくさ』
ああ、そしてこうすることで一度飛び込んだら逃げられない強酸ドームの出来上がりである。
暴れる炎の巨鳥に触手が絡みつき、仕留めようとしている闘いはちょっと直視できないほど凄惨である。
「うわー……やっぱりエッチなスライムだわーモザイクが必要だよ」
『……猛悪な災害にしか見えんがなぁ。ただ公開するつもりならモザイクは必要かもね。今度はモザイクシールも作ってみようか?』
「……そんなんまであるのかぁ」
それは確かに少しばかりマイルドな表現にしたところで、えぐい光景であることは間違いなかった。
戦いはしばらく続く。
そして何もかもを溶かす液体は、燃え盛る炎すら溶かしつくしてしまった。
『ああ、じゃあ洗剤を流し込もうか。後片付けしないと』
「……そうだね」
しかし真に恐ろしきは攻略君だと思う。
最終的にはとっておきの洗剤で掃除すると、鳥かごの中身は綺麗さっぱりなくなってしまった。
「また最悪の攻略技を生み出してしまったね……便利だけど秘密にしておいた方がよさそうだ」
『賢明な判断だ。何事も効率が良いだけで人は納得しないものだよ』
「……」
全くその通りだと思うよ?
そしてモザイクの魔法は実は急務で、この先すぐにでも必要になる、僕はそんな気がしてならなかった。
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