ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第50話サブカル同好会

 49階層は山岳地帯を模したフィールドで雪深く、大型の鳥型モンスターが多く生息している。

 僕らは攻略君のナビに従って、幅の狭い谷を見つけてから作業を開始した。

「……二人とも、僕の頭の炎は別に暖は取れないよ?」

「……いやつい。雪が降って寒いでござるから」

「メラメラしてると本能的にさ」

 分かるけどね。頭燃えてるのに全然温かくないの僕も納得いかないし。

 しかし準備は完了している。

 場を和ますジョークはこのくらいにして、作戦を始めよう。

「鳥モンスターをここに誘い込みます。 僕が岩を落すトラップを仕掛けていますから、それで仕留めるつもりで」

 言葉を発さず頷いて答える二人は緊張しているからだろう。

 パーティで戦ったことはあるが、本格的な連携は初めてと言っていい。

 それを試すのがよりにもよって49階とは毎度のことながら常識外れだった。

 ドローンカメラは待機済み。

 モンスターを狩る準備が終わると、僕らは解散して持ち場につく。

 さて―――ここからが勝負時だ。

 僕も頭の炎を揺らしながらその時を待った。

「……来た」

 そして先行した桃山君は、思ったよりも大物の怪鳥を引き連れて帰って来た。

「うおおおお! 思ったよりすぐ釣れたでござる! モンスターが多いのかもしれないでござるぅぅぅ!」

 合間に手裏剣を投げながら逃げているあたり、スピードは桃山君の方が速いみたいだ。

「忍者活かしてるなぁ。手裏剣も当たってるし」 

 投擲武器とは思えない音をたてて飛び、遠目で見ても効いているように見えるから、あれも大した威力が出ているようだ。

 あれなら十分誘導に使えると僕はニヤリと笑みを深くした。

『作戦は簡単だ。桃山氏のスピードで、鳥型モンスターの注意を引いて谷に誘導』

 攻略君の言う通り誘導はきちんと機能して、予定ポイントに桃山君が走り込んでくる。

 ここから僕の出番である。

 脇を抜ける桃山君とタッチでスイッチして、僕は力の限り叫んだ。

『君がウォークライで挑発し、ターゲットを奪って戦闘』

 とたんに血走った目の怪鳥が僕めがけて飛んで来る。

 僕はしかし避けずにこの攻撃を、正面から受け止めた。

「……くぉの!」

 跳ね飛ばされはしなかったものの、すさまじいパワーは未だかつて感じたことがない。

 流石49階のモンスターはレベルも段違いらしい。

 だが僕はここで体を張る意味がある。

 それは単に注意を引き付ける役目以上に、これならやれると二人に示す必要があった。

「どうらぁ!」

 横なぎのフルスイングでハンマーを叩きつけると、怪鳥は慌てて空に飛び上がる。

 ダメージを警戒されたという事は、こいつは脅威を感じて逃げたってことだ。

 僕も今ので腕の骨がへし折れたから、内心涙目を隠すのに必死である。

 成果としては悪くなかったが、こんなもの序章に過ぎなかった。

 僕は回復魔法が飛んできて、急速に身体のダメージが回復するのを確認してから、オーラを全開にして戦闘を開始した。

『浦島氏がダメージコントロールしつつ、モンスターと桃山氏との連携で止め』

 攻略君の作戦があってなお怪鳥は恐ろしく強かった。

 たぶん一人で戦ったら、長期戦を強いられた上で負ける。

 ただ咄嗟に、そんな分析をした自分にも驚いた。

 だって相手は化け物中の化け物だ。

 本来なら出会った瞬間、殺されるのが当然の相手なんだ。

 それが、ちゃんと戦えている。

 どう見ても敵が繰り出す必殺の一撃が致命傷にならず、巨大な化け物に自分の攻撃がしっかり当たって有効打になっている光景は、違和感すらあった。

 だってこれじゃあまるで自分と目の前の化け物が同格みたいじゃないか。

『素晴らしい。だが当然なのだ。君はこんなモンスター程度では簡単に殺せず、君の攻撃はあいつの命に届く。まずはそこを体で理解するんだ』 

「……!」

 攻略君のセリフに反応出来ないくらいには必死にやらないとダメだけどね。

 あの足で体を掴まれたら最後、上空に掴み上げられ真っ逆さまに地獄行きだ。

 だがそれでも一撃、二撃と爪を弾けば、そろそろ助けが来る頃合いである。

「行くよ!」

 浦島先輩の声と共に降って来るのは大量の落石とスピード補助のバフだ。

 僕は体に漲る強化を実感しながら、落石を避ける。

 怪鳥は巨体に見合わず落石を器用に回避していたが、それでいい。

 ルートを制限してくれれば、うちの機動力担当はそれが例え空中だろうと追いつけるはずだった。

「クロハナサクヤ……動きを止めるでござる」

 落石で出来た岩の道を抜けて、赤パーカーは空を舞う。

 そして彼の服に絡みついていた影の精霊は、怪鳥の巨大な羽根に絡みついて締めあげた。

 それどころか更に影の根を地面に飛ばし怪鳥を完全に地面に拘束までしてくれるのだから効果的にもほどがある。

「「……」」

 空中で動きが止まった怪鳥に二刀流の斬撃と渾身のハンマーが深々と突き刺されば、勝利は確定である。

「ギエエエエエエエ!!!!!」

 叫び声を残し、怪鳥は力を失うと完全に息絶えた。

「ぐぇ……」

 勢いあまって地面を転がり、僕はようやく息をする。

 そして仕留めた鳥を確認して、頭の中の攻略君が告げた。

『これで戦闘終了だ。今の君達はパーティ戦でこそ最大の威力を発揮出来る。人数が揃えばこんな階層程度で苦戦もしないさ』

「前人未踏なんだけどな……一応」

 だが、確かに勝てた。しかも苦戦せずに。

 パーティに大したダメージがないのは見事に決まった連携のおかげで、3人ならこの異常な階でもやっていけると確信するのに十分な戦いだった。

「やったでござるな!」

「すげぇよ!……いやホントにすごかった!」

 桃山君と浦島先輩がすごく喜んで駆け寄って来る。

 僕はしかし気の抜けていたことをようやく自覚して、しまったと立ち上がった。

「……っまだです! 今すぐ下ごしらえします!」

「下ごしらえって……モンスター食べる気!?」

「死ぬでござるよ!?」

 あっという間に嬉しそうだった声が、引き気味に裏返って僕はその事実をいったん脇に避けた。

「今日のランチはヤキトリだぁ!」

『おいおい、知らない人から見たら。狂人のそれだよ。見てみたまえ、友人達の視線を』

「そんなの食べれば全部解決する! さぁ毒抜きを始めるぞ!」

『君ってやつは……』

 新調した解体用ナイフも使いたいと思ってたところだ。

 何か獲れればいいと思っていたが、こんな大物が手に入るとは最高だ。

 勝利の瞬間は、今日の食事はごちそうと決まった瞬間でもあった。



「おぉ……モンスター食べたのに死んでないでござる! というか美味くないでござるか?」

「これはっ……いいタンパクだ。いいタンパクだよワタヌキ後輩!」

「でしょう? モンスターは階層が深いほど美味いらしいんですよ」

「マジか……」

「……実際美味いでござる。美味いでござる……」

 巨大怪鳥ヤキトリと豚串、そしてカニのスープはたいへん好評だった。

「だいたい、今までだって、僕の手料理食べたでしょ? あれ、モンスター料理ですよ?」

「…………えぇ?」

「どれが?」

 そう言うとピタリと箸を止めた二人は、ホラーの被害者みたいな顔をしていたが。

 いやまぁ……おいしかったでしょう? 

 ストックは沢山あるし、カフェのメニューを考える時は一考してみるのも大いにありだと、僕はようやく満面の笑みを浮かべた。
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