ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第58話地道な作業

 衣装製作はまだまだ時間がかかりそうなので、こちらはこちらで話を進めてみよう。

 今、僕が作るべきはレイナ専用装備の開発だった。

「ひとまず錬金釜かな? 必要な素材があればとって来るけど?」

  最初に攻略君にチャートを確認すると、攻略君には珍しく難色を示した。

『いや……ただのギターの改造では期待に応えられない可能性はあるね。なにせダンジョン品の杖より性能が上かと言われると……』

「同等には出来ても、上位互換はさすがに無理?……」

 現在レイナさんが装備している杖と同じくらいの魔法が放てるギターはおそらく作ることが出来る。

 しかしそれでは使用感の不便を感じてもおかしくはなかった。

 杖はシンプルだがギターは楽器。いざという時、精密すぎるとは思った。

『いやそうでもない。少しだけ脱線するが―――君、エレキギターを知っているかな?』

「……知ってはいるけど……なんだろう?」

『私は君の気質をそれなりに理解しているとも。凝り性な君は、適当な品など贈り物として送りたくはないんだろう? 趣味のものならなおさらだ』

「……ほほぅ。わかってるじゃないか。確かにそうだね」

 何となく趣味に命を懸けているのが伝わってしまったか。

 それにあれだけ大見得を切ったんだ。出来る限りいい物を……少なくとも現状をより快適に出来る装備を送りたい見栄はあった。

『ならば徹底的にだね。パワーアップの案だがエレキギターなら使うには色々と機材が必要だ。ならばその機材分、手を加えやすいとは思わないか? ドローンと同じように』

 僕はドローンのカメラ君を思い出す。

 浮かんで撮影して明るさまで調整してくれる便利なカメラは、確かに様々な細工を施していた。

 だがドローンだから細工が大変だった部分が沢山ある。もし仮にそれがもっと大きな機材だったなら組み込める細工も魔法文字も大きく増えるだろう。

「おいおい攻略君? ……まさかギターやらアンプやら周辺機器から、見栄えに拘った上で実戦使用に改造しろって言ってるのかな?」

『そのまさかだ。君の手先は器用だよ。中身は問題なく出来るだろう。そして外面だが……君はこれまで錬金釜を使い続けたことで新たなサポートジョブを手に入れているはずだ』

 攻略君の言うように確かにカーペンター以外のサポートジョブに目覚めていることは知っていた。

 そしておそらくは錬金釜を使用したことで生まれたジョブはこれだろうと確信がある。

「……錬金術師だね? まさかこいつがあれば、アイテムの外側もいじれるのかい?」

『当然だ。錬金術師は素材を扱うエキスパートだ。外面を取り繕うくらいわけはない。この先更に装備の質を上げる上で欠かせないジョブでもある』

「なるほど……面白いじゃないか」

 僕はなんとも心躍る提案に心の炉に火が入った。

「……錬金術はちなみに手を叩いて?」

『? いや? 別に直接手で触れなくてもできるよ?』

「あ。……うん、そりゃすごいや」

 ……確かに理解は深まってきているようだが、まだまだ足りないらしい。

 しかし、そんなものはこれからやることを見せつければ自然と理解は深まっていくことだろう。

「しかし。問題は武器としての性能の方だよね。ドローンを見る限り多少加工したくらいで魔法の威力が上がるかな?」

『普通にやっても難しいだろう。だがやりようはいくらでもあるさ。今回は中でも強力な方法を選ぶ』

「強力? ちなみにどんな?」

『精霊を使うのさ。うまく使役し、属性を合わせれば威力は掛け算だ。君達が先日回った精霊の住む階層で下級精霊を手に入れるだけでも、その辺で拾った杖なんかとは比べ物にならない数段上の力が手に入るだろうが……もっと上位の精霊を手軽に手に入れられる場所を君は知っているだろう?』

「……まさか!」

 僕は攻略君の言う場所を頭に思い浮かべて声を荒げた。

『そのまさかだ。……だが君も知っての通り、この方法には重大な欠点がある。それを行うのなら君達にも覚悟が必要だ』



「下級の精霊と、上級の精霊と、仲間にするならどっちがいい?」

 そんな質問をされたら誰だって答えは一つだろう。

「上級でお願いします」

 僕の問いにレイナさんは即答だった。

「……そうだよねぇ。わかった。ではまずこいつを見て欲しい」

 僕はエレキギターでの演奏に必要な機材を紹介した。

 現在でもアンプとして使えるそれは、魔法文字と錬金術を使って既に改造済みだった。

「ワォ! なんですこれ!? 今にも動き出しそうな……これなんですか?」

 デジタルな歌姫のライブにだって使えそうなほどSFチックに仕上げた機材を見てレイナさんは興味津々だが、残念ながら現在は普通の演奏機材でしかない状態だった。

「簡単に言うとアンプの類を改造した精霊捕獲器具。こいつに精霊を複数入れる予定」

「何ですそれ! 精霊ですか!?」

「そして上級精霊……それも君と相性のいい雷の精霊を三体厳選しよう。現状可能な方法はただ一つ。とある守護者階層で上級精霊を乱獲する……つまり」

「つ、つまり?」

「精霊ガチャ……これしかないです」

「ガチャ……!?」

「そう。ガチャ」

 50階層の守護者は完全にランダムに生成される。

 一番最初は闇の精霊だったが、倒すたびに相手の属性は変化するだろう。

 それを雷の精霊が出るまで繰り返す地獄作業……それを僕は精霊ガチャと呼ぶことにした。

 しかもこれは僕にしか出来ない。

 名前を看破しないとそもそも捕獲が出来ないからだ。

 時間がかかるとわかっているのだから、グズグズしてもいられない。

 ただ、大きな問題が一つあった。

 それは上位精霊は恐ろしく強いという事だ。

 効率を上げるなら倒すよりも、現状すべて捕獲しなければならない。

 そうすると手頃な入れ物が必要になるが、僕はすでにそのために必要なものを部室で発見、加工済みだった。

「こいつで……今から上位精霊を捕獲しまくる」

「おお……これはピッタリなのでは? ワタシも空港で沢山回しました」

「まさにガチャ。カプセルのストックは十分だ」

 思っていたよりも大量に眠っていたそれは段ボール丸ごと残弾である。



 今回ははっきり言ってこだわりと趣味の世界だ。

 理想の精霊を手に入れるには回転数がモノを言う。

 だが大変だという事が分かっているというのに、やる気だけは高かった。

「よし……始めよう」

 精霊神殿で上級精霊を呼び出す。

 すると最初に出てきたのは炎の精霊である。

 メラメラと燃える火の鳥は、かっこいいけれど残念ながら外れだった。

 素早くバックから取り出したのは、カプセルトイの空きケース。

 思わずニヤリと笑って、僕は精霊の名を呼んでカプセルを投げつけると精霊はスルリと捕獲され、あっさりと地面に落ちた。

「よし! ゲットだ! 次々行くぞ攻略君!」

『君……ものすごく生き生きしてないかい?』

「……まぁね! なんというか……かなり満喫しているね!」

 僕ってやつは収集癖あるな絶対。

 結構なペースで集まりそうな上位精霊は、どれも違ってみんないい。

 先は長そうだから、この調子でどんどん行ってみよう。
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